第62話 ファンダリアへの帰還
イルマール先生の所で俺は錬金術をラーニングする事に成功して王都に来た目的は大部分達成する事が出来た。
アルザス先生からもエリクサーの材料に関しては情報を仕入れる事が出来たし、少し手に入れておきたいと思う。
アルザス先生を通じて『仙桃』と『聖水』を手に入れる手配をお願いする事にした。
「テネブルは、エリクサーを作るつもりなのか?」
「はい。って言ってます」
「昨日も言ったが確率は十万分の一じゃから、あまり期待するでないぞ?」
でも俺はなんとなく、出来るような気がするんだよな。
特に『純化』と言うスキルに鍵がある様に思える。
極めれば必ず実用レベルでの成功に繋がる筈だ。
ファンダリア辺境伯は俺達がイルマール先生の元へ行っている間に王城で国王に謁見して、腕時計と鏡の献上を行い、代わりに宝剣を授けられたんだって。
今日のパーティではその話題も手伝って、急な開催にも拘らず王都在住の殆どの有力貴族が訪れる事になっていた。
サンチェスさんも王都の商業ギルドマスターと共に、オークションの準備などでとても忙しそうだ。
俺やマリアは流石にこのパーティに招待者としての参加は出来ないから、女性達のお化粧や下着の準備、シャンプーとリンスの紹介などで忙しく過ごしてる。
ファンダリア辺境伯の奥方達がすっかり気に入ってくれて、率先して化粧とシャンプーで綺麗になった状態でパーティに参加していたので、商品の案内前から女性招待客の中では凄く目立っていた。
通常こういったパーティの席では正妻以外は参加しないのが暗黙のルールなのだが今日は辺境伯が積極的に第二婦人以降の奥方も一緒にお連れ下さいと案内をしていたので会場は女性比率が異常に高い状況だ。
パーティも中盤に差し掛かるとまずは化粧品とシャンプー、リンスの紹介が行われた。
ファンダリア辺境伯の婦人たちや、モデル役の商業ギルドの女性達の周りにも、人が集まって盛り上がった。
次に発表されたのは女性用の下着で、シルクのマントを羽織った二十名ほどのモデル役の女性が並び、合図とともにマントを取り払うと高級品からリーズナブルな品物まで様々なラインナップの魅力的な下着姿に会場にどよめきが巻き上がった。
この商品は今日は商業ギルドからの販売になると伝えられ、会場内に設置されたカーテンが開け放たれると、それぞれの売り場に人が押し寄せ凄い混雑になった。
かなり大量の商品を持ちこんでいたにもかかわらず、一時間程ですべての商品が完売になった。
参加していた商会主達もかなり購入していたので、今後コピー商品が開発される事も遠くないかも知れないけど、現代日本のクオリティを出す事は出来るかな?
混雑が収まった頃になり、いよいよ今日のメインイベントのガラス製の鏡と、高級腕時計のオークションが始まった。
今までにこの世界に存在していなかった高い技術力の商品に騒然となり鏡は手鏡程度の物でも百万ゴールドを超え、腕時計に至っては最低落札が五百万ゴールドで高級品に至っては一億五千万ゴールドの値が付いた。
国王に進呈したのと同じモデルの物だった。
お化粧をする時の必需品としての鏡のバックオーダーもかなりの数になり、パーティは大盛況に終わったけど、化粧品や下着で多額の出費をさせられた貴族家の当主は顔色の悪くなった人も何人かは居たけどね!
物品販売を伴うパーティは貴族らしくないという声もあったが、商売自体は王都商業ギルドの名で行ったので、ご婦人方を中心に肯定的な意見が大勢を占めた。
これによってファンダリア辺境伯は一気に社交界の主役となり、この化粧品を使って美しくなったファンダリア辺境伯の四人の夫人を必ず招待客に加える事が王都の社交界でのトレンドになるほどだった。
マリアには会場のパーティの様子を出来る限り撮影して貰う事も頼んでいたが、現時点では心配したような言い掛かりもつけられなかったから一安心だ。
明日からは今度はファンダリアに向けての帰りの旅になるけど、転移門の様な便利な移動法は無いのかな? と思ってアルザス先生に聞いてみた。
「オキタ様は空間魔法と言う古代魔法をあやつられていたので、瞬間移動もなさっていたが、現在技術として残っているのは、スクロールによる空間拡張と、王家にのみ伝わる転移門が残っているだけじゃな。宝箱から出るマジックバッグもスクロールが使われたバッグという事までは研究の結果解っておるが、作り出せるまでは至っておらぬ」
「王家の転移門は何処に繋がっているんですか?」
「公式には秘密になっておるが、マリエラとリスポールを繋ぐ航路の南にある島に繋いである。海の魔物が沢山巣くう場所にある島だから、上陸してしまえば逆に安全だからな」
「そうなんですね……その門は王族であれば利用できるんでしょうか?」
「そうじゃな、王子たちは利用しているはずじゃ」
俺はその話を聞いた時になんだかクラーケン騒動に関係があるような気がしたけど、今は俺が気にしてもしょうがないかと思って、それ以上は聞かなかった。
今回はサンチェスさんが王都まで直接出向いたのは、本来は次期王都商業ギルドの会長の選挙関係だったらしいけど、俺との商取引の方に魅力を感じて、このままファンダリアでの生活を望む事にしたようだった。
現王都商業ギルドの会長に、次の選挙での支援を伝えて満面の笑みで送り出されて沢山の援助金を貰ったらしいよ?
「往路はイベントが盛沢山過ぎたから帰りは平穏無事に戻りたいもんじゃな」
「そうですね、でも船での移動が一番心配ですよね、避けようがないから」
「そうじゃなマリア、話は変わるが今回のオークションと下着や化粧品の売り上げじゃが総額で十二億ゴールドにも上ったぞ、約束通りにわしの取り分として三割を貰って、残りの八億四千万ゴールドがテネブルの取り分となる。金額が多いから現金では無く取り敢えずマリアの冒険者証に入金して置くぞ。国内であればどこの商業ギルドでも引き出しが可能じゃ」
「八億四千万ゴールドって……凄いですね」
「徐々に商品自体は数が出回れば価格は落ち着いて来るであろうから、稼げる時にはしっかり稼いでおけば良いんじゃ。気にするな」
「気にしないなんて無理な金額ですよ……あ、サンチェスさんテネブルが三億ゴールド分ほどミスリルとオリハルコンを購入したいって言ってますよ?」
「おおそうか、ではファンダリアに戻れば用意しよう」
心配はあったけど帰り道は比較的平穏無事で復路は商取引も無くバルバロッサまでを五日で戻る事が出来た。
バルバロッサの街では子爵様を訪ねて、預かって置いて貰った女性達を引き取り、一緒にファンダリアの街に戻る事になった。
女性達はこの十日間ほどの間に栄養状態も回復して、随分顔色も良くなっていた。
サンチェスさんは子爵様と何か話していたので後で聞いて見ると、被害者に返却した盗賊の宝物などの売却益を半額渡されたそうだ。
この世界では、盗まれた物の返却であっても有料になるのが当然なルールがあるんだって。
無料で返すと関係ない人が私の物だといくらでも名乗りを上げてきて、新たな詐欺被害を作り出してしまうので、しょうがない措置なんだそうだけど本当に遺品なら何とかしてあげたいなって思ったぜ。
サンチェスさんに渡された金額は四億ゴールドにものぼって、残りは街道の安全を確保するための経費として利用する事を約束してくれたそうだよ。
子爵様良い人だよな!
そして俺達は半月に渡る旅を終えてファンダリアへと戻った。




