第34話 強盗相手に無双する!
マリボさんとマーブルさんの居る後ろの位置から、矢が飛んで来た。
矢はマリボさんの足を貫いた。
更に弓なりの軌道を描き矢が降って来る。
チェダーさんが反応して、マーブルさんとゴーダさんを庇う様に盾を構えるが、ちょっとヤバい。
まだ倒れてる人間も死んでる訳じゃ無いのに、敵味方関係無く貫く矢だ。
矢の飛んで来た方向から、更に十人の強盗の仲間らしき人間が現れた。
既に小型化していたリュミエルと俺は、まだ敵と認識されてない筈だ。
リュミエルに足元に向かってエアエッジを撃つ様に伝え、俺は草むらを駆け抜け十人の強盗達の側まで掛け寄る。
リュミエルのエアエッジが強盗二人の足元を薙ぎ払う。
そのタイミングで俺もミスリルエッジを口に咥え、強盗達の足元を駆け抜ける。
次々に膝から下を斬り飛ばしていく。
リュミエルも草むらからエアエッジで援護してくる。
相手も足元を駆け抜ける俺に気付き、俺に対して攻撃を仕掛けてきたが、派手にジャンプして、俺を狙ったやつの首筋を斬り付けた。
残りは二人だけだ。
俺にすっかり注意を向けてるがいいのか?
弓を構えて俺に狙いを定めた二人を、後ろからチェダーさんとゴーダさんが一人ずつ斬り倒した。
俺はすぐに、マリアを念話で呼んだ。
「負傷者が大勢いる。すぐに来てくれ」
「解ったわ、すぐ行くね」
チェダーさんがマリボさんの足にポーションを振りかけてるが、血は止まったけど、どうやら骨まで傷付いていたようで動けない。
騎士の人達も三人が倒れたままで、一人は手に矢傷を受けて、かなり出血している。
ゴーダさんが俺に声を掛ける。
「テネブル、お前強すぎるだろ」
「いやそれ程でもあるけどね!」
って言ったけど、その場には「ニャアニャニャア」としか聞こえなかったぜ!
マリアが漸くこっちに辿り着いて、騎士の人達に一人ずつハイヒールを掛けて行く。
どうやらハイヒールで十分な効果が得られた様だ。
その後でマリボさんの足を見て「恐らく大丈夫です」
と言って、ハイヒールを掛けた。
そこで、魔力切れになったみたいで、マリアが膝をついた。
「マリア! 大丈夫か?」
「あ、大丈夫。魔力切れなだけだから。それよりマリボさんの足はどうだった?」
「マリアちゃんありがとう。うん大丈夫だよもう普通に歩けるよ。これ飲んで」
そう言って、マジックポーションを手渡して来た。
マジックポーションを飲み干して、マリアも顔色を取り戻した。
「ありがとうございました。回復までして頂いて。私達は主人の元へと戻らさせていただきます。お礼は改めて必ずさせていただきます」
騎士たちはそう言いながら、慌ただしく馬車の方へ走って行った。
「マリア、チェダーさんにこの強盗達をどうするのが良いか聞いて?」
「解ったよテネブル」
「チェダーさん。強盗達の処分はどうしますか?」
「ああ、このままここに置いて行けば魔物が勝手に処理してくれるだろうけど、運良く生き延びて俺達に恨みを持たれても嫌だから、きっちり止めを刺していくべきだな」
「そんなぁ……後生です。俺達にも家族もいるし、命だけはお助け下さい」
「お前らは今まで襲ってきた相手がそうやって命乞いをした時に、全部助けてたのか? 違うだろ? そうだなアジトを教えれば一人だけ助けてやる。誰が生き残りたい?」
そう伝えると、意識の残ってたやつは全員が、「俺が教えます。俺を助けて下さい」と言って倒れたまま、仲間割れを始めた。
「あさましいやつらだ。勝ち残ったやつを助けてやるから精々頑張れ」
そう伝えると、周りに散らばっていた矢や剣を握りしめ、殺し合いを始めた。
マリアとリュミエルは思わず目を背けていたがチェダーがマリアに声を掛けた。
「マリア、忘れるな。奴らは俺達を殺そうとした。そしてもし生き残れば必ず仕返しをしに来る。それを忘れるんじゃない。甘さは自分の寿命を縮めるだけだ」
「はい……解りました」
流石だ。
くぐった修羅場の数が違う。
その頃にはサンチェスさんも他の男性従者たちを連れてやって来た。
「皆さん、お怪我はありませんか? お疲れ様でした」
「怪我はマリアのお陰で治療して貰えました。サンチェスさん。こいつらのアジトへ行けばある程度の財宝はあると思いますが、いかがなさいますか?」
とチェダーさんが伺いを立てた。
「そうですな、ではうちの番頭を一人と、テネブル君と、チェダーさんの三人で行って来て貰えませんか? 私達は先程の貴族様。この先の街の子爵家のお嬢様でしたが、そちらの馬車も馬を殺されてますので、この先馬車を一頭建てにして、街へ送り届けます。ゆっくりと街に向かっていますので、よろしくお願いします」
俺とチェダーさんと番頭のアダムさんの三人で、傷だらけの強盗の生き残りをマリアに止血だけ頼んで、無理やり立たせた。
この修羅場で生き残ったやつは、足は斬り飛ばされて無かったので、普通に歩けるだろう。
他の奴らは、ゴーダが金目の物ははぎ取って、一か所に集め、マリボが火魔法で焼き払った。
死体を放置するとこの街道の側でも魔物が近寄って来るので、仕方がない。
これがこの世界の強盗の末路なんだ……
その様子を見た強盗の生き残りは、顔がぶるぶる震えていた。
「さっさと案内しろ。俺達に嘘を教えたり時間稼ぎしたりすれば、問答無用で殺す」
それから二十分ほど街道から遠ざかった山肌を少し上った所に洞窟があり、そこがアジトだと男が言った。
「他に仲間は居ねぇだろうな?」
「あれで全員です」
「そうか、その言葉を信用するのは中に入って確認をしてからだ。もし仲間が居てお前が叫んだ瞬間に襲われても困るから、猿轡をはめてそこの木に縛り付けて置くぞ。俺達が無事に戻って来たら解放してやる」
チェダーさんがそう伝えると、少し震えていた。
これは……まだ仲間がいるな。
アダムさんに「危険があった時に守り切れないのでここで少し待ってて下さい。安全が確認出来れば呼びに来ます」
と伝えて、慎重に俺と一緒に洞窟へと入って行った。
◇◆◇◆
「あいつら遅いな。もうとっくに戻ってきてもいい時間だろ?」
「お頭、あの子爵の嬢ちゃんはどうするんですか?」
「ああ、俺はガキに興味は無いから身代金を手に入れたら、他の女達と一緒に適当に隣国にでも売り飛ばすさ」
「その前に俺が味見しても構わないですか?」
「ケッこのロリコンの変態が、勝手にしろ。だが金を手にするまでは壊すなよ?」
「解ってますって、大事に可愛がりますぜ」
「まとまった金を手に入れれば場所を移すからな。次はファンダリアの街にでも行けばあそこは金持ちが多いから今より効率がいい筈だ」
◇◆◇◆
お頭と呼ばれる人間と幹部らしき人間が三人で酒を飲んでいた。
その背後には牢屋の様な檻があり、何人かの女性が捕らわれているのが見える。
俺はちょっと気になって、鑑定をしてみた。
ガンジャー
種族 人属
レベル 45
盗賊頭
攻撃力 500
防御力 500
敏捷性 250
魔法攻撃力 100
魔法防御力 100
知能 100
運 25
SP 1575
スキル 鑑定③
称号 殺戮者 大強盗 奴隷商人
こ、こいつ……強い
ガチでぶつかってチェダーさんと同程度かちょっと上だ。
スキルで魔法が使える分チェダーさんより強いかもしれない。
これは他の取り巻きも居るから、分が悪いな。
先に取り巻きを仕留めれば、俺とチェダーさんの二人掛だったら大丈夫だろう。




