第4話「点音パニック」
【朝・教室/ホームルーム前】
いつもの教室。
黒板には「本日:短縮授業」の文字。
生徒たちは、相変わらず無音で口を動かし合っている。
教室の隅では、
ホワイトボードを立てて「筆談ゾーン」が設けられている。
そこに「最近あった変なこと」と題された欄。
『音が聞こえた気がした人、書いて!』
――健の字。
その下に、生徒たちの書き込み。
『夜、猫が鳴いた気がした』
『目覚ましが鳴った“気”がして起きた』
『風鈴が一瞬だけ揺れた。音は……どうだっけ?』
健が、マーカーを持ってそれらを写メしながらニヤニヤしている。
健(心の声)
『よしよし……
“点音ネタ”、順調に集まってる。
LISTENERS情報局、今日も営業中ってわけだ。』
前の席では、
優斗がノートを開いて、
昨夜までの“点音記録”を書き写している。
『屋上:笑い声の影
窓の外:縦の光の線
意識が集中した瞬間に多い』
隣で澪がスケッチブックを開いて、
同じページに対応する“光の点と線”を描き込む。
二人分の感覚が、ひとつの見開きに並んでいく。
澪(手話/小声っぽい口パク)
『こうして並べると、
ちょっと“星座”みたい。』
優斗、少し見惚れるようにスケッチを覗き込む。
優斗(心の声)
「音の代わりに、
ミオは世界を“線と光”で聴いてる。
俺は……
まだ自分の耳の使い方も、ちゃんとわかってない。」
教壇前。
担任が出席簿を持って立ち、
「静かにしろ」と言っている口の動き。
だが、声はない。
そのとき――
教室の空気が、
ほんの一瞬だけ“ピンッ”と張り詰める。
澪が、ぴくっと反応して顔を上げる。
ユウトも、こめかみを押さえる。
澪(字幕モノローグ)
『今、“点”が近くに……』
次の瞬間――
教室の後ろのドアが、
勢いよく開く。
ドアの“ガラッ”という音が、
一瞬だけ、ハッキリと鳴る。
また無音に戻る。
生徒たち全員が、ビクッと肩を震わせて振り向く。
そのリアクションだけで、今のが“本当に聞こえた音”だったとわかる。
ドアのところには、遅刻ギリギリで滑り込んだ男子生徒。
自分でも驚いたように、ドアノブを見ている。
遅刻男子(口パク)
「今……音、したよな?」
教室中の視線が交錯する。
誰も喋っていないのに、
「した」「してない」「気のせいだろ」の空気が渦巻く。
優斗は、
自分の耳を触りながら、
心臓が早く打つのを感じている。
優斗(心の声)
「今のは――
間違いなく、“音”だった。」
澪は、
スケッチブックの上に、
太く、鋭い点をひとつ打ち込む。
そこから細い線が、
教室の中央に向かって伸びていくように描かれる。
澪(手話)
『“点音”が、
この教室の中に落ちた。』
担任は混乱しながらも、
メガホンを手にするジェスチャー――だが音は出ない。
代わりに黒板にチョークで書く。
『落ち着いて』
しかし、
静寂の中で“音が聞こえた”という事実が、
じわじわと教室を侵食していく。
健が、
即座に筆談ボードを掴み、
大きく書く。
『今の聞こえた人、あとで詳しく教えて!!』
その文字に、
クラスメイトの何人かが「俺も」「私も」と頷く。
LISTENERSたちの周りに、
“日常の皮”が少しずつ剥がれ始めている――。
---
【職員室前・廊下】
休み時間。
職員室前の廊下が、いつもよりざわざわした“無音の渦”になっている。
教師たちが筆談でやりとりし、
「今の現象」を報告し合っている。
『ドアの音がした』
『理科室のビーカーが割れた時、一瞬だけ音が……』
『心臓の鼓動が聞こえたと言う生徒も』
葉山が、その中心でメモを読み、
眉間にしわを寄せている。
葉山(心の声字幕)
『“点音”が、
この学校全体に広がり始めてる。
これは偶然の暴走か、
それとも、
誰かが“意図的に”刺激を与えているのか――。』
廊下の窓の外。
遠くの空に、
また細い光の線が一本、
すーっと落ちていく。
音のない“雷”のように。
【放課後・理科準備室】
LISTENERSメンバー4人(優斗/澪/健/葉山)が再集合。
ホワイトボードには、
新たな大きな文字。
『校内点音マップ』
今日一日の間に
「音が聞こえた」と報告のあった地点が、
赤い丸でマッピングされている。
・教室のドア
・理科室の棚
・体育館のステージ裏
・屋上のフェンス近く
赤丸が集中しているのは、
校舎のある一角だ。
健
『思ってたより多いな……
しかも、
全部“違う種類”の音っぽい。
ガラス、ドア、足音、笑い声。』
澪は、
別の透明なフィルムに
自分が感じた“光の点”を描き、
それをホワイトボードの上に重ねる。
透明フィルムの上にも、
白い点や線。
それを重ねると――
赤丸と光の点が、
いくつかの場所で重なり合う。
澪(手話)
『“点音”が起きた場所と、
わたしが感じた“点”は、
だいたい一致してる。
でも――
さっきのドアの音は、
いつもより“強かった”。
星じゃなくて、
“隕石”みたい。』
葉山が別の資料を広げる。
プリントアウトされたニュース記事。
『市内のショッピングモールで一時騒然
「音が聞こえた」との通報多数』
モールの外観写真。
人々がスマホを構えている様子。
葉山のメモ
『学校だけじゃない。
さっき市の防災メールが来た。
ショッピングモールの広場で、
“一帯に音が戻ったような現象”があったらしい。
一時パニックになって、
今は臨時閉館。』
4人、顔を見合わせる。
優斗(心の声)
「“点音”じゃなくて――
“塊音”みたいなやつ?」
健が、
ほとんど食い気味にメモを書く。
健のメモ
『行こう。
現場、見に行こう。
そういうのは、“現場”が一番おもしれ――
じゃなくて、
大事だろ。』
優斗と澪も頷く。
葉山も、短くため息をついたあとでメモ。
葉山のメモ
『行くなら、
夕方の人が少ない時間。
“観察”が目的。
絶対に、
騒ぎを大きくしたり、
危ないところに近づきすぎたりしないこと。
LISTENERS、
最初の“現場調査”よ。』
健、思わず
かっこつけた敬礼ジェスチャー。
澪は、
新しいページに
「モール調査」と書き込み、
白紙のままのページをそっと撫でる。
澪
『ここに、
どんな“音”の絵を描くことになるんだろう。』
---
【夕方・ショッピングモール前】
大きなガラス張りのモール。
入口には「臨時閉館」の貼り紙。
警備員が二人、
出入り口付近を行き来している。
人影は少なく、
時折ニュースクルーらしき人物が
カメラを片付けているところ。
音はない。
だが、
いつもならBGMが鳴り、
人々の話し声が溢れているはずだという
“記憶の残り香”が漂っている。
少し離れた歩道の影に、
4人が並んで様子を伺っている。
健
『ニュースだと、
モールの“センター広場”で音が戻ったって言ってた。
今はもう静かみたいだけど。』
葉山が、
モールの簡易見取り図を広げる。
真ん中に大きな吹き抜け広場。
そこから放射状に店舗が並んでいる構造。
葉山のメモ
『“塊音”が発生したのは、
この中央広場一帯。
範囲は直径30メートルくらい。
その中にいた人たちの証言――』
別紙には、目撃者の証言が箇条書き。
『いきなり全部の音が戻ったみたいだった』
『誰かの叫び声が何重にも聞こえた』
『自分の心臓の音が大きすぎて倒れた』
『すぐにまた静かになったけど……怖かった』
優斗、その字を見て、
喉をゴクリと動かす。
優斗(心の声)
「“世界中の音が一度に押し寄せてくる”――
LISTENERの記録にあった、
あの状態に似ている気がする。」
澪は、
モールの建物をじっと見つめ、
胸に手を当てる。
視覚的には、
モール全体の上に、
かすかな“光の膜”のようなものが
揺らめいているのが見える。
澪(手話)
『今は、
ほとんど静か。
でも、
さっきまで“音が溜まってた”痕みたいなのが残ってる。
……プールの、水の輪っかが
まだ揺れてる感じ。』
健が、
顔を近づけてメモを書く。
健のメモ
『ミオの例え、
だいたい毎回カッコいいよな。』
澪、
ちょっと照れながら肩をすくめる。
葉山は、
入口のほうを見てから、
別のほうを指さす。
葉山のメモ
『正面は無理。
裏手の搬入口側、
通用口から中の様子だけ見てみましょう。
入れなかったら、
外からでも“波”は感じられるはず。』
4人は、
建物の周りを回り込み、
人気の少ない搬入口側へと向かう。
【モール裏手・搬入口付近】
搬入口側の道路。
シャッターはほとんど閉まっているが、
スタッフ通用口への小さなドアがある。
その周辺には、
「関係者以外立入禁止」の札と、
簡易バリケード。
だが今は、
人も少なく、
警備もゆるい。
4人は、
バリケードから少し離れた場所で立ち止まる。
澪が、
空気を吸い込む仕草をして、
ゆっくりと目を閉じる。
視覚的には、
モールの中から、
薄い“モヤ”のようなものが
通用口の隙間から滲み出ているイメージ。
澪(心の声)
『中に、
まだ“音の残り”がある。
さっきの教室みたいな、
一瞬の点じゃなくて――
“塊”になって、
ゆっくり溶けてる感じ。』
優斗も、
耳に意識を集中させる。
自分の呼吸、
心臓の鼓動――
聞こえないはずなのに、
その“聞こえないこと”が、
逆に強く意識される。
そのとき、
通用口のドアが、
内側から少しだけ開く。
中から出てきたのは、
モールの管理スタッフらしき男性。
疲れた顔で書類を抱えている。
葉山が、とっさにメモとペンを持って駆け寄る。
葉山のメモ
『市の調査の者です。
少しお話を伺ってもいいですか?』
スタッフは驚きつつも、
状況に慣れているのか、
肩をすくめて頷く。
筆談のやりとり
『現場はもう片付けたけど、
中、まだちょっと気持ち悪い雰囲気で……』
『音が戻ったとき、
どんな感じでしたか?』
スタッフの書いた文字がアップに。
『全部が一度に戻ってきた感じ。
BGM、アナウンス、子どもの泣き声、
フードコートのガヤガヤ、
機械音……
でも、
それだけじゃなかった気もする。』
葉山、更に尋ねる。
『それだけじゃない?』
スタッフ、
ペンを握り直す。
『説明しにくいけど、
“聞いたことのない音”も混じってた。
外国語みたいな喋り声とか、
雷みたいな、波みたいな、
……“海の底の音”みたいな。
ここじゃないどこかの音が、
一緒に押し寄せてきた感じ。』
優斗の脳裏に、
LISTENERのログがフラッシュバックする。
『世界中の多地点の音声信号を同時に感知している可能性』
優斗(心の声)
「やっぱり――
LISTENERと、
“塊音”は繋がってる。」
スタッフは、
ふと通用口の中を振り返り、
少し怖そうに書く。
『さっきから、
また変なんですよ。
中にいると、
ときどき“何かが囁いてる気”がする。
音は聞こえないのに、
耳の奥がムズムズする。』
その瞬間――
優斗の耳の奥にも、
“ムズッ”とした感覚が走る。
視覚的には、
画面周囲に
薄い“波形ノイズ”が出てくる演出。
優斗(心の声)
「……来た。」
ミオも同時に、
胸を押さえる。
健が、
何かに気づいたように
モールの壁を見上げる。
彼の視界には、
ほんの一瞬だけ、
壁越しの向こう――
センター広場らしき場所が
透けて見えるような錯覚映像。
フードコートのテーブル、
噴水、
エスカレーター。
そして――
そこに立つ、
幼い子どものシルエット。
健、
目をこすって二度見するが、
もう何も見えない。
健(心の声)
『今、
子ども……?』
通用口の内側から、
“見えない波”が押し寄せてくるような演出。
――世界の“塊音”が、
再び動き出そうとしている。
葉山が、
即座にメモを走らせる。
葉山のメモ
『ここで、
一気に観測する。
中に入らなくても、
この場で十分感じ取れるはず。
ただし――
限界を感じたらすぐ離れること。
いい?』
3人、緊張した面持ちで頷く。
通用口のドアが、
スタッフによって完全に閉じられる。
重い金属音――が、
実際には鳴らないことが
逆に不自然に感じられる。
しかし、
そのわずかな隙間から、
“音の残響”のような気配が
じわじわと溢れ出してくる。
LISTENERSたちは、
それぞれの“聴き方”で、
世界の沈黙の中の“音”を探り始める――。
【モール裏手・点音の“再発”】
空気が、
再び“ピンッ”と張り詰める。
澪の視界には、
モール全体の上に
巨大な“球体の光”が現れ、
その表面に小さな光の点が
びっしりと浮かんでいるように見える。
澪(心の声)
『ここから、
弾ける。
さっきより、
大きい。』
優斗の耳には、
“聞こえない音”が
押し寄せてくる。
ノイズ混じりの波形や、
かすかな残響の影だけが
・遠くの雷鳴のイメージ
・人々の笑い声の影
・海の底で響くような低い唸り声
・誰かが名前を呼ぶような囁きの気配
その全てが、
彼の頭の中で渦を巻く。
優斗(心の声)
「くるな……
くるな……
今、ここで暴れられたら――」
健の耳にも、
僅かな“ズレ”が生まれる。
彼の聴覚は、
LISTENERほどの過負荷ではない。
でも、
“世界の静寂”に慣れてしまった耳には、
このわずかな異物が、
かえって鋭く感じられる。
健(心の声)
『なんだこれ……
聞こえないのに、
“うるさい”ってどういう感覚だよ。』
葉山は、
額に汗を浮かべながら、
あえて目を閉じる。
葉山(心の声字幕)
『LISTENER-01。
あの子の“内部音場”に似ている。
でも、今は施設じゃない。
街の真ん中で、
同じことを起こそうとしている――
誰が?』
その瞬間――
優斗の頭の中に、
はっきりとした“声”が響く。
???
『聞こえるかい、LISTENER-01。』
優斗の瞳孔が開く。
膝が少し震える。
周囲の世界は無音のまま。
しかし、
彼だけの“内側”で、
誰かの言葉が続く。
???
『テストは順調だ。
世界は、
“沈黙に耐え始めている”。
次は――
君がどこまで“音を引き寄せられるか”の確認だ。』
視覚的には、
モールのセンター広場の映像がインサートされる。
そこに、
黒いコートの人物のシルエット。
顔は見えない。
その人物が、
何か装置のコンソールに手を置いている。
優斗(心の声)
「誰だ……?
俺を、知ってる……?」
澪は、
優斗の肩が震えているのに気づき、
手を握ろうとするが――
指先が、
“見えない何か”に弾かれるように
ビリッと震える
澪(心の声)
『ユウトの周りだけ、
“空気の膜”ができてる。
触れると、
中に引きずり込まれそう。』
健は、
思わず叫びそうになり――
声が出ないことを思い出して
代わりにユウトの背中をドンと叩く。
その“叩く音”が――
一瞬だけ、
はっきりと鳴る。
健(心の声)
『戻ってこい、バカ!
どこ行ってんだよ、耳だけで――!』
その“点音”が、
優斗の頭の中に渦巻く音の波を
わずかに乱す。
謎の声の字幕が、
一瞬揺らぐ。
???(ノイズ)
『……テ……ス……? 干渉……?』
優斗は、
自分の意志で目を見開き、
その“声”に向かって心の中で叫ぶ。
優斗(心の声)
「勝手に“テスト”とか言うな。
世界を、おもちゃにするな。」
モールのセンター広場の映像の中で、
黒いシルエットの肩が、
僅かに動く。
???(字幕)
『……その反応。
やはり君は、LISTENER-01だ。
喜ぶべきだよ。
世界は今――
君一人の耳を通して、
“再構築”されつつある。』
優斗の表情に、
怒りと恐怖が同時に宿る。
優斗(心の声)
「そんなの、
勝手に決めるな……!」
その瞬間――
澪が、
優斗の手を両手で掴む。
視覚的には、
優斗周辺にかかった“透明な膜”が
澪の手からひび割れるような演出。
澪(手話)
『優斗は、
“一人の耳”じゃない。
わたしたちが、
“LISTENERS”。
勝手に、
“一人だけの役”にしないで。』
その言葉が、
優斗の内側の波に
別の“リズム”を生む。
健も、
拳を握ってユウトの肩を掴む。
健(心の声)
『そうだよ。
そんなカッコ悪いソロプレイ、
こっちが許さねーからな。』
葉山もまた、
二人の後ろに立ち、
彼らの背中に手を置く。
4人の手が、
優斗を中心に“輪”を作る。
それに呼応するように――
モール全体を覆っていた“光の球”が、
バリバリとひび割れ、
内部の点音が四方に散っていくイメージ。
謎の声が、
ノイズに包まれる。
???(字幕/乱れ)
『……解析外……?
複数の――同期――
LISTENERS……
計画に、ない――』
最後の「LISTENERS」の文字だけが、
くっきりと画面に残り、
ゆっくりと消えていく。
現実の世界では――
通用口周辺に漂っていた
“重たい圧力”が、
ふっと軽くなる。
澪は、
胸の前で手をひろげて、
さっきまで感じていた“塊”が
ほどけていくのを確かめる。
優斗も、
耳の奥のざわめきが遠のくのを感じている。
健の肩の力も抜け、
大きく息を吐くジェスチャー。
葉山は、
ただ、
四人の手の輪を見つめている。
葉山(心の声字幕)
『一人のLISTENERじゃない。
“複数形”のLISTENERS。
この子たちは、
もう計画の“外側”にいる。』
空を見上げると――
さっきまでモール上空に集まっていた
光の筋が、
何本か消えている。
代わりに、
小さな光の点が
遠くの空に散っていく。
優斗(心の声)
「俺たちが、
“音の戻し方”を、
向こうにとって“想定外の形”で
選べるかもしれない。」
彼は、
ぎゅっと握られた三人の手を見て、
小さく笑う。
澪も、
スケッチブックを取り出し、
さっきのモールのイメージを描き始める。
中央にあった“光の球”は、
今や四方向に伸びる線で表現され、
その中心に
小さな文字で書き込まれる。
『LISTENERS』
健がそれを見て、
ニヤッとする。
健
『やっぱ、
チーム名、
まあまあカッコいいな。』
葉山も、
少しだけ肩の力を抜いて笑う(無音)。
そのとき――
優斗のスマホが震える。
画面には、
見覚えのない通知。
『新着メール:
差出人不明<no-reply@aef-lab.org>』
件名。
『LISTENER-01へ
――再会の準備はできたか?』
優斗の表情が固まる。
澪と健、葉山も画面を覗き込む。
夜の研究施設の制御室。
謎の人物が、
コンソールに指を滑らせながら、
モニターの「LISTENERS-CLUSTER」の文字を見つめている。
その口元が、
静かに綻ぶ。
謎の人物
『やっと、
物語らしい音がし始めた。
さあ――
次は、
“こちら側”で聴いてもらおうか。』




