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第22話「最後のラブソング」

【夜・最終音場(海上)】

海は吹き出しのように盛り上がり、

その中心で

“ね”の光が震えている。

静寂派は混乱し、

海の光に怯えて後ずさる。

静流は涙をこぼしながらその場に膝をつく。

優斗・澪・健・葉山の4人は

海に向かって立ち尽くす。

健は胸を押さえたまま叫ぶ(声はないが口が形を作る)。

    健(口パク)

『“な”……!

 続き……来るぞ……!!』

ミオは吹き出しを全力で読み取ろうとするが、

光が強すぎて目を細める。

    ミオ(手話)

『海が……“次の文字”を出そうとしてる……!

 でも……

 揺れすぎて……読めない……!!』

葉山はタブレットを見て震える。

 《世界規模の海域:同時共鳴》

 《凪の感情波:最高潮》

 《最終音場:開門率 92%》

優斗だけが、

海に浮かぶ“な”の光に

奇妙な既視感を覚えていた。

胸がチクリと痛む。

    優斗(心の声)

「この“な”……

 どこかで見たことがある……

 いつだ……

 どこで……?」

そのとき――

海が、再び語った。

 《……な……お……》

その形は

“名前”の一部ではなく、

呼びかけだった。

波影が揺れる。

凪の涙の影が落ちる。

健が息を呑む。

    健(心の声)

『呼びかけ……!

 凪……誰に呼びかけようとしたんだ……!』

静寂派リーダーが前へ進み、

震え声で叫ぶ(字幕)。

    静寂派リーダー

『やめろ……!

 “なお”は呼びかけだ!

 その直後に続く“名前”が、

 世界をもう一度揺らす!!』

澪が叫ぶ。

    澪(手話)

『でも……

 凪は……

 “○○”って

 本当に呼びたかったんだよ……!!』

海が再び強烈に光り、

海上に“影の凪”が浮かぶ。

涙を流し、

誰かを呼ぶために

唇を震わせる“影”。


【凪の本当の願いが形になる】

影の凪は

海の中心に立つように現れる。

サイレントワールド特有の

“音のない涙の落下の影”が

海面で波紋を描く。

健が震える。

    健(口パク)

『凪……

 まだ泣いてる……

 最後の言葉、

 まだ言えてないまま……!』

澪は凪の吹き出しを読み取ろうとする。

凪の唇は

はっきりとこう動いた。

 《……ねえ……

   聞いて……?》

それに合わせ海がさざめく。

波が凪の声の形を描く。

葉山はタブレットを握りしめる。

 《最終音場:完全開門まで残りわずか》

 《凪の“未完の言葉”が浮上中》

静流は泣きながら叫ぶ(字幕)。

    静流

『凪は……

 あの日……

 誰にも届かなかった“ひと言”を

 今も言おうとしてる!!

 “ねえ、○○”って……!!

 その最後の名前が……

 凪の全部だったの!!!』

静寂派の多くが崩れ落ちる。

涙をこぼす者もいる。

優斗は、

凪の影を直視したまま

胸の奥に、

何か重いものを感じていた。

    優斗(心の声)

「なんで……

 こんなにも苦しいんだ……

 “ねえ”の呼びかけに……

 胸が反応する……

 俺は凪と会ったことなんて……

 ないはずなのに……!」

海が突然、

巨大な影を映し出した。

凪の“心の形”。



【凪の心の形=最後のラブソング】

海上に、

凪の記憶と感情が混ざった

巨大な“歌の影”が浮かぶ。

それは美しく悲しい。

でも、確かに“ラブソング”だった。

・イントロの影

・Aメロの涙

・サビ前の緊張

・サビの祈り

そして……

ラストの“愛してる”の奥に――

名前を呼ぼうとする影。

凪は最後の力を振りしぼるように

唇を動かす。

 《……ねえ…………》

海が反応して光が揺れる。

 《……ねえ、あ……》

波が放射状に広がる。

 《……ねえ、あな……》

澪が涙を流す。

健が震える。

葉山が息を呑む。

静流が泣き崩れる。

そして――

優斗の胸が

締めつけられるように痛んだ。

    優斗(心の声)

「……“あな”……?

 続くのは……

 “あなた”?

 違う……

 もっと個人的な……

 “名前”だ……!!」

凪の声の形が

海の上に揺れ、

優斗の目の前へと迫る。

静寂派リーダーが叫ぶ(字幕)。

    静寂派リーダー

『やめろ!!

 その先は……!!

 “名前”を言わせるな!!!

 世界の静寂が壊れる!!!』

だが優斗は

凪の影に手を伸ばした。


【最後の一文字の“前”──世界が震える】

凪の影は

最後の呼吸を震わせる。

海が盛り上がる。

空が光る。

世界中の海域が共鳴する。

澪が叫ぶ(手話)。

    澪(手話)

『来る……!

 凪の最後の言葉の……

 “名前”が……!!』

健の胸の光が爆発する。

葉山が立ちすくむ。

静流が祈るように涙を流す。

優太だけが前へ進む。

凪の唇が

ゆっくり、

確実に形を作った。

 《……ねえ、あな──》

世界が光で裂ける。

光が優斗の顔を照らし、

その瞬間、

“最後の一文字の気配” が

優斗の胸へ

深く突き刺さった。

だが――

名前は言われない。

直前で世界が揺れ、

声の影が散ったから。

優斗が涙を流す。

    優斗(心の声)

「……“あなた”じゃない。

 違う……

 もっと近い……

 個人の名前……

 “あな”の次に来る文字は……

 誰なんだ……!!」

海が大きくうねり、

視界が白く染まる。

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