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第21話「静寂か、言葉か」

【海底からの帰還・夜の海岸】

まばゆい光が収束すると、

優斗・澪・健・葉山は

海岸の岩場に倒れ込んでいた。

波は相変わらず音がない。

でも今は、

“世界が息を呑んでいる”ように揺れている。

澪がスケッチブックで震える手話。

    澪(手話)

『……海の底で……

 “名前の頭文字”を……

 凪が……

 “ね”って……!』

    たけど(心の声)

『胸が……苦しい……

 “ね”の呼びかけが……

 俺にも刺さる……!

 凪が呼ぼうとしたのは……

 誰なんだ……!!』

葉山はタブレットを真っ青な顔で見ている。

 《全世界の海域:異常揺れ検知》

 《静寂派:暴走阻止のため行動開始》

 《言葉のコア:覚醒前兆》

優斗は、

ノートを強く握りしめたまま

海を見つめていた。

目にはまだ涙が残る。

    優斗(心の声)

「“お”って……

 誰の名前なんだ……?

 凪は……

 誰に“愛してる”を言いたかった……?」

そのとき――

海岸の背後で

複数の影が揺れた。

静寂派。


【静寂派との全面対峙】

黒いコートを着た静寂派のメンバーが

一斉に現れる。

その中心に立つのは

静流ではない、

別のリーダー格の男。

白髪で痩せた目。

冷たい表情。

だが涙の跡がある。

男は手話と唇の形で

はっきりと言った。

    静寂派リーダー(字幕)

『凪の“最後の名前”に触れるな。

 あれは――

 世界を壊す。』

優斗が一歩前へ出る。

ノートを広げて書く。

 『凪は……

  静寂を望んでいなかった。

  最後の言葉を届けたかっただけだ。

  その“名前”を……

  呼ばせてあげたい。』

静寂派のリーダーの目が激しく揺れる。

    静寂派リーダー(字幕)

『あなたは……何も知らない!

 凪が最後に呼ぼうとした“ね”の名は……

 あの日、ステージ裏に来られなかった

 たった一人の人物……!

 その人のために歌った最後の歌が

 世界を壊したんだ!!』

澪はその言葉に涙をにじませる。


葉山は息を呑む。

静寂派リーダーは震える手を見せた。

    静寂派リーダー(字幕)

『ラストステージの直前……

 凪は“ね”の名前を呼んで泣いていた。

 その愛が深すぎたんだ。

 世界は……

 凪の想いに耐えられなかった。

 だから音が消えた。

 “静寂”は、世界の自衛なんだ……!』

優斗は唇を噛む。

    優斗(心の声)

「そんな理由で……

 凪は最後の言葉を閉じ込められて……

 海に落ちて……

 静寂が続いてる……?」

静流が駆け下りてくる。

涙で顔が濡れている。

    静流(字幕)

『もうやめて!!

 凪は……

 本当に音を奪いたかったんじゃない!!

 あの人と話したかっただけ……

 ただ名前を呼びたかっただけ……!!』

静寂派リーダーの手が震える。


【LISTENERS vs 静寂派:最大衝突】

海が大きく光り、

凪の残響体が海上に“立ち上がる”。

その瞬間――

静寂派が一斉に動く。

リーダーが叫ぶ(字幕)。

    静寂派リーダー

『あれ以上“言葉”を進ませてはならない!!

 世界を守るためだ!!』

健が前に出る。


    健ノートに書く

『違ぇよ!!

 守りたいなら……

 凪の言葉を最後まで聞かせてやるのが

 本当の守りだろ!!!』

静寂派のメンバーが健を囲む。

しかし――


まるで凪の“お”に呼応するように。

澪は吹き出しの嵐の中でも

冷静に手話で叫ぶ。

    澪(手話)

『凪は……

 “伝えたい想い”を

 最後まで持っていた!!

 それを奪うことは……

 凪の生きた証を否定することだよ!!』

葉山も目を見開きながら叫ぶ。

    葉山メモ

 『静寂は愛の代償だ。

  でも……

  代償のままでは救われない!!

  次の世界へ進むために

  “最後の言葉”が必要なんだ!!!』

静寂派の包囲が狭まる。

しかし―

優斗が前に出る。

凪の残響体が優斗だけを見つめている。

優斗はノートを掲げて

静寂派全員に向けて書く。

 『凪を守りたいなら。

  本当に守りたいなら。

  凪の最後の言葉を

  “届けさせて”くれ。

  それが……

  凪が一番望んでたことなんだ。』

静寂派の動きが

一瞬止まる。

その沈黙の瞬間に、

海が大きく揺れた。



【海が名前を“呼ぶ”】

海面が巨大な吹き出しの形に盛り上がる。

その中心に、

“お”の光が浮かぶ。

まるで海そのものが

凪の代わりに呼ぼうとしている。

健が胸を押さえる。

澪は震える。

葉山は息を呑む。

静流は膝をつく。

優斗は、

その“お”を見つめたまま

涙を拭って立ち尽くす。

海が、

呼んだ。

 《……お……》

凪の声の影。

名前の最初の呼吸だけ。

静寂派全員が揺れる。

静寂派リーダーが

震えた声で叫ぶ(字幕)。

    静寂派リーダー

『やめろ……!!

 その先は……

 “あの人の名前”は……

 言ってはならない……!!!』

優斗の瞳が大きく揺れる。

    誘惑(心の声)

「“お”から始まる名前……

 凪が呼びたかった人は……

 いったい……誰なんだ……?」

海がまばゆく光る。

最終音場が

完全に開き始める。

画面が白く染まる。

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