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第19話「海が呼ぶ声」

【静寂室・凪の残響体が揺れる】

白い静寂室の中心で、

凪の残響体が淡い光を放ち震えている。

優斗、澪、健、葉山、静流――

全員が息を呑み、その様子を見守っている。

凪の胸元に集まっていた文字粒が

ひとつ、またひとつと離れはじめる。

・「あ」

・「り」

・「と」

・「う」

・「ごめ」

・「さよ」

・「あいして」

すべてが、

凪の心を中心に震えている。

澪の目には、

“声の吹き出し”が

猛烈な速度で広がっていく映像が見える。

    澪(手話)

『……この揺れ……

 “海”と連動してる……!

 海が……凪を呼んでる……!』

優斗の喉奥が締めつけられる。

    優斗(心の声)

「この震え……

 “最後の言葉”が

 海で待っている……

 そんな感じがする。」

葉山はタブレットを確認し、声を失う。

 《海:全世界的に反応》

 《波の影:出現》

 《歌の残り香:海域へ集結中》

静流は震える手で壁に寄りかかる。

    静流(字幕)

『凪が……

 “あの夜の続きを歌おうとしてる”。

 でも……

 それは危険なの……!

 今度こそ、世界が――!』

健が静流の言葉を遮るように、胸に手を当てる。

    健(口パク)

『違う……

 今の凪は、

 あの日よりずっと優しい。

 もう誰も壊さない。

 ただ……

 “最後のひとこと”を

 誰かに、ちゃんと届けたいだけだ。』

静流が涙を流す。

だが、凪の残響体は

ゆっくりと手を伸ばす……

優斗のほうへ。

その瞬間、部屋全体が強烈に光り――

凪の意識の一部が

澪へ流れ込む。

澪の目が見開かれる。

    澪(心の声)

「“海へ来て”…?」

凪の思念が、確かに

優斗へ“行き先”を示した。


【施設外・海辺の崖】

研究所から飛び出した五人は、

崖上の海を見下ろす。

風が強い。

波が高い。

だが――

音はない。

それでも、

波の影が異常なほど揺れている。

健が胸を押さえる。

    健(心の声)

『海の底に……

 “ごめん”の続きがある。

 呼ばれてる……

 凪の最後の気持ちが……

 海の底で待ってる……!』

澪はスケッチブックを開く。

波の表面に

“無数の文字片”が踊っている。

 『あ』『り』『が』『と』『う』

 『さ』『よ』『な』『ら』

 『あい』『して』『る』

 『め』『ん』『ね』

全部が、

海へ吸い込まれるように集まっている。

葉山がアプリを見せる。

 《最終音場:海の中心部》

 《深度:数十メートル》

 《“声のコア”反応:発生》

澪は震える手話を送る。

    澪(手話)

『海の底に……

 凪の“最後の言葉”が

 閉じ込められてる……!

 世界が静かになった瞬間、

 その言葉だけが

 海へ落ちた……!』

静流の顔が青ざめる。

    静流(字幕)

『それを……

 開こうとしてる……凪が……!

 そんなことしたら――

 世界中の静寂が揺れる!!』

優斗は

海を見つめ、静かに頷く。

    優斗ノート

 『揺れてもいい。

  揺らさなきゃ届かない言葉が、

  この世界にはある。

  “愛してる”の続き――

  それが凪の本当の願いなら、

  俺たちが行く。』

健と澪が頷く。

葉山は少し笑う。

静流は、泣きながら目を伏せた。

    静流(字幕)

『……行ってあげて。

  凪は……

  ずっと

  あなたたちLISTENERSに

  来てほしかった……

  本当は……

  ずっと……。』

その時――

海全体が“息を吸うように”光り、

一斉に“波の影”が立ち上がる。

その形は、まるで――

巨大な“吹き出し”。

海そのものが

「言いかけた言葉」を

世界に向けて吐き出そうとしている。


【波のない海が“歌い始める”】

海岸へ降りた4人(静流は崖上で見守る)。

波は音がないのに、

明確に“歌のリズム”で揺れている。

・イントロ

・Aメロ

・サビ前

・サビ

それぞれに対応する波影が

はっきりと形を持っている。

澪はその全体をスケッチするが、

手が追いつかない。

    澪(手話)

『……海が……

 凪の“ラストソング”を

 再生してる……!

 世界中の海が……!』

タケルが波の影に触れようとする。

胸の“ごめん”の光が激しく反応する。

    タケル(心の声)

『凪の最後の気持ち……

 “ごめんね”の続き……

 俺の胸の中に

 残ってる言葉……

 “愛してる”の手前で

 止まってた気持ち……

 今……

 全部海に集まってる……!』

葉山は海の地図を表示させる。

 《世界の主要海域 同時反応》

 《歌の残滓:合流中》

 《過去最大級の音場形成》

ユウトの瞳には、

海の揺れが“歌詞”の形になって見える。

 《あ》《り》《が》《と》《う》

 《さ》《よ》《な》《ら》

 《あい》《して》《る》

その文字列の“さらに下”に――

まだ見えない

“最後の一文”がある気配。

優斗の心臓が大きく跳ねる。

    優斗(心の声)

「……凪……

 最後に何を言おうとしてたんだ?」

海はまだ “答え” を見せない。

ただ波影が険しく揺れ、

凪の声の残り香が

世界へ呼びかける。


【海底からの“呼び声”】

海の中心が

暗く沈むように凪いだ。

そして――

海底から

まるで “誰かが手を伸ばすように”

光が伸びてきた。

澪が息を呑む。

    澪(手話)

『……誰か……

 海の底で

 “待ってる”……!

 凪の最後の言葉の受け手が……

 そこに……!』


優斗は涙をこぼす。

    優斗(心の声)

「凪は……

 最後に言いたかったんじゃない。

 “伝えたかった”んだ……

 誰かに……

 確かに……

 この海の底で待っている誰かに……!」

葉山が画面を見て震える。

 《最終音場:海底に確定》

 《“言葉の受け手” 反応あり》

静流は崖の上で泣きながら叫ぶ(字幕)。

    静流

『それ以上行ったら……

 もう戻れないよ……!!

 世界が……

 本当に揺れ始める……!!』

だが、四人は迷わなかった。

優斗が海に向かって書く。

 『行くよ。

  凪の最後の言葉を受け取りに。

  世界がどうなっても……

  あの歌だけは、

  終わらせたい。』

海が大きく轟くように(無音の衝撃)揺れる。

“最終音場”が開き始める。

視界が光に包まれる。

そして――

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