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第15話「ありがとうの本当の意味」

【日没直後・波のない海岸】

前回、海から立ち上がった“文字の影”。

あれは――

 『さ……』

優斗たち4人は

“静寂派”の黒いコートの人物と向き合い、

海岸の静寂は張りつめた空気に包まれている。

波は揺れている。

だが、音はない。

ただ、風と光の震えだけがある。

健は胸の奥の“ごめん”を押さえ、

優斗は喉の奥に

“聞こえない声”がぶつかってくる感覚を味わっている。

澪は、

“さ”の文字を見つめる。

    ミオ(字幕モノローグ)

『“あ・り・が・と・う”。

 そのあとに続く“さ”。

 これは、きっと――

 “さよなら”の始まり。』

優斗がノートに書く。

 『あなたは言った。

  “ありがとうは、さよならだ”って。

  本当の意味を教えてくれ。』

静寂派の人物は

しばらく沈黙したあと、

海に視線を向けて言う(字幕)。

    不明人物

『あの歌の主は、

 “この海で最後の歌”を歌った。

 誰かに届けたくて。

 でも、

 間に合わなかった。

 音が消えたせいで――

 最後の一言が、

 散った。』


    健(心の声)

『誰かが最後に歌った歌……

 その“ありがとう”と“さよなら”と“ごめん”が

 全部、この世界中に散ったのか?

 そんなこと……ありえるのかよ……。』

澪は海の揺れを見つめる。

波影が、歌のリズムのように揺れる。

静寂派の人物が少し声を震わせる。

    不明人物

『あの人が望んだのは……

 “静かな世界”。

 耳を痛める音も、

 誰かを傷つける言葉もない世界。

 あの人の願いを叶えたのが――

 “音が消えた日”。』

優斗

(ノート)

 『じゃあ……

  音を戻すことは、

  その人の願いを壊すこと?』

不明人物は、悲しそうに目を伏せる。

    不明人物

『そういうことだ。

 LISTENERS。

 君たちがしていることは、

 その人の“遺した夢”を壊す行為でもある。』

四人は沈黙する。

静寂派の人物は、

深く息を吸い――

その胸の奥から、

小さな青い光を取り出す。

それは、

青と白が混ざり、

“ありがとう”の粒に似ている。

    不明人物

『これが……

 あの人の残した “最後の音”。

 君たちは触れるな。

 これは静寂の中で眠るべきなんだ。

 もし起こせば、

 世界は――』

言いかけた瞬間、

海から再び文字が浮かび上がる。

 『さ・よ』

四人は息を呑む。

黒いコートが叫ぶ(字幕)。

    不明人物

『やめろ!!

 “さよなら”は――

 “静寂の終わり”なんだ!!』

風が渦巻く。

海が一気に揺れ、

波音の“影”が濃くなる。

澪が一歩前に出る。

    澪(手話)

『でも……

 “さよなら”は、

 きっと悲しいだけの言葉じゃない。

 誰かを大切に思った最後の言葉。

 消していいはずがない。』

優斗も続く。

    優斗ノート

 『音を戻すんじゃない。

  ただ“言葉の行き先”を知りたいだけだ。

  その願いは壊さない。

  願いを蘇らせるんだ。』

静寂派の人物は、

苦しげに首を振る。

    不明人物

『その願いが……

 世界を沈めたんだ!!

 “さよなら”は悲しすぎた。

 その感情が……

 世界中の音を連れていった!

 あの人のために、

 世界は静かになったんだ!!』

四人は凍りつく。

世界が静かになった理由――

それは“誰かの歌”だった?


【海の記憶が開く】【過去回想】

突然、

海が淡く光り始める。

波のない海の中心に

“過去の風景”のような影が広がる。

おそらく――

世界が静かになる直前の、

“最後の記憶”。

視覚イメージ(無音)

・海辺のスタジオ

・マイクの前に座るひとりの人影

・夜の海風が吹き込む

・その人影は

 泣きながら誰かの名前を呼ぼうとする

・涙が落ちる

・ピアノの音の影

・そして――

 最後に歌わせてほしい、と願う影

声は聞こえない。

ただその“震え”が胸に届く。

澪の目から涙がこぼれる。

    澪(心の声)

『この歌……

 誰かを想ってる。

 すごく……深い想い。

 でも届かなかった。

 だから散った……。』


    優斗(心の声)

「この歌の主……

 本当に願ったのか?

 “世界が静かであれ”なんて。

 そんな悲しい歌を、

 本当に最後の願いにしたのか……?」


 健(心の声)

『この“ごめん”……

 あの歌の主の気持ちだ。

 俺……確信した。

 この人、

 “静寂なんて望んでなかった”。

 最後に願ったのは……

 ちゃんと伝えたかったって気持ちなんだ。

 “ごめん”も、

 “ありがとう”も、

 “さよなら”も……

 全部届けたかった言葉!』

静寂派の人物は、

目を見開いて振り向く。

    不明人物

『違う!!

 あの人は……

 静寂を願ったんだ!!

 それだけが……救いだったんだ!!』

声はない。

でも悲痛さが伝わる。

澪は首を振る。

    澪(手話)

『違うよ。

 本当に望んだのは

 “伝えられなかった言葉を

  ちゃんと届けること”。

 静寂は、その後に

 勝手に世界が生んだもの。』

優斗・健・葉山

三人全員が、

ミオの言葉に“確信”を覚えた。

その瞬間、海が大きく光る。

 『さ・よ・な・ら』

四人も、

黒いコートも、

誰も動けない。


【“さよなら”の衝撃】

海が揺れ、

波影が大きく立ち上がる。

音はまだ出ない。

でも、

波の形は“歌のクレッシェンド”のよう。

優斗の体が強く摇れる。

    優斗(心の声)

「これ……

 俺の内側に響いてくる……

 まるで、“聞こえた”みたいだ……

 いや……

 聞こえた気がする……!」

澪のスケッチに

“さよなら”の全体が浮かぶ。


そのとき、

海からもうひとつの文字が浮かぶ。

 『あい』

澪の息が詰まる。

    澪(手話)

『“あい”……

 これ……

 “愛”……?』

優斗の目が大きく開く。

    優斗(心の声)

「ありがとうと

 ごめんと

 さよならの裏にあったのは……

 “愛してる”……

 

→『ごめん、あいし……』


    健(心の声)

『この声の主……

 最後に伝えたかったのは

 “愛してる”だったのか……

 それが……

 届かなかった……

 だから散った……

 こんなの……

 悲しすぎる……』

葉山も、

眼鏡を外して目を閉じる。

    葉山(心の声)

『これが……

 世界が静かになった理由の

 片鱗……

 想像以上に……深い……。』

静寂派の人物は

崩れ落ちるように砂に膝をつく。

    不明人物

『……違う……

 やめてくれ……

 その言葉は……

 思い出したら……

 あの人が……

 苦しむ……!!

 だから……

 静寂で覆ったんだ!!』

涙を堪えるような気配。

そのとき、

海から最後の欠片が浮かぶ。

 『てる』

優斗が息をのむ。

澪も手を震わせる。

そして四人は確信する。

“愛してる”

“ありがとう”

“ごめん”

“さよなら”

全部同じ場所から出た言葉だ。

海に散った歌――

それは誰かの

最後のラブソングだった。



夕闇の海岸。

波がゆっくりと光を失っていく。

声は戻らない。

だが、

“言葉の欠片”ははっきり残った。

不明人物は立ち上がるが、

足は震えている。

    不明人物

『……LISTENERS。

  君たちがやろうとしていることは

  あまりにも……優しすぎる。

  だが……残酷でもある。

  その“愛の歌”を蘇らせれば……

  あの人は――

  また傷つく。』

優斗は首を振る。

    優斗ノート

 『違う。

  俺たちは

  “愛してる”を蘇らせたいんじゃない。

  ただ――

  “最後まで届かなかった気持ち”を

  世界が忘れないように

  つなぎたいだけだ。』

澪が涙を拭いながら手話。

    澪(手話)

『静寂を壊すためじゃない。

 静寂の中に

 その人の言葉を

 やさしく置きたいだけ。

 音のない世界でも

 “思い”は残せるから。』


    健(口パク)

『ごめんも

 ありがとうも

 さよならも

 “愛してる”も……

 全部その人のものなんだ。

 逃げさせない。

 俺が証人になる。

 証聴者として。』

不明人物は深く俯き――

海を見て、

静かに呟く。

    不明人物

『……あの人の歌を

  守りたいだけなんだ、私は。

  君たちも……

  同じなのかもしれないな。』

風が静かに吹く。

波影がふっと揺れ、

“ありがとう”の字が消えていく。

最後に海に残るのは――

淡い《愛してる》の光。


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