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第12話「証聴者、目覚める」

【翌朝・健の部屋】


健の部屋。

机の上にはスケッチブックとメモ帳、

そして昨日撮った海の写真。


しかしタケルは――

ベッドで寝ていない。

床に座り込んで、

じっと一点を見つめている。


視覚イメージ。


・部屋の天井近くに、小さな“光の粒”

・その周りを、

 細い線が渦を巻くように回っている

・色は薄い青

・しかし“揺れ方”だけは不自然にリアル


健は、

それをずっと見ていた。


    健(心の声)

『昨日からだ。

 海で“波の影”を見てから、

 なんか、部屋に“音の余韻”みたいなのが

 漂ってんだよな。

 澪が見る線の“ちょい弱いやつ”……

 いや、違う。

 これは“音があった場所の跡”みたいな……。』


視界の端で、

光の粒がふっと消える。


健は思わず立ち上がり、

手を伸ばす。


しかし――

手が触れた瞬間、

粒が弾けるように散って消えた。


    健(心の声)

『なんで“触れそう”って思ったんだ、俺。

 見えてるのか?

 感じてるだけじゃなくて?』


スマホを見ると、

通知がひとつ。


 《LISTENERS:集合

  学校裏のベンチ》


健は、

小さく息をつきながら

ジャケットを羽織る。


心臓が妙にドクドクしている。


    健(心の声)

『なんか……

 俺の中で何かが“開いた”感じがする。

 気のせいか?

 でも、気のせいじゃなかったら……。』


部屋を出る。

その背中を、

まだ消えきらない“青い粒”が

ひっそりと見送っていた。


【学校裏・いつものベンチ】


澪、優斗、葉山が揃っている。

健が走ってやってくる。


    健

(※口パク)

『悪い遅れた。』


優斗がノートを見せる。


 『健。

  今日、話したいことがある。

  LISTENERS FIELDに

  “新しい分類”が追加された。』


健は眉を上げる。


澪が、

スケッチブックで説明を書く。


 『LISTENER-03:Witness Listener

   ――“証聴者しょうちょうしゃ”』


「は?」


葉山が補足を書く。


    葉山メモ

 『LISTENER-01(優斗)や

  LISTENER-04(澪)

  とはまた違う、“第三の感受者”。


  “音があった風景”を

  想像ではなく“追体験”として切り取れる

  特殊能力者。』


健は目を瞬く。


    健

(口パク)

『追体験……?

 昨日海で見たアレか?

 なんか波の影が、

 自分の中に“入ってくる”感じ……。』


優斗がノートをめくり、

健が知らないログを見せる。


 『塔からの報告:

  海での“PARTIAL LINK”は

  健が原因。

  証聴者の能力が覚醒し始めていた。』


「……マジで?」


澪が、

小さく頷いて微笑む。


    澪(手話)

『タケル、

 “音の痕跡”を追える。

 ユウトとわたしより

 別の角度から。

 昨日の“影の波”……

 タケルがいなかったら

 たぶん立ち上がらなかった。』


健は、

思わず目をそらす。


    健(心の声)

『俺……

 本当に何か出来てたのか?

 ただの空想じゃなくて?

 想像力だけじゃなくて?

 “音があった世界”を

 俺も覗けるのか?』


だがそのとき。


アプリが突然鳴る(※無音だが表示揺れ)。


 《新規POINT:学校敷地内

  カテゴリ:HUMAN/MEMORY/VOICE

  強度:★★★☆☆

  状態:流動》


優斗

「え……学校の中?」


(手話)

『人の“記憶の声”……?

 なんで学校に?』


葉山が眉をひそめる。


    葉山メモ

 『“HUMAN/MEMORY”

  =個人の記憶に強く紐づいた音の残滓。

  扱いを間違えると危険。

  ユウトもミオも、

  負荷が大きいカテゴリー。


  ……健、試す?』


「俺!?」


優斗と澪は

不安と期待が入り混じった表情でタケルを見る。


健は、

深呼吸してから

小さく頷く。


    健(心の声)

『怖い。

 でも――

 俺、本当にLISTENERなんだろ?

 だったらやる。

 やってみたい。

 “音があった場所の記憶”を見つけたい。』


四人は、

アプリが示す方向――

学校旧校舎の裏へと歩き出す。


【旧校舎・階段前】


旧校舎。

立ち入り禁止の紙が貼られ、

薄暗い雰囲気が漂う。


アプリのマーカーが、

階段の前で大きく脈打つ。


 《HUMAN MEMORY POINT:ここ》


澪には、

階段の手すりのあたりに

微かな吹き出しの光が見える。


優斗には、

喉の奥で“声が出そうで出ない感覚”が残る。


葉山は、

後方で見守り距離をとる。


健は、

階段へゆっくり近づく。


すると――

階段の踊り場に“何か”が立ち上がった。


視覚イメージ。


・人影のような輪郭

・だが完全なシルエットではない

・“記憶の残滓”だけで形づくられている

・色は灰色

・光も影もついていない


その“影”の周りに

吹き出しの粒が静かに舞う。


健は思わずつぶやく。


    健(心の声)

『……これ、

 “誰かの声”の残りか?

 歩道橋の“り”とも、

 駅の“あ”とも違う。

 もっと、

 個人的で……苦しい感じ。

 でも、

 聞こえそう……。』


優斗が焦る。


    優斗ノート

 『タケル、無理するな!

  これ“記憶の声”だよ!?

  俺ですら負荷が大きい!』


澪も手話で叫ぶ。


    澪(手話)

『これ、多分

 “誰かの後悔”とか

 “未完の言葉”。

 近づいたら、

 巻き込まれる!』


しかし――


健は、

影の“中心”に触れてしまう。


その瞬間。


階段の風景が

一気に変わる。


・昔の制服

・泣いている誰か

・踊り場で叫びかけた口元

・でも声が出る寸前で、

 世界の音が消えた瞬間


影の口が動く。


 『ごめ――』


音はない。

だが健にだけ

“言いかけの気配”が伝わる。


    健(心の声)

『――“ごめん”。

 これ、

 誰かが言えなかった謝罪……?

 言えずに、

 ここに残り続けて……

 ずっとモヤモヤして……

 それが“音場”になったのか。』


影の手が、

健の胸元に触れようとする。


優斗と澪が叫ぶ――

(無音の叫び)


葉山が駆け寄る。


だが、


健は――

影の手をそっと握った。


    健(心の声)

『逃げるな。

 俺は“証聴者”。

 なら、

 この声、ちゃんと受け止める。

 誰かの“未完の言葉”が

 世界から忘れられないように――

 ここに記録する。』


手を握った瞬間。


影は、

タケルの胸に吸い込まれるように

すっと消えた。


強い光。

タケルは膝をつく。


アプリ画面。


 《タケル:LINK COMPLETE

  HUMAN MEMORY/VOICE

  カテゴリ登録:LISTENER-03》


(目を大きく見開く)

『……完全に、覚醒した。』


優斗

「タケル……!」


健は、

少し息を整えながら立ち上がる。


胸の奥に、

小さな文字の粒が残っている。


 『ごめん。』


    健(心の声)

『誰かの謝りたかった言葉。

 これで、消えない。

 俺の中に残る。

 LISTENERとして。

 証聴者として。』


【夕暮れ・グラウンド】


四人は、

旧校舎を離れ

グラウンドに座る。


夕陽が校舎の影を長く伸ばす。


葉山がメモを書く。


    葉山メモ

 『証聴者タケル。

  彼の能力は、

  “未完の言葉”の保護と記録。

  苦しい能力だが、

  世界の静寂の中にある“影の声”を

  救う唯一の鍵になる。』


優斗は、

自分のノートに書く。


 『LISTENERSが

  3つ揃った。

  世界の“声の欠片”が

  集まり始めている。』


澪は、

健の横で手話を送る。


    澪(手話)

『……ありがとう。

 健、

 あなたの力があったから

 今日の声は消えなかった。』


健は、

照れくさそうに頭をかく。


    健(口パク)

『やめろよ、褒めんなよ……。

 でも……まあ……

 悪くねぇ。』


風が、

三人の髪を揺らす。


音はない。

でも、

“言いかけの声”が

少しだけこの世界に残っている。


その瞬間、

アプリがひとつのログを表示する。


 《“あ” と “り” のPOINT、

  微弱に同期》


三人は顔を見合わせる。


健の胸の奥に残った 「ごめん」。

歩道橋の 「り」。

駅の 「あ」。


バラバラだった断片が、

ゆっくり線で結ばれ始めている。


優斗

(心の声)

「言いかけの言葉が、

 一つひとつ繋がっていく。

 それは、

 世界の“静寂の中心”にある

 ひとつの答えに向かっているのかもしれない。」


夕陽が、

LISTENERSの影を長く伸ばす。




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