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お母さん冒険者、ログインボーナスでスキル【主婦】に目覚めました。週一貰えるチラシで冒険者生活頑張ります!  作者: ユーコ
笑い蜘蛛《わらいくも》 スレッドベイン

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02.生け贄の条件

「それより二人はもう大丈夫なの? 無事で本当に良かったわ」

 カチュアは二つのチームの唯一の女性メンバーに声を掛けた。

 この二人はデトックス温泉の十の湯で一ヶ月も囚われの身だった。無事に助け出された時には、かなり衰弱してしまっていたのだ。

「この通り、元気だよ」

 と『仲良しファミリー団』のマンマが、

「はい、おかげさまで」

 と『白銀の夜明け団』の女性メンバーが笑顔で答えた。

『白銀の夜明け団』は学者らしく、メンバー全員が眼鏡を掛けており、彼女もメガネっ娘だ。

 マンマと対照的にちょっと痩せ気味で小柄な女性である。年齢は二十代半ばくらいだ。


 二人をじっと見つめた後、アンは奇妙な問いを投げかけた。

「ねえ、アンタ達、職業は?」

「あたしは斧使いだよ」

「私は本業はロアアカデミーの学者ですが、ダンジョンでは魔道士を担当してます」

 それを聞いてアンは「うーん」と唸った。

「どうしたの? アン」

「カチュアが倒したあの蜘蛛のモンスターはどうして二人を襲ったのかしら?」

「え?」

「だって二人は、ううん、カチュアも含めて三人とも職業も年齢もまったく違うでしょう?」

 言われてみれば確かに不思議だ。

「よく考えるとそうですね」

 とリックも首をかしげる。


「それなんだが、今日はガンマチームの皆に注意喚起をしに来たんだ」

 そう語る『白銀の夜明け団』のメンバーの表情は硬い。

「注意喚起?」


「カチュアさん、僕らがデトックス温泉かえるの湯で渡した腕輪はまだ持っているか?」

「え、ええ、持っているわ」

 カチュアはデトックス温泉郷で『白銀の夜明け団』から腕輪を渡された。

 一度だけあらゆる攻撃から身を守ることが出来るというものだ。そのかわり一度使うと壊れてしまう。

 腕輪が反応する前にカチュアが蜘蛛をオーバーキルしたので、まだ腕輪は身に付けたままだ。

「待って、今返すわ」

 カチュアは腕輪を外しかけたのだが、

「いや、カチュアさん、良ければ腕輪はそのまま使ってくれ」

 と『白銀の夜明け団』のメンバーが止めた。

「えっ、いいの?」

「ああ、僕らの感謝の印だ」

「腕輪はしばらく常に身に付けて外さない方がいい」

 と彼らは言った。


「……あの、何かあったの?」

 腕輪は身の安全を守るためのものだ。

 そして、先程『白銀の夜明け団』のメンバーが口にした『注意喚起』という言葉。

 カチュアは何だが不穏な気配にぞわぞわしてきた。



『白銀の夜明け団』は改まった口調で語り始めた。

「君達は邪神を知っているか?」

「もちろん知っている。行方不明事件には邪神が関係しているのか?」

 ベルンハルトは眉をひそめて尋ねた。


「僕らはそう睨んでいる」

『白銀の夜明け団』のメンバーの一人が頷いた。

 続いて、別のメンバーが言った。

「邪神を含め数多の凶悪な魔物達は神話の時代にあったという光と闇の戦いに敗れ、地底深くに封じられた」

「うん」

「有名な話ですよね」

 初等学校で必ず習うこの世界の常識だ。

 その地底世界のことを人々は魔界と呼んでいる。


「学説によれば、邪神達が棲む魔界と我々のいる人界は、網のようなものに隔てられている」

「網?」

「そうだ。結界は網状になっており、強力な魔物ほど網に阻まれ、人界に来られない。邪神と呼ばれるような力の強い悪魔の王達こそ、この結界を越えられない仕組みだ」

「へー」

 カチュア達の国では誰もが知っている話であるものの、一般人にとっては『ありがたい神様の昔話』という認識しかなく、詳しい説明は初めて聞いた。

 ベルンハルト以外は感心しきりだ。


「邪神が結界を破り、人界に来る方法はただ一つ、人界から召喚することだ」

「文献を調べてみると、今回とよく似た女性行方不明事件が過去にも起こっていた」

「生け贄の女性達は、仮死状態にされ、蜘蛛に操られた者の手によって儀式の場所に運ばれる」

「運び手は皆、笑っていた。そのため、邪神崇拝者だと思われていたが、違う。デトックス温泉のダルマじいさん同様、彼らは操られているだけなんだ」

「これらを総合的に判断すると、今回の行方不明事件の犯人は邪神、笑い蜘蛛(わらいくも)スレッドベインの仕業とみて間違いないだろう」


笑い蜘蛛(わらいくも)スレッドベイン……」


「古文書によるとスレッドベインは巨大な牝蜘蛛で、ウェバーと呼ばれる配下の雄蜘蛛を人界に放つ」

「邪神の手下や眷属達は、邪神よりずっと弱い。だがそれ故に結界をすり抜け、人界に侵入出来るんだ」

「ウェバーは現世にスレッドベインを召喚するため、必要な生け贄の女性達を集めようとしている」




「そんな……」

 カチュア達は息を呑んだ。

 誘い蛇(いざないへび)ヴォラスィティ以外にも地上にやってこようと企んでいる邪神がいる……!


「儀式を止めさせないと大変なことになる!」

 ベルンハルトの声は深刻極まりない。


「それって冒険者ギルドには報告したの?」

 アンが鋭く問いかける。

「もちろんだ。今、急いで発表の準備をしている」

「ダンジョン内を探索するチームに注意喚起してもらうことになった。狙われているのは『輝ける魂』を持つ女性達だ」

「『輝ける魂』?」

「アンさんと言ったか、あなたも不思議に思っただろう。『仲良しファミリー団』のマンマさんと我がチームの女性メンバーは、一見何の共通点もないが、マンマさんは八人の子供を女手一つで育てた女傑。うちの女性メンバーも、その道では新進気鋭の学者として知られている」

『白銀の夜明け団』のメガネっ娘はぽっと頬を赤らめた。

「ほっ、褒めすぎです」


「二人がウェバーに狙われたのは、外見や職業ではなく、内面に『輝ける魂』が宿っていたためだ」

「それが、生け贄に選ばれる共通点ってこと?」

 アンは『白銀の夜明け団』に聞いた。

「残念ながら、僕らには魂を見ることが出来ない。故に推測に過ぎないが、おそらく間違いないだろう」

「カチュアさんも一見普通の女性だが、ウェバーを一撃で倒した。並大抵の腕前ではない」

「実に優秀な冒険者だ!」


「えっ、私?」

 いきなり絶賛されてカチュアは驚いた。


「冒険者ギルドに調べてもらうと、現在十三名の女性達がダンジョン内で行方不明になっている。これがそのリストだ」


「どれどれ」

 リストによると、四十五階から五十五階までの中層で、女性ばかり十三名が行方不明になっていた。

 ダンジョンでも中層まで上がってくる女性冒険者なら、皆得意とするものは違うが、優れた才能を持っている。

 そんな彼女達が狙われたのだ。

 行方不明になった場所がバラバラだったため、同一犯の仕業とは考えられていなかったが、女性達はウェバーとウェバーに操られた者達にさらわれてしまった。

 このままではスレッドベイン召喚の生け贄になってしまう。


「……五十五階の迷路エリアでも行方不明者が出てしまったのね」

 カチュアは思わず呟いた。

 ガンマチームはメビウスの紐を手に入れるため、五十五階の迷路エリアに行くつもりだった。

 その場所でも行方不明になった女性がいるらしい。


「カチュアさん、それにガンマチームの女性メンバーの皆さんも、生け贄の条件を満たしている可能性がある。もし先に進むなら十分注意してくれ」

 と『白銀の夜明け団』のメンバーはカチュア達に忠告した。


「思ったより色々な人が行方不明になっていたんですね」

「うん」

 リストを見ながら、残念そうに言うリックの言葉にローラが頷く。

 ウェバーは脚を縮めると人間の握りこぶしくらいのサイズだ。

 ダンジョンの物陰に隠れられると、見つけようがない。


「そうなんだ」

『白銀の夜明け団』のメンバー達も深刻な表情でため息をつく。

「ウェバーはカチュアさんが倒した一匹だけではなく、数匹から数十匹が人界に来ていると考えられる。手がかりは少なく、モンスターとしては小型なウェバーを見つけ出すのは困難だ」

「だが、兆候があるはずだ。それを見過ごさないようにしてくれ」

「兆候?」

「ああ、ウェバーはまず操る者を作り、それから生け贄を捕らえる。彼らは人間のような大きな生き物を一匹で運ぶことが出来ないからだ」

「ウェバーの周囲には必ずウェバーに操られた者がいるはずだ。気をつけてくれ」

「古文書によるとスレッドベイン召喚の儀式には『輝ける魂』を持つ十四名の女性が必要らしい。つまり、あと一人、女性がウェバーに連れ去られれば、儀式が完成してしまう」

「逆に言えば、それまでにウェバーの後を追い、儀式の場所を突き止められれば、行方不明者を救出出来るはずだ」


「儀式の場所は女性達が行方不明になった場所からそう遠くないはずだ。ダンジョンの四十五階から五十五階までのどこかだろう」

「そこを見つければ、行方不明者を救えるってことですね」

 リックがそう言う。

 だが、ダンジョン内は入り組んでおり、発見されてない道がまだたくさんある。

 簡単なことではない。


「考えたくもないことだが、もし儀式が成功し、召喚されたスレッドベインに遭遇したなら、必ず逃げろ」

『白銀の夜明け団』のメンバー達の忠告にベルンハルトが反論する。

「そんな真似は出来ない」

『白銀の夜明け団』のメンバーは「気持ちは分かるよ」と苦り切った表情で首を横に振る。

「だが、絶対に戦闘は避けるんだ」

 と彼らは強い調子で再度言った。

「何故?」

「スレッドベインは牝蜘蛛だ。種族を問わず、男性の攻撃力はスレッドベインに対して十分の一まで減衰する」

 ガンマチームはどよめいた。

「そんなに……?」

 どんなに強い男性でも十分の一しか力を発揮出来ないなら、勝ち目はない。


 この迷宮都市ロアには女性の冒険者ももちろんたくさんいるが、その数は全冒険者の四分の一程度だ。冒険者は男性の方がずっと多いので、これは恐ろしい戦力ダウンだ。


「それって、女性のアタシ達はどうなの? 影響は受けないの?」

 アンの問いに、『白銀の夜明け団』のメンバーが頷いた。

「そうだ。スレッドベインを倒せるのは、女性だけと言っていいだろう」

「特に『輝ける魂』を持つ者は、スレッドベインに対して特別な力を発揮すると言われている」

「『輝ける魂』を持つ女性達は、スレッドベイン召喚の生け贄であり、同時に最大の弱点でもあるのだ」

 彼らはそう説明した。


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― 新着の感想 ―
女性冒険者があと1人でも捕まってしまうとおおよそ冒険者ギルド総掛かりでも対処できなくなりそうな厄介な邪神が召喚されてしまう…。 これ >それなんだが、今日はガンマチームの皆に注意喚起をしに来たんだ っ…
>スレッドベイン召喚の儀式には『輝ける魂』を持つ十四名の女性が必要らしい。つまり、あと一人、女性がウェバーに連れ去られ 二人救助されたばかりだから、あと3人では?
カチュアさんもあと6人はお子さん育てられるって、事……?
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