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お母さん冒険者、ログインボーナスでスキル【主婦】に目覚めました。週一貰えるチラシで冒険者生活頑張ります!  作者: ユーコ
笑い蜘蛛《わらいくも》 スレッドベイン

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01.二つのチームの紅一点

 魔物を封じる力を持つという聖剣を手に入れるため、冒険を続けるカチュア達だが、最近情報屋に会ったり、カエル温泉に行ったり、ドワーフと出会ったり、新たなる力に目覚めたりと色々あった。

「そこで、いったん、チームの状況を整理しようと思いまーす」

 カチュアはダンジョン内のお昼休憩中にそう提案した。

「あ、いいと思います」

「いいんじゃない?」

「異議なし」

「だな」

「うん」

 と皆、賛同した。


「まずは二万ポイントで聖剣がもらえちゃう、モンスターポイントカードはチームミッションクリアで1212ポイントになったわ! これで『情報屋を呼ぶ秘密の笛』の効果が充填されたから、ダンジョンにとっても詳しい情報屋がまた呼べちゃうはずよ」

 カチュアはポイントカードを掲げていった。

 カチュアとベルンハルトにしか見えないが、ポイントカードにはずらっと、ダンジョンのマスコットキャラクターろあちゃんスタンプが押されている。

「情報屋はブラックドラゴンに特殊効果がある武器のありかと安全に百二十階へ行けるルートを知っていると言っていたな」

 ベルンハルトが呟いた。

「ブラックドラゴンは邪気の塊よ。あれを倒せれば、少しはこの国の魔物が大人しくなるはずよ」

 とアンも言った。

「じゃあ、次はいよいよブラックドラゴン退治ですか?」

 オーグが言う。


 ガンマチームにとっても是非とも倒したい敵だが、リックは不安そうに聞いた。

「……今の俺達で倒せますかね」

「無理だと思うわ」

 アンは即答した。

「えっ、そう? 特殊効果の武器を手に入れても無理?」

 一秒の迷いもなく帰ってきた答えにカチュアは思わず聞き返す。

「無理ね。私達が今いるのは五十二階。どんなに強い武器があったって、百階まで楽に行けるくらいのチームでないと、戦ったところで負けるだけだわ」

 アンは断言した。

 アンとベルンハルトはかつてこのブラックドラゴンに挑んだことがあったのだ。

「確かに、今の僕達ではあいつと戦うのは時期尚早だな」

 ベルンハルトが悔しそうに言った。


「情報屋にブラックドラゴンに関する情報を聞くのは必須だけど、今ブラックドラゴン退治を最優先することはないわ。そのうち情報屋が好きそうな階に行ったら笛を吹いてみましょう?」

 とアンは周りを見回す。

 ガンマチームはドワーフの隠れ里を出て、キングモグラの生息域にいる。

 キングモグラは穴掘りが大好きで、周辺は工事現場のように騒がしい。

 静かな場所が好きな情報屋は笛を吹いても多分来ない。


「しかしうるさいですね」

 リックがぼやいた。

 キングモグラは光が苦手なため、明かりを付けておくと近寄ってこない。そのため安全に休憩出来るが、かなりうるさい。

 カチュア達は辟易したが、アンとベルンハルトはケロッとしている。

「そう?」

「前来た時よりは静かだ」

 カチュアは驚いた。

「えっ、これより騒がしかったの?」



 あまり長居はしたくない場所だ。

 カチュアは話を続けることにした。

「じゃあ次は、手に入れないといけないアイテムは? 何かあったかしら?」

「最上級状態異常解除ポーションの材料が後三つ残ってます。五十三階のマンドラゴラの根と、六十一階の聖者の灰、それと九十九階のどんぐり杯です」

 カチュアの質問にリックが答えた。

 最上級状態異常解除ポーションはオーグの人狼化を解ける魔法の薬だ。

 オーグは元々人間だったが、満月の狂気(ルナティック)に陥った狼獣人シリウスに襲われ、人狼に変えられてしまったのだ。

 七つの材料は既に手に入れた。残るはあと三つだ。


「それと経験値のアンクレットですね。材料は機械仕掛けの大亀の心臓、メビウスの紐、ルーセントロックの羽根、この三つだってボアドさんが言ってました」

 今度はオーグが言った。

 ドワーフのボアドが「材料を集めれば作ってやる」と教えてくれたのは、経験値のアンクレット。これは、装備しているだけで経験値が上がるという足輪である。

 スキル【主婦/主夫】の効果で経験値獲得が1/10になるカチュアの弱点を補うアイテムだ。


「メビウスの紐は五十四階にある迷路をクリアすると特典でもらえるアイテムです。機械仕掛けの大亀は五十五階のボスで、心臓は倒すと必ずドロップするアイテムです。ルーセントロックの羽根は五十六階の中ボス、ルーセントロックがドロップするそうッス」

 リックの説明を聞いてオーグが呟いた。

「……意外と簡単に手に入りそうだな」

「うん」

 ローラも頷いた。


 経験値のアンクレットは一歩歩くごとに一ポイント経験値がゲット出来る。

 一日一万歩歩くとなんと一万ポイント獲得!

 そんなすごいアイテムの割にはCランクのガンマチームでもなんとか材料を集められそうだ。

 ラッキーだけど、何で?

 と疑問に思っていたら、アンがため息をつきながら、教えてくれた。


「そのアイテム、絶妙にガッカリなアイテムで有名なのよね」

「えっ、そうなの? 歩いているだけで経験値がもらえるのよ?」

 カチュアにとっては、夢のお得アイテムだ。


「まず、それ、エリア制限があるの」

「エリア制限?」

「そのアンクレットが有効なのは『安全な場所』、ダンジョン外限定なのよ」

「えー」

 冒険者は大体ダンジョンにいるものだ。

 なのにダンジョン内でいくら歩いても経験値にならない。

 確かにそれはガッカリだ。


「しかも」とアンの話には続きがあった。

「年齢制限があるの。十八歳以下はそのアイテムは無効なのよ」

「そうなの? 私は大丈夫だけど……」

 とカチュアは周りのメンバーを見回した。

「オーグ君とリック君とローラちゃんは対象外ね」

 カチュアは年の功(?)でセーフだが、未成年は装備しても効果がない。

 冒険者を目指すのは大体若者なのに、そんな彼らが使えない。

 これまたガッカリである。


 とどめに、このアイテムの材料が揃うのは、ダンジョンの中層である五十六階。

 二つの大きな欠点はあってもレベル50以下の中級者までなら、魅力的なアイテムだが、五十六階に達しているチームなら、ダンジョン外で一万歩歩くより、普通にモンスターを倒した方が経験値獲得的にもお得なのだ。

 材料を集めてアンクレットを作っても、上階に進めば進むほど経験値が高いモンスターが出現してくるため、価値は下がる一方。

 売るにしても材料費に工賃ともにそこそこ掛かるのに、ニッチ過ぎて高くは売れない。

 まさに絶妙にガッカリなアイテムである。


 だがしかし、スキル【主婦/主夫】の効果で獲得経験値が少ないカチュアには超有効なアイテムだ。

「まあ、とにかく上階を目指しましょう? それとあのネオロも捕まえないと」

 アンは眉をひそめる。

 ネオロはドワーフの隠れ里でガンマチームを罠にはめたドワーフだ。

 彼は魔界の邪神の一人という誘い蛇(いざないへび)ヴォラスィティを崇拝し、ダークドワーフになってしまった。

「アイツ、絶対また何かするはずよ」


「なんかするっていえば、狼獣人のシリウスもその後現れないッスね」

 狼獣人シリウスは、オーグが住んでいたリコリス村の村人だけではなく、この迷宮都市ロアの豪商ガルファの娘、ミネルヴァを襲い、人狼に変えた。

 シリウスは第三王子セレンディップとも繋がっている。

 ミネルヴァはガンマチームの協力もあり、最上級状態異常解除ポーションで人狼の呪いを解除出来た。

 ミネルヴァが人間に戻った今、セレンディップは再びシリウスを差し向け、彼女を襲わせようとしていると皆で警戒しているのだが、未だにシリウスは姿を見せない。


「何でですかね?」

「狼獣人は元来気まぐれだ。セレンディップは彼に接触出来ていないんだろう」

 実は第二王子で、第三王子セレンディップの異母兄に当たるベルンハルトは言った。

「じゃあ、シリウスは第三王子の忠実な僕ってわけじゃないのね?」

 とアンがベルンハルトに聞く。

「おそらくは」

 ベルンハルトが首肯する。

「……でもいずれ、アイツは来ます」


 オーグは確信を込めて、言った。






 ***


 カチュア達はお昼休みの後、いつもより早くダンジョンを出た。

 向かった先は、冒険者ギルドの談話室だ。

 デトックス温泉郷で出会った二つのチーム、『仲良しファミリー団』と『白銀の夜明け団』が感謝を伝えたいと訪ねてきていた。

「ガンマチームさん」

「あの時はどうもありがとう」

 と彼らは揃って頭を下げてきた。

「これはロアアカデミーの売店でしか取り扱ってない限定のロアアカデミークッキーだ」

 とロアアカデミーの学者の集まりである『白銀の夜明け団』のメンバーがお菓子を差し出した。

 ロアアカデミーの超技術でクッキーの上にアカデミーの紋章がプリントされている珍しいクッキーだ。

 頭が良くなる(気がする)セサミ味。迷宮都市ロアお土産百選にも選ばれている。


「まあ、ありがとう」

「あたし達は、霜降りモーモのミートパイを持ってきたよ。さあ、食べとくれ」

 と『仲良しファミリー団』の五十歳くらいの女性が言った。

 恰幅が良くて頼れる感じのマンマだ。

 仲良しファミリー団はその名の通り、マンマとマンマの子供達、八人兄弟のチームである。

「やった」

「美味しそう!」

「お腹空いてたのよねぇ」

「わー、いっぱいある!」

「さ、皆で食べましょう」


 ガンマチームはカチュア達六名、『仲良しファミリー団』は九名、『白銀の夜明け団』は八名。

 早速皆でわいわいとミートパイとクッキーを食べた。

 二つのチームからは、お礼を兼ねて街の美味しいレストランで食事会を提案されたのだが、カチュアの息子エドはロアアカデミーのジュニア校に合格した。

 カチュア一家は、その入学準備でバタバタしている最中なので、お茶会にしてもらったのだ。


「母ちゃんが生きていたのはあんた達のおかげだ。何かお礼がしたい。何か欲しいものはないのか?」

『仲良しファミリー団』のメンバーがカチュア達にそう申し出てきた。

「もちろん僕らもそう思っている。言ってくれ」

 と『白銀の夜明け団』のメンバーも頷いた。

『仲良しファミリー団』のマンマと『白銀の夜明け団』の女性メンバーはデトックス温泉の十の湯で行方不明になっていたところをカチュア達に助けられたのだ。

 ガンマチームは顔を見合わせた。

「うーん。そう言われてもパッとは思いつかないわねぇ……あっ、『白銀の夜明け団』さんはもしかして『よくねむれーる(暗黒植物用)』ってお薬は作れる?」

 カチュアはひらめいた。


 マンドラゴラの根はカチュア達が探している最上級状態異常解除ポーションの材料だった。

 マンドラゴラは様々な薬の材料になる貴重な植物だが、引き抜こうとすると即死効果を持つ悲鳴を上げる。

『よくねむれーる(暗黒植物用)』はそのマンドラゴラを眠らせる強力な植物用睡眠薬だった。


「ああ、チームには薬師もいるから、その薬なら作れる」

 と『白銀の夜明け団』が答えた。

「じゃあ、その薬をなるべく早く作ってもらえないかしら?」

 カチュアはそうお願いしてみた。

「皆もそれでいい?」

 ガンマチームの皆に確認を取ると、

「ああ、もちろんだ」

「そうねぇ、作ってもらえたら助かるわね」

「うん」

「調合してもらえたら手間が省けますね」

「お願い出来ますか?」

 メンバー一同も同じ意見だ。


『よくねむれーる(暗黒植物用)』の材料は、安静のお香に、ねむりの葉、リラックスフルーツの三つで、どれもダンジョン内の三十階辺りで入手出来る。

 ガンマチームが『よくねむれーる(暗黒植物用)』を手に入れるには、この薬を道具屋で買うか、三十階に戻って材料を手に入れ薬師に作ってもらうしかないが、買うとちょっと高いし、自分達で材料を揃える方法は安く済むが時間が掛かる。

『白銀の夜明け団』に作ってもらえるならかなり時短になるのだ。

 ちなみにマンドラゴラの根そのものも道具屋で売っているが、買うとこれらアイテムを揃えるよりさらに高い。

 何より、冒険者の間では「このマンドラゴラを引っこ抜けたら一人前」と言われている。

 ならば、自分の手で引っこ抜きたくなるのが冒険者の(さが)というものだ。


 カチュア達と『白銀の夜明け団』の会話を聞いて、『仲良しファミリー団』が言った。

「あんたら、マンドラゴラの根を探しているのか?」

「そうなの」

「俺達のお古でいいなら、強力イヤーマフがあるから使ってくれ」

「えっ、いいの?」


『よくねむれーる(暗黒植物用)』があれば、マンドラゴラの根は安全に引っこ抜けるはずだが、万が一不眠気味のマンドラゴラに当たると大変なことになる。


 念のためにイヤーマフを装備するよう、推奨されているのだが、完全に外部の音をシャットアウト出来る強力イヤーマフは高性能な分お高い。

 しかもマンドラゴラを引き抜く時以外に使い道がない。


「貸してくれたらすごく助かるわー」

「こんなことでお礼になるなら、是非受け取ってくれ」

「僕らも『よくねむれーる(暗黒植物用)』程度ではお礼にはならないだろう? 本当にいいのかい?」

 二チームとももっとちゃんとしたお礼を考えていたので、困惑気味だ。


「いいわよー、ありがとう!」

「カチュアが言ってるんだから、いいのよ。今度うちのチームに何かあったら、アンタ達が助けてよね」

 とアンが言うと、『仲良しファミリー団』と『白銀の夜明け団』のメンバーは揃って頷いた。

「ああもちろんだ」

「何でもやるさ」


すみません、この辺時系列が前後していて、まだエド入学前になります。

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感謝! 更新をありがとうございます!! この後も、よろしくお願いします。 ところで書籍の挿絵で、カチュアの怪力が判明! あのサイズのリンゴ4つだけでも2kg近くあるはずで、カゴの大きさいっぱいの荷物…
見れば見るほど経験値のアンクレットはスキル【主婦/主夫】の専用補助アイテムとしてある感じですね。 あとルーセントロックの羽根が確定ドロップでないのが心配ですね。
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