10.夜道エリア
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~四章のあらすじ~
この国の魔物を鎮める秘宝、聖剣が王家の宝物庫から消えた。一刻も早く聖剣を取り戻さねば大変なことになってしまう。
聖剣を手に入れるにはカチュアの持つモンスターポイントカードのポイントを二万個貯めるしかない。
カチュア達は二万ポイントを目指して、ポイ活中!
カチュアの傀儡ぬいぐるみ、くまきち、くまのすけ、そしてくまたろうはカチュアにかわってモンスターを倒し、カチュアのモンスターポイントは197になった。
あとほんの少しで200ポイント達成だ。
200ポイントになれば、達成記念プレゼントで『情報屋を呼ぶ秘密の笛』を貰える。
カチュア達はその笛で情報屋を呼び出し、『痩せ草』をドロップするというモンスター、ハッピーボックスの居場所を聞くつもりだ。
『痩せ草』は飲めばたちまち三キロ痩せられるという魔法の薬の原料で、その薬を入手出来れば、アンのミッション、『三キロ痩せる』を達成出来る。
そしてチームミッションその1をクリアし、モンスターポイント1000ポイントをゲットする計画なのだ。
そうすれば聖剣獲得に一歩近づく。
ガンマチームのメンバーは、アンをのぞき全員、自分のミッションをクリアした。
ただ一人、クリア出来ていないアンも頑張っている。
おやつをヘルシーなお菓子に切り替えたり、ミネルヴァ・ガルファの手を借りてダイエットにいいという健康茶を飲んだりしている。
そのかいあってアンは一キロ痩せ、あと二キロ痩せればいいところまで来ていた。
ただ。
「あと二キロがきついわー」
アンはすでにへたり気味だ。
戦闘職なので体力を落とさないように注意しながら、ダイエットしている。
一キロ目はすぐに落ちたが、一キロ越えてからはなかなか体重が落ちないそうだ。
「まあ、クマちゃんのおかげでもうちょっとで私のポイントが貯まるし、あんまり無理しないでね」
カチュアはアンを慰めた。
「ありがとう。自力で達成しようと思ったけどちょっと無理かもしれないわ」
とアンにしては弱気な答えが返ってくる。
そんなガンマチームは四十六階にたどり着いた。
「うわっ、暗いな」
四十六階に入った瞬間、リックが声を上げた。
リックの言葉通り、四十六階はかなり暗い。
少し目が慣れてくると『真っ暗』ではないことに気付くものの、周りに何があるのがさっぱり分からないくらいの暗さだ。
こういう時はランタンかえるのケロちゃんの出番なのだが、ロアアカデミーのジュニア校の冒険の後、ケロちゃんはエドと仲良くなって最近はずっと一緒だ。
今日のエドはいつも通っている幼年学校で勉強の最中で、ケロちゃんはこっそりエドについて行ってる。
一見普通のたいまつだが、触っても熱くない安全設計のたいまつ型の明かり魔法具を取り出したベルンハルトは天を見上げて呟いた。
「随分雲が厚いな」
「本当、月も雲も見えないわ」
「そもそもここ、月、あるんですか?」
リックがベルンハルトとアンに尋ねる。
「以前に来た時は月が見えた」
アン達はこの四十六階に来たことがあるそうだ。
ベルンハルトによるとここは時間固定の夜マップだそうだ。
明かりが乏しくて、周囲の状況はよく分からないが、今、チームがいる場所から大きな森が見える。
そしてガンマチームは土の道の上に立っていた。
その道は森へと続いている。
夜風は冷たく、夜の森は今いる場所より更に暗く、真っ暗闇に見える。
カチュアは思わず身震いした。
「この道を行けばいいのかしら……?」
「あ、看板があります」
リックが近くに看板を見つけた。
意外と大事なことが書いてあるかもしれないので、チームは注目する。
そこには。
『女性や子供の飛び出し注意!』と書かれている。
「えっ、飛び出し?」
ダンジョンなのにおかしな看板だ。
アンがチームの皆を振り返る。
「皆、注意して。ここは夜道エリアで、様々な動物やモンスターが物陰からいきなり飛び出してくるの。大抵は敵だけど、たまに非戦闘員が混じっているわ」
「非戦闘員?」
アンの言葉にベルンハルト以外の四人が首をかしげる。
「そう。動物や人間の子供、それに女性ね」
「えっ、人間の子供がこんなところにいるんですか?」
リックが驚いて聞いた。
アンは頭を振る。
「アタシも詳しいことは分からないわ。でも本当の子供や女性ではないんじゃないかしら。一説では月が映し出す影じゃないかと言われているけど、正体は不明ね」
「月が映し出す影……」
「ここはおそらく人の善悪を試すマップだ」
とベルンハルトが言った。
「善悪を試すマップ?」
「ああ、暗い夜道は視界が悪い。目撃者が少なくなり、犯行が発覚しにくくなる。犯罪者にはうってつけの環境だ。また、夜の静けさや暗さが人に不安や恐怖を引き起こし、その結果として普段はしない攻撃的な行動に出てしまうこともある」
続けててアンが言った。
「それと非戦闘員は、そのチームにとって『奪いたい』と思う価値あるものを持っている場合があるの」
「『奪いたい』と思うもの……?」
オーグは戸惑った様子で呟く。
「そう。大きな宝石だったり、金貨の入った袋だったり、見るものは人によっててんでんばらばらね。共通しているのは、思わず理性を失って襲いかかってしまうような宝だってことよ」
「アン達もそのお宝を見たの?」
カチュアの質問にアンは「うーん、あんまり覚えてないのよねぇ」と頭を掻く。
「どうだったかしら?」
とアンはベルンハルトに聞いた。
「あの時の僕らは先に進むのが一番の目的だった。だからそういうトラップには引っかからなかったね」
ベルンハルトが答える。
「トラップ?」
「ええ、非戦闘員を攻撃するといつまで経っても小道が続き、延々と迷うそうよ。逆に襲われている非戦闘員を助けるとボーナスで先に進めるようになるわ。それからくれぐれも道から外れないように気をつけて! 夜に森で迷うと遭難してしまうわ」
早速カチュア達は先に進むことにした。
夜道マップは夜道なだけあって暗い。
恐る恐る慎重に進んでいくと、ガサガサと怪しい音がした。
近くの茂みからから、『マントの下に何も着ていない男』が現れた!
「ぐへへ、お姉さん、ちょっといいかな」
男はそう言ってマントの前を開けようとする。
カチュアは悲鳴を上げた。
「きゃー、変態よー!」
「出たわね!」
アンは変質者がマントを広げる前に攻撃!
アンは『マントの下に何も着ていない男』を倒した!
「おい、金を出せ!」
次に現れたのは、山賊五人組だ!
ベルンハルトとオーグがすぐに退治する。
そしてその次は。
「こいつの命が惜しくねぇのか?」
五歳くらいの男の子にナイフを突きつけているごろつきだ。
「うわーん、怖いよ。たっ、助けてー」
と子供が泣きながら助けを求めている。
「えっ、これどうすれば?」
「下手に動くと子供が……」
リックとローラはどうしたらいいか判断に悩んで焦るが、
「子供になんてことするのよー」
カチュアが絶妙なお玉捌きで、ごろつきだけにお玉の炎を浴びせる。
カチュアはごろつきを倒した!
子供を無事救助した!
「大丈夫?」
とカチュアは子供に声を掛けたが、子供はすうっと暗闇に溶けるように消えてしまう。
「え? 消えちゃった?」
驚くカチュアにアンが呟いた。
「やっぱり本物の子供じゃなさそうね。以前もいつの間にか消えちゃったのよ」
非戦闘員を助けたボーナスだろうか、カチュア達は森を抜けることが出来た。
今度は草原のような場所だ。
だがまだ道は続いている。
ガンマチームは先へと進んだ。






