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お母さん冒険者、ログインボーナスでスキル【主婦】に目覚めました。週一貰えるチラシで冒険者生活頑張ります!  作者: ユーコ
聖剣の行方

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08.狼獣人シリウス

 しばらく辺りはシンと静まりかえる。

 まさか、第三王子がオーグ達が人狼になってしまったことに関係しているなんて……とカチュア達はショックを受けた。


「ここまで話したが、第三王子のことは本題じゃないんだ」


 と護衛は言った。


「えっ、そうなの?」

 とカチュアは驚いた。

 今までの話は何だったのか?


「ああ、今の話はすべて推論に過ぎない。第三王子は抜け目がない奴で、証拠を残していない」

 護衛は悔しそうにそう言った。

 今のままでは第三王子の罪を問うことは出来ないらしい。

「そんな……」


「例えばの話だが、第三王子を失脚しても俺達が元の姿に戻るわけではない。俺達を人狼にしたのは狼獣人の野郎だ」


 護衛達は牙をむき出しにしてうなる。


「それはそうね」

 とアンが納得して頷く。


「俺達が突き止めた狼獣人の名はシリウス。偽名か本名かも分からんが、奴はそう名乗っている」

「俺達が襲われたのが一年前、オーグ君達の村が襲われたのか、七ヶ月前だ。状況から見て、リコリス村襲撃は誰かに依頼されたものではない。そんなことをする動機がない」


「そうですね、小さな村ですし」

 オーグは同意した。


 どうやらガルファとその配下はずっとミネルヴァを人狼にした狼獣人の行方を追っていたらしい。

 オーグの事情もよく知っているようだ。


 さらに。


「調べてみるとリコリス村の他に三ヶ月、突然現れた獣人に襲われた村があった。おそらく、シリウスの仕業だ」


「シリウスは今、己の中の狂気、ルナティックを制御出来ない状態にある」


「シリウスはこのままだとさらに多く人を襲うだろう。俺達は、彼を倒そうと思っている」


 護衛達はそう宣言した。


「シリウスを、倒す?」



「オーグ君、君も強い人狼だ。その時が来たら俺達に協力してくれないだろうか?」

 そうすれば、最上級状態異常解除ポーションに頼らずとも、人狼になった人々は元の姿に戻れる。


「でも、狼獣人を倒した人狼は獣人になって元の姿には戻れないって」

 リックが戸惑いながら、魔法の本から聞いた話を指摘する。


「他の人狼ではない人間が倒すことは出来ないんですか?そうすれば……」


 護衛達は首を横に振る。

「人間が獣人、特に狼獣人を倒すことは非常に困難だ」

「同族の獣人は互いに弱点なんだ。攻撃に特攻効果が乗る」

 そのため、気性の荒い彼らも同族同士ではなるべく戦いを避けるそうだ。


「人狼は狼獣人でありながら、人。両方の種族の特質を持つため、狼獣人は俺達に特攻を持たないが、人狼は狼獣人に特攻効果を持つ」


 人狼と狼獣人がこんな複雑な関係にあるのは、狼獣人を加護しているのが、気まぐれにして慈悲深い、月の女神だからだといわれている。


「俺達人狼の力は一人一人では狼獣人に敵わない。だが、共闘すれば、シリウスを倒せるかもしれないんだ」


 しかし。


「狼獣人の牙を折った人狼は代償を担い、狼獣人に成り果てる。最後のとどめは俺が指す」

 護衛の中でも一番獣人に近い容姿の護衛が、親指で自分の胸を指さした。


「俺の名はランバートだ。よろしく頼む」

 とランバートは自己紹介してきた。


「あ、どうも」

「俺達、ガンマチームです」

 と遅まきながら、自己紹介をしあう。


 自己紹介がすんでから、ランバートは苦笑いしなから言った。


「俺達が協力し合ったところで、シリウスを倒せるのか、正直なところ勝算はない。あいつはとても強い狼獣人だ。ただ……シリウスは第三王子と繋がっている。ミネルヴァお嬢様が元の姿に戻ったら、再び襲撃されるかもしれない」

 ランバートは狼の耳をピンと立てる。



「そんな、せっかく人間に戻れそうなのに」

 別の護衛が言いづらそうに言った。

「言い方悪いが、あの方はこちらが仕掛けるトラップなんだよ。ミネルヴァお嬢様が元に戻れば、必ず第三王子が動き出す」

「それじゃあお嬢様が危険なんじゃないですか?」

「うん」

 さっき一緒に食事をした仲だ、リックが心配そうに聞く。ローラも横で頷いた。


「危険はミネルヴァお嬢様も承知している」

「俺達もついている。みすみすやらせはしないさ」

 と護衛達はなだめるように言った。


「ミネルヴァお嬢様が元の姿に戻ったら、第三王子がシリウスを再び差し向けてくる可能性は高い」


「シリウスはこの迷宮都市ロアに舞い戻ってくるはずだ。その時、アイツをやっつけ、この事件にけりを付ける!」


 ランバートは闘志をむき出しにしてそう言った。







 ***


 ガルファ邸の食事会から数日後、ガンマチームはダンジョンロアの三十一階でダンジョン探索を続けている。


 今はお昼休みで皆そろって昼食の最中だ。

 三十一階は石畳風の廊下が続くダンジョンで、今いるのも適当な通路の真ん中である。

 一応は見通しが良く、やや安全な場所を選んでいる。

 最初の頃はこんなところで食事をするのは落ち着かなかったが、何度かするとすっかり慣れた。


 ベルンハルトはいない。

「アン、一緒にいたい」

 とベルンハルトは一緒にいたがったが、アンは「駄目」と断ったのだ。



「ベルンハルトさんもチームに入れてあげればいいのに」

 カチュアがそう言うと、アンは横目でカチュアをにらんだ。

「またのんきなこと言って。アンタのためよ」

「え、私の?」

「そうよ、アンタのスキルがバレたら困るでしょう?」

「そう? ベルンハルトさん、いい人だし、大丈夫よ」


「あれでもアイツ王族よ。関わると面倒なことに巻き込まれるわよ」


「面倒なことって第三王子様のことですか?」

 とリックがアンに聞く。


「その一つね」

 アンは頷いた。



「……あの」

 今まで黙っていたオーグが声を上げた。

 今日のオーグはいつもとちょっと様子が違う。

 上の空というのか、何か考え込んでいるようだ。


「第三王子殿下ってミネルヴァさんの婚約者なんですよね」

「『候補』らしいけど」

「どんな方なんですか?」


 オーグの質問にカチュアはちょっと考えながら、答えた。


「うーん、普通っていうのかな?まだ二十歳とお若いし、目立った功績がないから、お人柄の方に触れられることが多いわよね。お優しいとか、頭いいとか」

「それって『いい評判』じゃないんですか?」

 オーグは不思議そうに首をかしげる。

 ガルファ邸で一度は顔をさらしたオーグだが、今は包帯ぐるぐる巻きの姿に戻っている。


 リックがこっそり耳打ちする。

「王族の悪口は言えないだろう?だから、当たり障りのない話しか、庶民には流れてこない」


「酒場に行けば聞けるわよ。嘘も本当ね」

 とアンが言う。


「あれはたちの悪いボーヤよ。悪知恵が働くし、狼獣人を差し向けるなんていかにもあの子がやりそう」

 アンに掛かれば、二十歳の第三王子も「ボーヤ」扱いだ。

 女性に年齢は聞けないので、はっきり分からないが、アンは二十九歳くらい。

 第二王子ベルンハルトの恋人(?)だったせいか、第三王子のことも知っているようだ。


「アンさんは、この前ガルファ氏の護衛から聞いた話、信用するんですか?」

 そう質問するリックも彼らを信用してない訳ではないのだ。

 ただ、情報が少なすぎて、鵜呑みにしていいのか分からないでいる。


「嘘はついてないと思うわよ。彼が後ろ盾を欲しているのも本当。母親の現王妃も黒い噂が絶えない人だしね」


「現王妃?」

 王室の事情に疎いオーグが不思議そうに聞く。


 アンの代わりにリックが説明した。

「この国の国王陛下には三人の妃がいたんだ。最初の王妃は第一王子様を産んで病死して、すぐに結婚した王妃様との間に第二王子のベルンハルトさんが生まれて、だけどこの方も少しして病気で亡くなった。そして現王妃様が娶られて、生まれたのが第三王子だ」


「それって、つまり、全員お母さんが違うってことですか?」

 オーグは驚いてリックに聞いた。


「そういうこと」


 全員王妃から生まれた王子なのだが、三人とも母親が違う。


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