22.アップ!10ポイント券
次なるポーションの材料は、五十三階のマンドラゴラの根と、六十一階の聖者の灰だ。
そして九十九階のどんぐり杯。
「手に入れられるのは当分先になりそうですねー」
何せ、今ガンマチームがいるのは、二十六階。
レアウィークはとっくに終わってしまって、今日はチラシのイベントもないのでカチュア達はまったりとダンジョン探索を続けている。
カチュア達は適当な場所でお昼休憩をとることになった。
月下美人草があった二十五階は夜の草原マップだったのだが、今いる一つ上の階の二十六階は昼の草原マップだった。
なのでお昼はちょっとしたピクニック気分である。
サンドイッチを食べている最中、カチュアは唐突に思い出した。
「あ、そういえば、私、結構すごろく蛇を倒したのよねー。ポイントカードどうなってるかなー?」
「結構っていうか、すごろく蛇、壊滅状態になってましたよ」
サンドイッチを食べ終え、カチュアはウキウキ気分でがま口を開き、ポイントカードを取り出した。
「あら、モンスターポイント50越えてる」
『モンスターポイント50ポイント達成!おめでとうございます!
記念に冒険に役立つ《アップ!10ポイント券》をされます。今回は筋力アップ!
※《アップ!10ポイント券》は券を持って「ポイント券使います」と言うだけでOK!誰でも簡単にご使用頂けます。』
カチュアがポイントカードを読むと、ひらひらと手のひらくらいのサイズの紙が落ちてくる。
紙には、《わくわく!筋力アップ!10ポイント券》と書かれていた。
皆には見えないチラシと同じ紙質に思えるが、
「これが、《アップ!10ポイント券》」
「急に紙が落ちてきた!」
のぞき込む皆の声を聞くと、ガンマチームのメンバーにも《アップ!10ポイント券》は見えているようだ。
「これって、本当に10ポイント筋力アップするってことですか?」
とリックがカチュアに聞く。
「初めて見たから分からないけど、多分、そう」
とカチュアは答えた。
「しかもカチュアさんだけじゃなく、これを持っている人が使える券?」
「みたいねー」
「「「「…………」」」」
カチュアを除き、ガンマチームの四人は、深刻そうな表情で互いを見る。
「これって、今まで一番……」
「地味ね」とカチュア。
「すごいわね」とアン。
「え?」
とカチュアは驚くが。
「うん」
「そうですね」
「……怖い」
と他の三人はアンと同意見だ。
「えっ、10ポイント券が?」
「そりゃそうよ。今までのアンタのそのカードでもらったものはどれもすごいけど、一番と言えばこれよ」
ちなみに、モンスターポイントでカチュアが今までもらったアイテム得点は。
10ポイント スライム帽子
20ポイント ハート(810)の数の飴
30ポイント お玉アップグレード(炎)
40ポイント 女神像ワープ
そして50ポイント記念が《アップ!10ポイント券(筋力)》である。
「どうして?だってレベルが上がれば筋力も当然アップするでしょう?」
カチュアの言う通り、ステータス:筋力はレベルアップすれば、1~5ポイント程度アップする。
「ステータス値がレベルアップと関係なく上がるのがすごいのよ」
「そっかぁ」
言われて見ると確かにすごい気がしてきたカチュアである。
「で、これ、カチュアが使う?」
アンがそう言うと、
「そうですね、レベルアップが遅いカチュアさんが、筋力10ポイントアップすれば随分違いますよね」
とリックが言った。
カチュアはスキル【主婦】の効果で、通常の1/10しか経験値が上がらないのだ。
「支援職の私が使うより、オーグ君やアンやリック君が使う方がいいんじゃない?」
「でもそもそもカチュアさんのものですし」
オーグが言った。
「そうよ。後衛って言ってもパワーはないよりはあった方が色々楽よ」
女子にしてはかなりムキっと力強いアンが言うと説得力がある。
「あの」
と黙って話を聞いていたローラが口を開く。
「私は、カチュアさんがいいなら、前衛の誰かが使う方がチームの力は上がると思う」
「そうよね」
いろんな意見がある中、カチュアの判断は…………。
「ちょっとしまっておきましよう」
問題先送りである。
「カチュア」
カチュアを呼ぶアンの目が据わっている。
「優柔不断なのよ、私。すぐには決められないわ。ほら、がま口の中のポケットにちゃんとしまっておくわ。こうすればなくさないから安心して」
カチュアは何故か威張ってそう言い切ると、《アップ!10ポイント券(筋力)》をがま口にしまい込んだ。
「でも、ローラちゃんの言う通り、私も最終的には前衛の誰かが使うのがいいかなと思うの」
「…………」
カチュアの言葉に、三人は当惑して顔を見合わせる。
「それで、カチュアさんはいいんですか?」
オークが尋ねる。
「うん。いいわ」
「アタシらの中の誰かなら、オーグだね」
とアンが言った。
オーグは驚いて声を上げる。
「おっ、俺ですか?」
「そう。アンタは筋力アップ出来れば、もっと強くなる」
「あ、それは俺も思う」
リックは横から口を挟む。
そんなリックにアンは行った。
「次点はリックだね。速さに力が乗れば攻撃の幅もぐんと広がるよ」
「は、はい」
「じゃあ、まあもう少しこれ、取っとくわ」
そう言うカチュアにアンが釘を刺す。
「それは、アンタにも言えることだよ、カチュア。筋力アップはするに越したことはない。自分のことをもうちょっと考えな」
アンの言うことはもっともだ。
カチュアは少し考えた。
「うーん、そうね、じゃあよく考えて自分に使いたいと思ったら、そうさせてもらうわ」
「うん」
「それがいいと思います」
と皆も同意した。
***
モンスターポイントカード、50の後は、60……と思いなから指でポイントを辿っていくカチュアだが、60の箇所にいつもの『プレゼント!』の文字はない。
「あら」
70、80、90とカチュアは指を滑らしていく。
レアレア茸デラックス戦ではすごろく蛇を倒しまくったようで、モンスターポイントはなんと100に到達!
『モンスターポイント100ポイント達成!おめでとうございます!
記念に素敵な手鏡プレゼント!』
「あっ」
カードの文字を読んだ瞬間、上から降ってきたのは、小さな手鏡だ。
カチュアはあわててキャッチした。
迷宮都市ロアのマスコットキャラクター、『ろあちゃん』のイラスト入りの手鏡だ。
相変わらず、スキル【主婦/主夫】は『ろあちゃん』押しである。
もらった手鏡は小さすぎもせず、大きすぎもせず、割と使いやすそうである。
握りの部分もいい感じに手に馴染む。
ただ、鏡面がむき出しなので「割れたり傷が付きそうだわ」と思うカチュアの目の前にステータスボードが現れた。
そこには。
『本品は曇り防止、破損防止の魔法が掛かっております』
と書かれている。
「あら、便利」とカチュアは思わず声を上げる。
携帯用手鏡にピッタリの嬉しい機能である。
さらにステータスボードのメッセージは続く。
『手鏡は一年に一度、一回のみ。鏡を通して会いたい人と話せる特殊な魔法が掛けられております。使ってみてね!』
「え……?」






