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14.ガンマチーム、始動!

 ルーシーとサザはチームにいた時より数段上の装備を身につけていた。

 自信満々な態度にも磨きがかかっていて、高そうなローブを身に纏ったルーシーは、腕組みをした偉そうなポーズでこちらを見ている。


「あたし達、Dランクになったの。あんた達は? まだちんたらFランクチームやってるみたいね」


 FランクのパーティマッチングチームはEランクに到達するのが目的の集団なので、Eランクになれば解散することが多い。

 解散後、個々の冒険者が数名集まってチームを組むことはあっても、カチュア達のように全員でチームを続けることは滅多にない。


「いや、今さっき、Eランクに昇格した」

 なのでオーグの言葉はルーシーにとって予想外のものだった。

「えっ?」


 目を丸くしたが、すぐにいつもの調子で言い返してくる。

「ふっ、ふーん、でもまだEランクよね。あたし達はDよ! D。すごいでしょう」


 カチュアは無邪気に賞賛した。

「すごいわねぇ。二人とも」


 ルーシーはそれで少し気を良くしたようで「ふふん」と得意げに続ける。

「あたし、転移魔法のスキルがあったの。これからすごい魔法使いになるんだから。サザには『剣士』のスキルがあるのよ」


 ちょっとややこしいが、スキル『剣士』は職業のことではない。他に『盗賊』や『魔法使い』という職業名を冠したスキルはいくつかあり、その職業向きの技や魔法が身につく。それ故、職業名スキルと同じ職業に付くと大成するというジンクスがある。

 ルーシーは珍しい転移魔法の素質持ちで、サザは職業に適性があるスキル持ち。

 二人とも将来有望な冒険者と言えるだろう。


「あたし達が有名になっても、元チームメンバーだなんて言いふらさないでね。迷惑だから。話はそれだけよ」

 そう言うとルーシーはお高そうなローブの裾を翻し、さっさと行ってしまう。

 発言こそしていないサザだが、ルーシーの発言に完全同意らしく、見下すような視線を投げた後、ルーシーと去って行く。



「……なにあれ」

 ローラはむっとした様子だ。

「言いふらしたりしねぇってーの」

 リックも不愉快そうな表情だ。


「興味ない」

 一方オーグは、クールだった。

「はは、そうねぇ」

 とアンも同意する。


「でもこんなに短期間でDランクかぁ。すごいわねぇ」

 カチュアは素直に感心する。

 そんなカチュアにアンが耳打ちする。

「……多分、あの子達、Cランクパーティに所属したのよ」

「?」


「さっき、アタシが抜け道があるって言っただろう? 高ランクパーティに所属するとその時点でランクアップされる仕組みなんだ」

「えっ、そうなの?」

「優秀な冒険者がランク制限のせいで上層階にいつまでもチャレンジ出来ない事態をなくすためだよ。だから不正でも何でもないんだけど……」

「けど?」

「この年になると地味な下積みは大事に思えるね。実力以上の力でランクを上げてもそれを本当の自分の力に出来るかはその人次第だ」

「あ、分かる気がする」






 ***


 まあ人は人、自分は自分だ。

 カチュア達は自分らしく頑張るしかない。


「私達、Eランクになったから、目標、決めたい」

 とローラが言った。

「目標かぁ」

「いいね」


「……俺はDランクになりたいッス」

 とリックが言った。

「やっぱりさっきのルーシー達はちょっとむかつきました。でも俺がEランクなのは確かですから、あいつらより上になりたいです」

「お、いいね」

 とアンが賛成したのはカチュアにはちょっと意外だった。


「アンは冒険者ランクに興味がないんじゃないの?」

「向上心があるのはいいことだよ。どうせならあいつらより早くCランクになればいい」

「えっ、出来ますか? 俺達に」

 逆にリックの方が引き気味だ。


「そりゃあ、簡単じゃないけど、このチームなら出来るさ」

 とアンは断言してから、

「アタシはねー、ダイエットしたい」

 と言った。


 アンは筋肉もあるが脂肪も付いていてちょっと太めの体格だ。

 動けるぽちゃムチって感じ。


「……ダイエットっすか?」


「そう。ダイエットするつもりで、また冒険者始めたんだけど、この年になると脂肪は落ちにくいね」

 とアンはため息をつく。


「このままダイエットは継続するけど、駄目だった場合に備えて二十五階にある月下美人草で美人のポーションを作ろうと思っている。だからアタシの目標は二十五階に行くことだね」

『美人のポーション』は整形バリの美人になれると評判のポーションだ。

 計画的?


「……俺も薬が欲しい」

 オーグは思い詰めた様子で言う。

「ダンジョンロアのどこかにあることしか分からないが、俺の目標はそれを探すことだ」

「なんて薬なの?」

「……それは言えない」

「何の薬か教えてくれないと手伝いようがないよ」

 リック達はなかなか打ち明けてくれないオーグの様子が歯がゆいようだ。

「……すまない。皆を信用してない訳じゃないんだ。でも……」


 苦しそうにそう言うオーグにカチュアが声を掛ける。

「いいのよ、それは分かっているわ」

「そうよ、アンタが話したい時でいいよ」

 と人生経験が長そうなアンも無理に聞き出そうとはしない。


「オーグもアンさんもカチュアさんがいてラッキー」

 とローラが言った。

「どうして?」

 意味が分からなくてカチュアは首をかしげた。

「カチュアさんの薬草デーで上層階の薬草も手に入れられるかも」

「あ、そうね。チラシが来たら皆に教えるわ」


「そうだね。期待している」

 アンは微笑んで、「で、ローラ、アンタの目標は?」とローラに尋ねた。


「私は、上級の回復魔法を覚えたい」

「へー」

「神殿に行ったら病気の人がいっぱいいた。全員は助けられないけど、もっとたくさんの人を癒やせるようになりたい」

「いい目標じゃない」

「応援している」


「カチュアさんは?」

 とリックが尋ねた。

「えっ、私? そうねー、家族のためにお金は貯めたいって目標はあるけど、それ以外は皆みたいにこれって目標はな……」

 ないわと言いかけて、カチュアはあっとひらめいた。


「十階の女神像様の癒やしの石を見つけて元に戻せたらと思うわ」

「ああ、そりゃいい目標だよ」


 とりあえず、強くなって上層階に行くというのは、チーム全員の目標だ。

 十階に生息する通常攻撃が効きにくいモエモエ鉄蟻対策として、リックが氷の短剣を、オーグが氷の爪をそれぞれ武器として装備することにした。


 氷装備はモエモエ鉄蟻のような火属性のモンスターに対して特効効果がある。


 これで十階に行く用意が調った。

 カチュア達は上層階を目指してさらに行く!


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