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13.Eランク昇格

 その日はチームの十回目のダンジョン探索だったので、ダンジョンから出た後、一同揃って冒険者ギルドに向かった。

 いくつかある所定の条件をクリアすればFランクからEランクに昇格出来る。

 その条件の一つにパーティーマッチングで組んだパーティで50時間ダンジョン内で過ごすこと、というのがある。

 カチュア達の計算だとこの50時間を突破したはずなのだ。


「はい、皆さん、条件クリア、Eランク、おめでとうございます!」

 冒険者ギルドの受付嬢に確認してもらったところ、やはり条件はクリア出来ていた。


 カチュア達はEランクに昇格した!



 Eランクもまだまだひよっこの域なのだが、カチュアにとっては当面の目標を一つクリアだ。


「良かったぁ、これで中級ポーターに一歩近づいたわ……」


「カチュアさんは中級ポーター目指してるんですか?」

「そうなの。中級ポーターになればもっとたくさん入るリュックとかいい装備を貸してもらえるようになるのよ」

 チームには貢献出来るし、日給も少し上がりいいことずくめだ。


 中級ポーターの条件は冒険者レベルEランク以上。……それと冒険者レベル10以上なのだが、こちらの達成はまだまだ先になりそうだ。



「では皆さん、チーム継続ということでよろしいでしょうか」

 と受付嬢に聞かれ、全員頷く。

 本来ならEランクになるまでの暫定チームだったが、カチュア達はこのままチームを続行することにした。


「ではチーム名の変更をお願いします」

「あ、そうか」

 今のチーム名は『冒険者ギルドFランクガンマチーム』だ。もうカチュア達はFランクではなくなったのでチーム名は変更しないといけない。


 一同は黙り込み、ややあってオーグが言った。

「『冒険者ギルドEランクガンマチーム』は?」

「いや、長いでしょう」

「長い」

「冒険者ギルドもEランクも要らない」

「じゃあ、なんだよ、ガンマチーム?」

「…………ダサ」


 しばらく悩んだが、他にいい名前が思いつかず、チーム名は「ガンマチーム」ということになった。


「あとで『なんだよ、このチーム名~』って言われるヤツだよね」






 ***


 FランクからEランクに昇格するといくつかの制限が解除される。

 職業やスキルのレベルアップに必要な条件だったり、ランク限定のクエストを受けられたり、十階以上の上層階への立ち入りが許可されたりというものだ。

 カチュア達は既に八階まで来ているため、Eランク昇格は今後のダンジョン探索のためにも必要なことだった。


 他のメンバーは早速冒険者ギルドのエントランスに張られたEランク用のクエストを見ている。

 Fランクが受けることが出来るクエストはあるが、低層階での薬草採取などあまりお金にならない地味なクエストが多い。

「○○モンスターを退治!」なんていういかにも冒険者向きのクエストはEランクからだ。


 ランクが上がることは冒険者にとってはかなり誇らしいことで、なんなら親戚集めてお祝いしちゃうくらいなのだが。


「ランクが上がったのに、アンはあまり嬉しくなさそうね」

 カチュアは離れてパーティーの仲間を眺めるアンに、そっと聞いてみた。


 アンは「便利なアイテムももらえなくなるんだから、ギリギリでいいんじゃない?」と主張するくらい冒険者ランクに興味がなさそうだった。

 確かにEランクにアップしたことで、初心者ボーナスとして今までギルドから無償提供されていた転移魔法の巻物(スクロール)は次回からもらえなくなる。

 ちなみに帰還用の転移魔法の巻物(スクロール)は1万ゴールドである。


「ああ、ごめんよ。アタシはひねくれ者だから、ついね」

 とアンは苦笑いする。

「冒険者ランクを上げる方法は抜け道がわんさかあってね。そこがどうも好きになれないのさ。まあ、長年ランカーをやっている冒険者なんかは尊敬するけどね」

「ふうん」

「さて、アタシらも特殊クエストだけはちゃんと見とかないとね」

 普通のクエストは任意だが、特殊クエストはEランク以上の冒険者が全員強制で参加させられる公共性が非常に高いクエストのことだ。


『百二十階にいるブラックドラゴン退治』などカチュアにはまるでご縁がなさそうなクエストの中で、一つだけカチュアに関係ありそうなものがあった。


「あら」


『急募! 女神像修復!』のクエストだ。

 十階にある女神像の額にはめ込まれた癒やしの石が紛失してしまい、現在、女神像の癒やしの力が発揮されない状態らしい。


 クエストの中ではっきり書かれていないが、それはおそらく。

「……盗難?」

 カチュアの声にアンが小さく頷いた。

「多分ね」


 不心得者の冒険者が癒やしの石を女神像から盗んだのだろう。

 女神像には自己修復機能が備わっており、癒やしの石を元の場所に戻すだけで修復出来るそうだ。



 改めてクエストボードを見ると様々な依頼がある。

 各種アイテム採取の他に、近隣の村に出没するモンスター退治であるとか、冒険者に対する依頼は多岐にわたる。


「私達でも受けられそうなものがいくつかあるわね」


 ダンジョン内で得られるアイテムは道具屋でも買えるが、数が欲しかったり、確実に手に入れたい場合はクエストとして依頼されることもある。

 そういうのは、道具屋に卸すよりは少し割が良い。


 Eランクの次はDランクへの昇格だが、昇格の必須条件にクエスト依頼達成というものがある。

 ランクが高い依頼なら一発で昇格出来るが、そもそも格上ランクの依頼は特殊クエスト以外は受けられない。

 Eランク依頼の中から選んでコツコツ達成していくしかない。


 カチュア達がダンジョン探索のついでに受けられそうなクエストを見ていると。


「あら、あんた達、まだ冒険者やってたんだ」

 聞き覚えのある皮肉っぽい女性の声に一同は振り返る。


「……ルーシーとサザ」



 元パーティーメンバーの魔法使いのルーシーと剣士のサザだった。


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― 新着の感想 ―
ほのぼのなお話だと勝手に思ってるので、ルーシーとサザが大怪我とか亡くなったりしてなくて良かったなーと思いましたわー。
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