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10.冒険者ギルドFランクガンマチームその2

 翌々日、カチュアが集合場所に行くと、リックとローラが先に来ていた。

 オーグとアンが来ても、まだサザとルーシーのコンビは姿を見せない。


 それなのにリックは一同を見回して言った。

「全員来たね。じゃあ行こうか」

「あれ、サザ君とルーシーさんは?」

 カチュアの問いかけにリックは言いにくそうに答えた。


「あいつらはパーティを抜けた」

「えっ、パーティを?どうして?」


 リックの話によると、昨日四人で行ったダンジョン探索は、道に迷ったり、モンスターに行く手を阻まれたりで、二階で早々と引き返すことになったそうだ。

 さらにルーシーとサザはリックとローラのアシストが悪いと文句を付けてきたので、雰囲気は激悪。


「こんな弱いパーティにいられないわよ!」

「そうだ。こんなところで足踏みしてる俺達じゃないんだよ」

 と二人は啖呵を切って、ダンジョンから出るとすぐにチームを脱退したそうだ。


「多分、一昨日声を掛けてきた冒険者のパーティに入ったと思う。それらしいこと言ってたから」


 ……という話をカチュア達は三階でお昼休憩がてら聞いた。


 前回サザのポジションだった前衛にオーグが入り、オーグのポジションにはカチュアがついている。


 話の後、リックとローラは「すみませんでした」とカチュア達に頭を下げた。

「えっ、どうしたの?」

「俺達、正直、アンさんは強いの分かるけど、カチュアさんとオーグのことは見くびってました。言い訳になるんですけどダンジョン探索初めてだったんで、一昨日、ここまでめちゃくちゃスムーズにこれたのはカチュアさん達のおかげだって分かりませんでした」

「カチュアさんはともかく俺は特に」

 とオーグが言ったので、カチュアもあわてて否定した。

「えっ、私も別に何もしてないけど?」


「いいえ、カチュアさんはダンジョン内のこと、超詳しいっす。オーグさんはしんがりとしてすげぇ、優秀でした」

「私達、昨日、何度も後ろから不意打ち食らって……」

 後衛のローラはその時のことを思い出したようで、ぶるっと体を震わせた。


「それは、大変だったわね」

 後ろから回り込まれて不意打ちされると、どんなパーティも一気に崩されて、立て直しが難しくなる。それを防ぐのはしんがりの役目だ。

 オーグがしんがりだった時は完璧に防いでいた。

 オーグの後にしんがりを任されたカチュアはオーグほど優秀ではないが、小心者センサーが役に立ち、今のところ奇襲を未然に防いでいる。


「それに……」

 とリックはアンに視線を向ける。

「サザの言うことには腹が立ちましたが、確かに俺、アンさんみたいに敵を倒すだけじゃなく、皆が戦いやすいように上手く敵を追い立てることは出来てないなって、今日、改めてアンさんの動きを見てて思いました。皆がすごいのがようやく分かりました」

 しょんぼりするリックにアンが言った。


「それが分かったら大したもんだよ。アンタはいい冒険者になれるよ」


 リックとローラの事情は分かったが、次は脱退した二人が心配になるカチュアだった。

「サザくん達、大丈夫かしら」

「大丈夫じゃないの?剣士と魔法使いはどこのチームでも需要あるし」

 とアンが軽い口調で言う。


 冒険者が所属チームを脱退するのはよくあることなのでアンは気にもとめてない様子だ。

 いくつものチームに所属しその都度違ったパーティを組む冒険者や、普段はソロで行動し、時々パーティマッチングや仲間を募集して固定のパーティは作らない者。

 冒険者の戦い方はいろんなスタイルがある。


 その日は結局、四階まで行き、五階に続く階段の場所を確認したところで、パーティは撤収した。

 ダンジョンを出たところで、アンが一同に尋ねた。


「で、アタシらのパーティ、これからどうする?またマッチングで誰か違う人、入れてもらう?」

 少し間があって、リックが口を開いた。

「俺は、この五人でいいと思います」

「……私も。やりやすかったし」とローラも同じ感想のようだ。


 サザ達が抜けて戦力不足のはずだが、前回よりもスムーズに先に進むことが出来た。

 人数が少ないと逆にモンスターに気づかれにくくなり、移動が楽という利点もある。


「皆がいいなら俺もそれでいい」と言うのはオーグ。


 最後にアンはカチュアに話を振る。

「カチュア、アンタはどう思う?」

「うーん、魔法使いがいないのはちょっと不安よね。十階にいるモエモエ鉄蟻は武器の攻撃がとても通じにくいそうよ。だから十階まで魔法職の人にパーティに加入してもらうか、もしくは……」

「もしくは?」

「魔法攻撃付与の武器を手に入れるか、攻撃魔法の巻物(スクロール)を手に入れるかね」

 魔法攻撃付与の武器は属性魔法で攻撃された時と同等のダメージとなり、物理攻撃が通じにくい敵には有利になるが、武器の値段としては1.5倍程高くなる。

 魔法の巻物(スクロール)は魔力がない人も魔法が使えるアイテムだ。

 ただし便利な反面、値段は高価だ。


 リックは尊敬の眼差しをカチュアに向ける。

「カチュアさん、十階まで行ったことあるんですか?」

「え、ないわよ。初級ポーターが行けるのは五階までよー。でも、冒険者の人から上層階の話は色々聞いているし、マップや出現モンスターは二十階くらいまではなんとなく頭に入っているわ」

「……すごい」

 ローラがボソリと呟く。


「すごくないわよー。ポーターなら誰でも知ってることよ。マップやモンスター図鑑は冒険者ギルドや道具屋で閲覧出来るのよ。待たされる時、暇だから読んでるだけよー」


「アタシらが十階までたどり着くにはまだ少し時間がある。じゃあ、当面、この五人でいいってことにしようか」

 アンが話をまとめる。

「うん」

「異議なし」

「はい」

「じゃあ、そんな感じで」


 とパーティは当面、追加募集はせず五人で行くことにした。







 ***


 次の集合は前回の翌々日だ。


 カチュアが集合場所に行った時には既にリックとローラが来ていた。

「ごめん、お待たせ」

「時間前だから全然大丈夫ッス」

「うん」


 二人の優しい対応にちょっと罪悪感を覚えるカチュアだった。

「ありがとう、えっと、私達の都合に合わせてもらちゃってごめんね。二人とも若いからもっとダンジョン探索したいわよね……」

「それはいいの。ダンジョン行かなくても出来ることあるの分かったから」

 珍しく口数の少ないローラが答えが返ってくる。

「え?」

「俺は宝箱破りのスキル上げと、冒険者ギルドでカチュアさんが言ってたマップ見て今日行くところ確認してました。ローラは魔法の勉強して、昨日は有意義に過ごせました」

「経験値を積むのは大事だけど、毎日ダンジョンに行かなくても出来ることあるから」


「そっかぁ。それなら良かったわ」


 オーグとアンも来て、パーティはダンジョン探索に向かった。


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良い子たち!
[良い点] ほのぼのしてて読みやすいです♪ [気になる点] もうポイントカードに20ポイント以上は溜まってそうですが、主人公がトドメ刺さないとポイント加算されない仕様なのかな? [一言] ・・・十階層…
[良い点] いちにきおき [一言] あいだの日を鍛錬日として扱う描写は何気にレアですね 生活感と実感あって良い設計
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