23.覚醒
可愛さ要素↓↓↓(笑)
洗脳用のCDとやらが、どんな内容かは知らないが。再生終了を待っているのは、やはり退屈なものだ。
収録時間は50分ほどと表示されてはいるけれど、悪魔超獣の心得でも唱歌されているのだろうか?
さすがにクロップスは、アントニオのようすをじっと見守っているものの。アイザックはとゆうと、すぐに飽きてしまったみたい。ほら、またカフェオレのおかわりを汲んでいる。
ああ見えて、魔牛は意外と甘党なのか。角砂糖を継ぎ足しはじめた、そのとき!
「くふふ、ふはは、わ〜っはっは!!」
ヘッドフォンにはさまれて、眼を閉じたままのアントニオが、高らかに笑いだしたではないか。
なにごとかと、戸惑うアイザック。
あわててカップを飲み干して、パンダに駆け寄り。その顔をのぞきこむと、隈どりに囲まれた両眼が、かっと見ひらかれ——視線が激突する!!
一見、厳重に縛られているように見えた拘束であったが、じつはゆるめられていたのだろう。
ふりほどいて飛び起きざま、魔牛に強烈なパンチを見舞うアントニオ!
「ふふっ。ヘヴィ・メタルはいつだって、おれたちを奮い立たせるぜっ!!」
彼がヘッドフォンをはずして、投げ捨てるのを合図にしてか。クロップスもそのプラグを、ステレオから抜き去った。
もはや、なにがなんだかわからずに、混乱しきっているアイザック。
ふたつのスピーカーからその耳(あったっけ?)へと流れこむ、高速ギタリストの奏でた天空まで翔け抜けるような旋律と、雄々しいシンガーの破壊力に満ちたシャウト。
ここまでくれば、アントニオが聴かされていたのが洗脳用CDではなかったことを、魔牛も理解する。
「どうだ?
こいつなら、おまえの好みのシンガーであろう?」
本物の洗脳用CDを隠し持っていたクロップスは、すばやく円テーブル上のケースを手に取り。ディスクをはめこんで持ち去ろうと——だが、惜しいっ!!
パンチのダメージとゆうより。そのショックからあっさりたちなおったアイザックの、にょろりとしたしっぽに絡めとられて。ケースごと奪われてしまう。
「くっくっくっ。
ずいぶんとぉ、舐めたまねをしてくれたぢゃないか」
笑みが零れるほどのぶちギレようの魔牛は、ラボの出入り口にずずいっと立ち塞がった。
魔牛を倒さねば、この場を切り抜けることはできまいと、かつて闘ったぶたまろ以上の威圧感がアントニオを襲う。
けれども、彼の両翼にはウサギとネズミ——頼もしい2匹の相棒たちはもういないのだ。
可愛い動物キャラのお話にしとけばいいのに(汗)