19.決断
皮肉混じりですが、意外と仲良くしゃべってます。
「ほほぉ。さすがに目が高いな」
白と黒のうち、どちらのパンダをえらぼうか決めかねているクロップスに、アイザックはしつこくコメントをはさむ。
「この白いのはかなり手こずらせてくれたんで、ちょっとハデに壊しちまったんだが……」
なるほど。
アントニオだけがさかさまに沈んでいるのは、砕けた骨格が頭部の重さを、もはやささえきれないからか。
ならば彼には、遅かれ早かれ、なんらかの手術が必要であろう。
心を決めたクロップスに、アイザックは1枚、ケース入りのディスクを渡す。
「おっと、こいつを忘れちゃいけないな。
改造手術がおわったら、このCDをヘッドフォンで聴かせて洗脳するんだ。まちがっても、あのばかでかいスピーカーで、鳴らしたりするんじゃないぞ」
「……そんな便利なものがあるなら。このわたしのことも、とっとと洗脳してしまえばいいだろうに?
ご機嫌とりにあんな趣味的なラボまで用意してくれるとは、ずいぶん丁重な待遇ぢゃないか」
怪訝に尋ねる博士に答える魔牛——どうでもいいけど、アイザックってば。見かけによらず、ほんっと、おしゃべりなやつだね。
「洗脳は、記憶や精神に異常をもたらすからな。
おまえのような、デリケートな仕事をさせるやつにはむかないのさ。
まぁ、洗脳なんざしなくても——」
ここで、にやりと、本日いちばんの邪悪な笑み。
「かわいい元助手のことが心配なら、へたなまねはできないよなぁ?」
(——ハートネット!!)
クロップスの脳裏にひらめいたのは、自分を慕う、ネコの少年のすがただった。
知っているだろ?
悪魔は手段をえらばないのではなく、わざわざ好んで、もっとも卑劣な手段をえらぶのだ。
イラストは、アニメのEDのイメージ(笑)