18.博士の選択
シリアスな展開です。
カプセルのなか、4匹の超獣たちはこれからじぶんが演じることになる悲劇の、その脚本に。まだ、目もとおさないまま、眠りについている。
「どうだ?
どいつもこいつも、いい素材だろう?
よっつともぜんぶ、おまえの作品にしてかまわないんだが。とりあえず、ひとつめをえらんで、改造してみろよ」
魔牛の邪悪な提案がせまるのは、クロップスにとっての苦渋の決断。
どうやら博士は、好き好んで、悪の企みに手を貸しているわけではなさそうだ。
そんな彼の苦悩にもおかまいなしに、魔牛は自慢げに解説をはじめた。
「こっちの猫は、この基地に潜入した諜報員らしくてな。
薄情な相棒に見捨てられた、気の毒なやつなんだ
……ひょっとしたら、おまえを救けにきたのかもしれんなぁ」
アイザックの軽口が気に障りながらも、クロップスは4匹の超獣を見さだめる。
とりあえずの練習台などではなく。この手で改造手術という悪魔の所業を施し、呪われた運命的をともにすべき、そのあいてがどの超獣かを。
コアラなど、どうだろうか?
超獣強度こそ、リチャードの130万パワーには劣りそうなものの、秘めたる超獣気はかなりのようだが。
「おお、そっちのコアラはまちがえて連れてこられたやつなんだが、なかなか使えそうだったんで——」
アイザックめ。真剣にえらばせたいのなら、よけいな茶々をいれないでもらいたい。
すでに博士の選択肢は、ふたつにまでしぼりこまれているのだから。
あたまをうえにして、眠りにつくリチャードと。ほかの3匹とはちがって、あたまをしたに、さかさまで冬眠液に沈むアントニオ。
むかいあわせで胎児のように丸まるすがたは、まさに絡みあう陰と陽の勾玉。
この2匹をそろって、悪の手先にさせては、ぜったいにいけない! 博士の科学者としての分析ではなく、直感がそう告げていた。
あくまで、パンダが主役です。