15.魔牛の訪問
このふたりの絡み、好きです。
さて、訪問者は招かれざるものほど、気まぐれに訪れるのが世の常か。聖域を侵す異教徒が歓迎などされぬように、扉のひらかれる音にクロップスは不快を隠そうともしない。
「よぉっ、進んでるか?
こっちはこっちの仕事をしたんだ。そっちも、そっちの仕事をちゃんとやってもらうぞ」
ノックもなしにラボへとはいってきたアイザックは、ヘヴィ・メタルの音量に顔をしかめながら催促した。
魔牛はおちつかなさそうにきょろきょろすると、ステレオ近くの円テーブルのうえに、ディスクがぬけたひらきっぱなしのCDケースをみつけて、ジャケットを確認する。おそらく、いま、かかっているアルバムのものであろう。パンクよりもファンクやソウルのフィーリングをもったシンガーが、重厚なりリズムとギター・リフが織り成す楽曲を、メロディアスに歌いあげている。
「ふんっ、おれはこういう女々しいシンガーは好みじゃないんだがな。
そんなことより、待ちくたびれるのも限界なんだ。そろそろ改造手術に、かかってもらおうか」
「ゆったはずだが、まろのもとをどれだけ強化しても、魔神の器にはならないぞ。
機体の限界値をはるかに超えているからな」
いったいレモン何個ぶん、くちを酸っぱくして言いつづけているのかわからない。そんなうんざり顔のクロップスに、魔牛はしてやったりの顔を返す。
「心配にはおよばないさ。こっちの仕事は終えたと言っただろ?
まろのもとなんかとくらべものにならない、とびっきり上等な被験体を用意してあるんだ——それも4体もな」
私も、女々しいシンガーさん好き。