考察②
アゼルに本を読んであげてからは、また大人しく私室に引きこもる事にした。
弟のアゼルはとても可愛いが、前世で記憶している彼と大分印象が違う。
というのも、彼もゲームの攻略キャラの一人である。そしてゲームの開始は今から五年後のわたしが十五歳の時。そして、アゼルは十四歳。ヒロインが学園で過ごす一年後に、唯一の下級生攻略者として入学してくる。
そう、登場が遅いせいで攻略の難易度が高い。その上性格も気難しく、好感度も上がり辛い、氷の貴公子が彼氏である。
そんな彼が攻略さえできれば、ヒロインには唯一心を開く。
アゼルは確か、優秀な姉セレスティアに劣等感を感じていた設定もあった気がする。
今の所その片鱗は見られない。
──この五年で一体何があるというの?……お姉ちゃん怖い……。
現時点で心当たりがあるとするなら、年齢がアゼルとは一つしか変わらないにも関わらず、既にセレスティアは難かしい書物を読んで理解している点。
しかし年齢が一つしか変わらないといっても、アゼルは早生まれで三月が誕生日。なので実質二歳ほど歳が離れている。
子供の頃だとこの差はかなり大きいと思う。
それに前世の記憶を取り戻したわたしは、一度大人を経験しているのだから、大抵の本は理解出来るけど、人生2周目なのだから仕方がない。
──本日の読み聞かせが、のちの劣等感への道に繋がっていたとしたら……いいえ、小説くらいでは恨まれないと信じたい。難解な学術書とかなら兎も角。
それに今のセレスティアは中身わたしである。
優秀で劣等感を抱くどころか、蔑んでくる方向性にシフトするのではないか、とすら思ってしまう。それはそれで怖い。
そしてもう一つ思い出した事。
大好きな憧れの先輩がボランティアで、当時被災していた子供達の元に足を運び、絵本の読み聞かせをする活動を行なっていた記憶。
わたしも自分の声で、子供達を喜ばせらるような人間になりたいと、当時は強く思っていたのだった。
ここはアニメもゲームもない世界だけど、自分に出来る形で貢献したい。その為にはまず自分の人生を守らなくては。