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トラブル④

 前世の学生時代は比較的平和に過ごし、更に声優の世界だと苛めを目撃した事など一度もなかった。そんな自分にとって、先程の状況は刺激が強すぎた。


 そもそも人を苛めて心が痛まない人間に、演技が出来るのか甚だ疑問である。


 ライバルに勝って仕事を得る方法は、オーディションで良い演技をするしかなく、その先の評価は視聴者に委ねられる。

 自分のできる事というと、ただ地道に自身の実力を磨くのみ。


 目が合うと、咄嗟に逸らしてしまったわたしに、溌剌とした声が降り注ぐ。


「ありがとうございます、セレスティア様っ」

「いいえ、出過ぎた真似だったのならごめんなさい」

「そんな事ありません!とても助かりました!それに……」


 顔を上げると真摯な瞳と目が合う。


「先程のセレスティア様は、アニメのセレスティア様そのものの声と話し方でした。冷静で気高くて本当に素敵で……あ、いつもの可愛らしいセレスティア様も、大変魅力的ですけどね!」


 お陰で肩の力が抜け、思わずくすりと微笑んだ。そしてわたし達は帰宅の準備をするため、教室へと向かう事にした。


 教室に置いておいた荷物を取ってから、馬車に向う道中、会話を交わしていた。


「最近のエリカさんは少しずつ学友も増えてきたように見えるけど」

「ま、まぁ」


 わたしの言葉にエリカさんは頬を赤らめる。

 乙女ゲームのヒロインなのだから、攻略対象のキャラクターと、フラグが立ちやすいのだろうか。

 ただ女子生徒と話している場面も見かけるので、男女問わず交友が、広がっているようにも見受けられる。


 ──顔を赤らめたのは、誰かを思っての反応?思い人がいるならやはり攻略対象かしら、前世からの推しがいると言っていたし。


 ゲーム『エリュシオンの翼』の攻略対象というと、セオラスやアントネスク卿。

 彼らと一緒にいたエリカさんを思い返してみる。

 まずセオラスと一緒にいたのはぶつかった際に、落とした用紙を拾って運ぶのを手伝って貰っていた。不可抗力かもしれない。

 しかし昼食時にテーブルを共にしていたアントネクス卿とは、ある程度の交友関係を築けているように思える。

 それを踏まえて尋ねてみる事にした。


 自分の未来を左右しかねないので、彼女の推しは誰なのか気になってしまう。


「そういえば前に、この世界に推しがいるって言っていたけれど……」


 話を切り出すわたしに、エリカさんが顔を向ける。


「もしかして、アントネスク卿だったりするのかしら?」

「彼は駄目ですっ!」

「え?」


 すかさず放たれた言葉と、思いがけない反応に、わたしは驚き硬直する。


「あ、い、いいえ……何でもありませんっ。彼は推しではないというか、も、申し訳ございませんっ」

「そう……」


 当人が触れて欲しくないなら仕方がない。深く追求するのは諦める事にした。

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