約束②
「そうだ!今度セレスティア様をダンドリュー家のお屋敷に、ご招待させて頂きたいと思っているのです。わたしの故郷の料理を振舞ってお持て成しさせて頂きたいのです!
「まあ、故郷のお料理……
「以前お話しさせて頂いた卵焼きなどです!」
「美味しそう。食べてみたいわ……」
「今度お作り致しますよ!」
「ほ、本当?」
「はい!」
──あの懐かしい卵焼きが食べられるというの……?
「でも、伯爵夫妻にご迷惑ではないかしら?」
「仲のいい学友が出来れば、是非屋敷に招待するようにと言われております。仲の良い学友を招くのは、社交を学ぶ一貫としてとても理にかなっているようでして」
確かに、今後社交が必要となってくる事もあるだろう。最初に仲の良い学友で練習するのは、とてもいい案だと思った。
「お、お養父様とお養母様に、セレスティア様のお名前を出してみたら、大変驚かれてしまいました。まさか最初に招待したい方が、国の名門貴族のご令嬢セレスティア様とはって」
陛下から、エリカさんを預けられた程の信頼を寄せられているダンドリュー夫妻と交流を持つのは、我が公爵家からしても悪い話ではない。
「伯爵夫妻は、とても貴女の事を考えていらっしゃるのね。食事のマナーの上達も眼を見張るものがあるし、養子先をダンドリュー家にお決めになられた陛下のご英断には感服する思いです」
「はい、ご夫妻はとても親切にして下さいます。
それと毎日出して頂いているお料理も、とても美味しくて、感謝しても仕切れない程です。ですが今まで自炊して生きていたわたしとしては、たまには自分で作って故郷の味を再現したいと思いました。
私の生まれ育った環境にも親身に耳を傾けて下さり、料理が趣味だというわたしの事も理解して下さりました。たまに厨房に入って、料理を振る舞うことを許可して下さったのです」
「そうだったの」
「最初こちらの厨房は使い慣れた自国の台所とは、ずいぶん使い勝手が違ったりして戸惑いましたが、料理人の方々に使い方を教わりました」
急に元の世界からこの異世界へと飛ばされ『エリカ』としての人生を強いられているエリカさんだが、基盤を築きつつある彼女を応援したい気持ちがより強くなった。
「社交の練習だけど、お茶会とかではなくていいの?」
「あ……」
「お茶会はその次という事にしましょうか」
わたしはクスリと微笑んだ。