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ランチタイム③

 食事を食べ終えてからトレイごと食器を下げると、わたし達は席へと戻り食後のお茶を飲みながら、昼休みの間話をする事にした。


「貴方のいた世界にはどのような食べ物があるの?」

「え~っと、自国の料理というとオニギリ、寿司、炊き込みご飯、お茶漬けとか、美味しい料理が沢山ありますよ!」


 上げられたのは、何故か見事にお米ばかりだった。おにぎりは料理なのか謎だけど。お米大好き、お米が恋しい元純正日本人の私としては、名前を聞くだけで食欲が煽られてしまう。


「カレーライスや炒飯や天津飯も美味しいですが、これは自国の料理ではなく外国の料理です。ですがとても美味しいです!それにわたしの産まれた国は海外の食事を自国民に合うように、勝手に魔改造した食べ物なども沢山あります!そういった物もとても美味しいのです」


 ──カレーに中華料理!カレーもナンではなくライスを指名してくるとは、やっぱりお米なのね。お陰で私のお米食べたい欲が、より刺激されてしまった……!


 日本が海外の料理を魔改造するのが好き、というのは同意である。インド人の食す本場のインドカレーと、日本のカレーライスは大きな違いがある。中華料理もしかり。


 そして一緒にいる人が、食べ物の名前を口にした途端、無性にその食べ物や料理が食べたくなる現象は誰しもが経験した事があるだろう。今、まさにその状況だった。

 しかも中々頻繁に食べる事の叶わぬ、お米の料理。


「そういったお料理も自分で作ったりするの?どんな料理か想像もつかないけれど」


 言葉とは裏腹に味まで鮮明に思い出せる程、容易に想像が出来る。


「そうですね、一通りの料理は作れます。卵焼きとか、肉じゃがとか煮物、お御節料理も作れますし」

「卵焼き……!」

「卵焼き、ご存知ですか?」

「いっ、いいえ。目玉焼きやオムレツとは違うの?どんな食べ物かしら……」


 ──危ない危ない、懐かしいワードについ反応してしまった。


「そうですよね。異世界にある私の国の料理ですし、ご存じないですよね。鶏の卵を溶いてしようするんですけど、フライパンに溶き卵を注いで、焼けてきたらクルクル巻いて隅に寄せて、また卵を注いて……という作業を繰り返す事で完成する料理です」


 ついゴクリと生唾を飲み込みそうになる。調理工程を詳しく説明される事で、より想像力が湧いてしまった。ランチを食べたばかりにも関わらず、卵焼きを食べたいと思ってしまう程に……。それくらい、わたしは日本食に飢えている。


「……とても美味しそうね」


 それにしても、彼女はこの世界に来る前、どのような生活をしていたのだろうか。

 母親に料理を教わり、大切に育てられていたと容易に想像が出来てしまう。いきなり大切な自分の娘がいなくなれば、親はとても心配しているだろう。

 今の見た目はゲームのヒロイン、エリカそのものだけど、この人は元の世界での生活基盤があったはずなのに……。


「エリカさんは家庭的で素敵ね。とても良いご家庭に育ったのだと分かったわ」

「高校卒業と同時に両親が亡くなり、天涯孤独になった筈なのに、気付いたらこの世界にいて貴族の養子にして頂けるなんて……。本当に信じられない事の連続です」


 エリカさんのこれまでの人生をほんの僅かに触れたが、深くは追求出来なかった。


「とても興味深いお話をしてくれてありがとう。もしよければ、またお話を聞かせて下さると嬉しいわ」

「もちろんです!こちらこそ、ありがとうございました!」


 お昼休み開けの授業のため、一旦教室に向かう事となった。エリカさんとわたしは、お互い別々の科目を選択している。教室に教科書と筆記用具を取りに行くと、別行動となった。


 少しずつだけど、エリカさんの事を知る事が出来た気がする。今の内に、次に知りたい情報を整理しておく必要がある。


 ──彼女が日本のどの時代に産まれたのか……というより彼女が日本で生きる間に、この世界に似たゲーム「エリュシオンの翼」をプレイ済みであるか否か……。


 そして初めて会った時、フレデリック殿下にぶつかりかけたのは、故意なのか偶然か──。


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