演劇サロン②
劇の内容は、亡国の王女が復讐の旅で出会った青年と心を通わせるも、彼こそが故国を滅亡に導いた天才軍師だったという事が判明する。
恋した相手が憎き敵という、壮大かつ人気のシチュエーションである。
これは数年前に流行った小説の内容であり、舞台化された際にフレデリック殿下と、見に行った思い出の作品だ。
好きなお話でもあるので内容はとても好き。
それとは別に、ある意味衝撃を受けてしまった。それと同時に何故か謎の懐かしさに襲われた。
──何?この妙な懐かしさ……既視感は……。はっ、これは……!
わたしの中の眠っていた記憶が呼び覚まされる。それは、とある高校が舞台のアニメにモブとして出演した時の事。
そのアニメには演劇部の練習風景のシーンがあり、わたしは役名のない演劇部員Bという役だった。
収録時わたし達は『学生演劇っぽい芝居』をするという事を意識して演じた。
完全悪ふざけのようなノリで、誰に向かって話しているのか、分からないような対象物のない芝居。抑揚もない演技。
演劇サロンメンバーの芝居は、あれにソックリなのである。
真面目半分、おふざけ半分で演じた『あえて下手に演じる素人演劇部』のシーンがテレビで流れた途端、ネットでは大反響となった。
プロの声優さん達、演劇部っぽい演技が上手すぎる!と大絶賛されたものだ。
その敢えて下手に演じた素人演劇部役の時のわたし達の演技にソックリなのである。
どの世界においても、素人演劇は似たような演技になるらしい。
──きっとちゃんとした演劇部もあるのかもしれない。その人達は御免なさい。でもこのサロンの芝居は素人そのものなの……。
まるでスポ根のような部活が存在する日本の学校、それは運動部に限らず文化系も例外ではない。自分の母校だと吹奏楽部がそうであり、全国大会に出場する程の実力であった。
優秀な顧問さえいれば、日本の学校の部活動なら劇的にレベルが変わるだろう。しかしここは日本の熱心な部活動とは違う、貴族のお嬢様のお遊びの場。
そして自分は養成所で厳しい稽古の末、十代からプロとして仕事をし始めると、当然共演者はプロばかり。私はプロの演技しか知らないのである。
そんな自分にとって、彼女達の演技は衝撃だった。