2
借金取りに追いかけ回される夢を見た
最悪だ
目を覚ましたら美青年が居た
何て素晴らしい
「……ライル様……目覚められたのですね」
眉をハの字に変えた泣きそうな顔が近づけてきて目と鼻の先だ、から・のぉ額と額がゴッツンコだ
なんというご褒美
だがしかし、アラサーの喪女には刺激が強すぎた
血が上ってきた
しかしアラサーのプライドとして鼻血は気合い止める
美少年に鼻血を吹かせるわけにはいかない
せめて拝むしかない
「熱は下がったみたいで良かったです」
美青年は安堵の息を吐き優しく微笑む
私が美青年の顔に見惚れていると扉の向こうが騒がしくなる
「「「ライルウウウウウウウウウウウウ!!!」」」
ノックの代わりに叫び声と共に勢い良く扉が開かれた
そこにキラキラした3人の美形が現れた
誰だ?このトリプル美形は
「目が覚めたのだな」
「ライル!ライル!私のライルゥゥゥゥゥ!!」
「おはよう、気分はどう?」
叫びながら美女が私にタイブして来てギュウギュウ抱き絞めてくる
ドンドン締まってくる
出る出る、マジで中身でちゃう、内臓出ちゃう
苦しい…………
顔を胸に押し付けられて息出来ないし
何か硬い
物理的に昇天する
口から臓器が出た絵面はホラーですよ
「デリシャ!止めなさい!」
「母上ライルが死んでしまいます!」
「奥様!ドウッ!ドウッ!」
一瞬三途の川が見えた
マジヤバかった
青年が怪力美女を羽交い締めにして離してくれたから死なずに済んだ
そして何故か今私は美丈夫の膝の上で抱っこされてる
私は徳を積んでいたみたいだ
それにしてもあの美女は無かったな
ペッタンコ又は絶壁だった
胸の谷間に挟まれてみたかったな
などと失礼なことを思っていたら
「大丈夫?熱は下がったけど気分はどう?」
美少年が心配気に声を掛けてくれた
「ぼちぼち」
「えっ…………」
しまった大阪弁が通用しない
「まぁまぁ」
「はっ?」
あれ?これも大阪弁だったかな?
「問題無いです」
「ライルどうしたの?可笑しいよ」
困惑する美少年
現状が分からない
でも身体は大丈夫そう
「少し横になりたいので1人にして欲しい」
脳がやばそう、頭の中を整理したい
「ライル様はまだ熱が下がったばかりですので休ませて上げて下さい旦那様」
「そうだな。クラーク後は頼んだぞ」
美丈夫と美少年は美女を半場引き摺って部屋を出ていった
ベッドに横になれば再び睡魔が襲ってきた
夢が教えてくれた
あの3人は両親と兄だと
そして美青年は従者らしい
私は伯爵家の次男だった
歳は11歳、兄は14歳
真冬のこの季節に従者が止めるのも効かずに半袖短パンで庭を駆け回った挙句、足を滑らせ噴水に落ちて高熱を3日出したアホの子だった
見た目は美形なのに
残念な子
そして……悲しきかな男しかいない世界だった
美形の男子に産まれたからには美女を侍らせ黄色悲鳴を挙げさせたかったのに
残念だ………さっきの美女は男とは…………道理で胸が無いわけだ
右と左でポヨンポヨンしたかった
次に目を覚ました時は夕方だった
医者に診て貰えば、問題無しと言われ
見舞いに訪れた母親に謝れた後、拒否の出来ない王子のお茶の招待状が届いた事を告げられた
難色を示す私に
「ちょっと王子殺ってこようかな」
とお母様が言った
辞めて下さい一家処刑になります
「ワータノシミダナア」
片言なのは仕方がない