世界が一つに戻るまで
この世界の人々は優しい人であふれていて、ママもパパもファレオンもルナも私は大好き。ママはいつも、魔法で花を咲かせてくれるし、パパはいつも魔法で絵を描いてくれる。ファレオンは動物に変身できる魔法を持っていて、ルナはピカッと光る雷を出せる。この大陸の人々の魔法は、使うとほかの人もその魔法を見ることができる。だけど私は、目に見える魔法を出せない。目に見えない魔法しか出せない。そんな私は、この大陸で異常なのかな…
海を見つめていると、たくさんの声が聞こえる。動物の声、植物の声、人間の声、命あるものの心の声が聞こえる、それが私の魔法の一つ。水がおいしいと言う植物の声やこの料理がおいしいなと言う声が今日も聞こえてくる。その中に、いつもとは違うため息の音。どもからだろう。
「ファレオン、ルナ、ため息の声が聞こえたから私ちょっと行ってみるね!!もしかしたら困っている人がいるのかもしれないし!!」
私は言った。
『俺たちも行く。』
二人は当たり前のように言った。
「人数は多いに越したことないだろ!」
ファレオンがニコッと笑って言った。
ため息のもとはどうやら神殿みたいだった。白い外観に茶色くて古そうなドア。いかにもって感じ。
「ここって入ってもおばけとかでないよね?」
私は二人に問いかける。ファレオンはブルっと体を震わし、知的なルナは
「お化けは人間が作った空想のものだから大丈夫だと思うよ。」
と言う。私は古いドアをギィッと音を立てて開けた。中には誰もいない。でも確かに声が聞こえる。
「世界…分けた? 争いが…? 仕方がなかった…? もう二度と…?」
私はかすかに聞こえた声をつなげてみるけれどよくわからない。
「ため息をしたのは誰なんだ?」
ファレオンが首をかしげて聞いてくる。
「それが、わからないの。声もかすかにしか聞こえないし…」
私がそういうとルナが
「本人にだれなのか聞いてみれば?」
と言った。確かにそのほうが早そう…
「ねぇ、あなたは誰?どこにいるの?困っているなら力になるから、何があったのか教えて。」
神殿内に私の声が響く。数秒後、かすかな声が、上のほうから聞こえる。
『お主には私の声が聞こえるのか⁉私は困っているのではなく後悔しているだけだ。遠い昔の後悔を。』
私は上を見上げた。しかし誰もいない。
「あなたは誰なの?私にその後悔を解決することってできる?」
私の声はまた神殿の中に響く。
『しいて言うなら私は神。後悔は君に解決できるものではないと思う。私の願いはただ一つ。また昔のように、全ての人間が仲良く暮らすことだよ…』
その言葉を最後に私にその声は聞こえなくなった。
「今の聞こえた!?」
私は二人に問いかける。ファレオンは
「何にも聞こえなかったぞ」
と言い、ルナも首を横に振る。
「ラシーには何が聞こえたの?」
とルナが聞いた。私は二人に出来事を説明した。
「う~ん…よくわかんねぇ」
ファレオンは頭を抱えて言った。ルナは
「興味深いな」
とつぶやく。
「神様は遠い昔のことについて話していたんだよね?だったら明日、図書館に行って何か手掛かりがないか調べてみよう。どうせ、ラシーフェのことだから力になりたいんだろ?」
ルナが言った。私は、
「うん!」
と大きな声で返事をした。
次回 町の大図書館へ