世界は昔・・・
世界は昔、一つの大陸だった。様々な民族が仲良く暮らしていた。みんなで食べ物を分け合い、困っている人がいれば助けて、寒い日は暖かい火をたいた。その姿はまるで、人類全員が家族のようだった。神様はその姿を見て、人間の生活を便利にしてあげたいと思い、人々に魔法をさずけた。一人一つの魔法を。人々は喜び、暮らしを豊かにするために、魔法をつかった。水が飲みたくなれば、水の魔法使いのもとに、焚火を起こしたければ火の魔法使いのもとに頼みに行った。やがて、生活するために必要な魔法、つまり生活魔法が使えるものはもとめられ、使えないものは仲間外れにされるようになった。人々の不満は、長い年月とともに上昇していき、やがて争いがおこった。人々は、暮らしを豊かにするためにもらった魔法を他人を傷つけるために使うようになった。木の実が落ちていれば、我先にと飛び出し、困っているものがいれば、何もせず哀れみの視線を向け、寒い日はひとりで温まった。血族以外は赤の他人と言わんばかりだった。それを見かねた神様は、大陸を複数に分けた。生活魔法をつかえるものは魔法の種類ごとに。使えないものは一緒にした。数千年もすると、次第に人々はほかの大陸のものの存在を忘れ、自分の大陸だけが世界にあると思うようになった。それもそのはず。大陸の海岸から遠くを見つめても、島一つないのだから。神様は世界を大きくして、二度と争いが起きないようにした。
生活魔法が使えない大陸、フィーノでは1人の少女が海を見つめていた・・・