第二章『その鉄の血はあまりにも冷たく』
目が覚める、辺りは暗いが遠くから人の声が聞こえてくる
あれ?今日は何かお祭りでもしているのかな、良いなぁ。
なんて思っているととてつもない轟音が鳴り響き地面が揺れ、悲鳴が聞こえたので暗い場所からよたよたと歩き市街地に赴くと突然明るかった筈の地面が暗闇に覆われて、太陽の光が遮られた。
上を見上げると恐ろしく大きく所々に血の様な紋様が蠢いているドラゴンが上空で滞空していた。
「わぁ……」
そのドラゴンは力を全身に体現しているかのように凛々しく雄々しく、そして破壊のみにしか特化していないかのような魔力を纏い、6の目を持ち、四枚の禍々しい翼を広げ名前があるとするならば呼ぶ事すら恐れ多く気絶してしまいそうなほどの殺気を撒き散らしていた。
「良いなぁ……」
両親が大きな商売をしており、10の時まではそこまで豪勢な過ごしをしていなかったが平民にしては何不自由なく過ごしていた、両親の秘書をしていた男が裏切り家を破滅させた時までは。
10の時、秘書の男が全ての品物を壊し金を持ち去り火をつけ全てが燃え尽きた、両親は私を突き飛ばして助けてくれたが巻き込まれ、生前の顔が思い出せないほどに焦げつき醜い姿となっていた。
その後私は身寄りが無く、孤児院に預けられるはずだったが奴隷商に売られ一時はどうなるかと思っていたが上手く抜け出す事が出来て幸いにもまだ焼印をされていなかったのでスラム街で飢えなどを堪え、市街地に出ては使えそうな物品を小物店へ売り固い黒パンを食べては市街地で遊んでいる同じ歳の子を羨ましく見つめていた。
いつも同じ暮らしをしていたが、黒パンを食べているのをスラム街の奴らに見つかり襲われ全て奪われてしまった、唯一安堵したのは純潔をまだ保てた事だろう。
反抗する力も無く学ぶ場所すら無いこの場所で彷徨い生きる事に疑問を抱き続け、今にいたる。
何回も死にかけ差別され泥水を啜りながらも這いながら生きている事に絶望しながら灰色となった視界、辟易しながら嗚咽し血反吐を吐き出し蹲り寝るのが日常だ。
「欲しい、欲しい」
気がつけば周りから人がいなくなり私だけになっていたが気にせずにドラゴンに届かないのを知りながらも手を伸ばす、その余りある力と絶対に許す事が無いと思わせる狂気があまりにも魅力に満ちて、その狂気を欲した。
ドラゴンの頭は私の方向に向き、目は品定めするかのように細ばめ徐々に近づくために降りてくる。
完全に頭しか見えなくなるほど近づいて着地し、辺りの建造物を潰しているのを気にしてないかのように溜め息をした、そのため息は恐ろしい程の血の匂いだった、怨念と恨み、悲鳴や絶望を感じさせ、喰らったもの達が今も叫び続けているのを感じる。
「ふむ、良い魔力の質だな」