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「ん…?」
どうやら目が覚めたらしい、上と下を確認した後に両手を握ったり開いたりしている。
「やっと起きたか、どう?その体」
「ふん……悪くない、この魔力の性質なら形状変化にも対応出来そうだ」
『狂存』こいつとは古い仲だ、2番目に生み出された時は色々と教えたな、全ての種族と生命の特性や習性を教えていた事を思い出す。
「やっと起きたか『狂存』」
「久しぶりの再開だな『司狂』」
『狂存』はアルファドの隣にある席に移動し座る、目の前にあるフォークやスプーンを見た後こちらに顔を向けて期待する様な目で奥にあるシチューやその他の料理を見ている。
「もう少ししたら出来る、そう期待した目をするな、味が微妙に分からないから合うのか分からない」
「腹が空いているだけだ、食えるだけマシだな」
出来上がった後に三人で料理を食べ終えた時、遠くから松明の光が見えたので移動する事になった。
「大体の事情は把握したが、抱き枕にされた事に関しては恥だ」
これまでの経緯を説明した後になにやら喋っていたが無視して全身の魔力回路を起動する。
「『時狂』少し時間を稼いでくれ、まだこの体全体に魔術回路を回せていない」
「いや、しなくて良いよクシェル、俺が代わりに時間を稼ぐよ……体が鈍ってないか確認してくる」
そう言った後にアルファドの全身が炎で包まれ、やがて炎は固形化したのかはたまたまだ包んでいるだけなのか理解出来ない形状に変化して鎧と化した。
「熱いです、離れてください」
そう呟いた瞬間に目の前からアルファドが消えて遠くから火柱が登りこちらまで熱波が襲う。
「やり過ぎだ、まるで砂漠にいるのかと一瞬誤認してしまったではないか」
「爆心地には行かない方が良いな、悲惨な事になっているに違いない」
お互い内心冷や汗をかきながら数度に渡ってくる熱波を感じながら待機していると、どうやら全身に魔術回路を回す事が完了したらしい。
「よし出来たな、いつでも行けるぞ」
そう言うと家から外に出て離れていろと伝えてきたので外に出て遠くで待機する。
「よし、『コピー』」
そう言った瞬間にケニーの体は歪に変化していき、同時にあり得ないほどに肥大化していく、そして羽や脚と思われる一部が生えてきてやがて1匹の竜に変化した。
「アルメドール……懐かしいものを」
その竜の姿はかつては世界の9割を壊滅させた[始祖]を冠する名を持つ『アルメドール』だった、まだ行方をくらませているらしく死亡確認はされていないが、伝記では全大陸の国が手を取り合い平和を願って挑み勝利したとされている。
「ふん、あいつは今の所は帝国で隠居と知らせを念波で飛ばしてきた、また会える」
少し驚きながらも巨大な背中に飛び乗り、頭まで行き座る。
「兄様の回収を頼む」
「ふ、その呼び方は笑えるな、おい殺気を放つな悪かったから」
ふざけた事を言っていた様だが聞こえていないので無視しながら空を見ると太陽が真上になっている、どうやら魔の森は中々光が入らないぐらいに密集しているらしい、松明を使う理由が分かったが魔術回路で肉体強化していた為に必要が無かった事を考えるとこの先では魔の森で松明は使用しなくて良さそうだ。
「あそこか、随分と派手にやったな」
そう言ったのが気になり下を見ると、広大な範囲の地面が融解しているのか所々融けたり謎の塊を作っていたりと悲惨な状態になっていた。
下を見るのをやめた後に座ると後ろから抱えられた。
「お疲れ様です、兄様」
「そこまで疲れては無い」
「おい、一気に飛ぶぞ、衝撃に備えておけ」
そう一言こちらに声をかけるともう2枚の羽をはためかせ一気に加速した、何回か大きな音が鳴り響くのを聞きながら体をアルファドに預けて『予知』で道が変わっていないか確認すると5個のうち2つが消えていた。