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目が覚めた、どうやら夢を見ていたようだ、昔、アルファドが生きていた時の記憶だ、いやに懐かしいものを夢で見たものだ
「ここの辺りにいるはずだ!リシア家殺しを探せ!」
また騒がしい奴らがあの屑供の敵討ちをしようと喚き散らしながら近づいて来てる、いや正確に言えばアルファドは人差し指にしている指輪に封印したから死んではいないが……。
少しだけ近づいてくるまで時間があるので記憶を振り返る。
「……どういう事ですか父様、アルファド兄様を生贄にするとは」
「ふん、カシュペリドを召喚する為の道具だからな、あいつも使命を果たせて喜ばしいだろうな」
「そのわりには随分と強引な方法で拘束しましたね?」
装置に繋がれても暴れるアルファドを遠目から確認しながら問い詰める。
「お前も道具なんだからな?クシェル、道具は黙っていろ」
首筋に剣を押し当てられたので溜息を吐いた後、頭の中に流れてきた本のページを見ると全てでは無いが9割を解読し終えたのを確認したので残らず発動する。
『千里の目よ』
小さくその能力を発動する為に必要な詠唱を呟き使用する。
『予知』それが解読し終えた能力の一つ
瞬時にスローモーションの様に周りが遅くなり目の前に無数の『未来』が見える、1秒経つ毎に変化して行きどの『未来』まで行くのかを判断しなければならないらしいが今は深く考える暇が無い、とりあえず仮定として見定めた『未来』の結果を確認し終えた。
『装置によって魔力暴走を引き起こし肉体が崩壊する』
何故かアルファドが気に入っていたので助ける事にする、いなくなると想像すると胸が軋む感覚がして不快なので助けるしか無いだろう。
『予知』を使用後は別能力発動まで時間がかかるがどうやら再発動までの時間が来たらしい。
『クロックアップ』
呟き発動した瞬間辺りの景色が灰色の様に色が抜け落ちる
どうやらこの世界全体の時間の流れを強制的に速くして別の時間の流れで行動出来るらしい、剣を押し当てて来た屑の胸を抉り抜きアルファドが捕らえられている装置まで近寄る、近くに行くまでにいる奴ら全員を抉り抜くか跳ね飛ばし、首を吹き飛ばしながら近くまで来たので解除する。
「?!!」
「ぁ」
「ぽぴょ」
「カヒ」
とそれ以上の悲鳴にならない声を無視して装置を能力を発動させながら破壊する。
『アクセラレーション』
能力を発動しながらアルファドに付けてもらった全身の魔術回路に魔素と魔力を流し起動する。
装置を殴る瞬間音が無くなり何も変わらない装置を雑に振り払うととてつもない音を響かせながら粉々に砕け散る。
「何してるんですか?兄様、被虐体質にでもなりました?」
「その言葉はまた後で言及する、とりあえずここから逃げなきゃいけない……けど俺は無理そうだ、体が魔力の暴走に耐えきれずに崩壊しかけてる」
「えぇ知ってますよ、だからこれを使います」
体がひび割れ始め、赤い亀裂が顔に入り始めたアルファドに、少し前に王城の研究室でアルファドとふざけながらも議論し合いながら作り上げた指輪の一つを人差し指に付けて見せる。
「はは、早速それの出番か、まるでクシェルは未来でも見えているみたいな周到性だ」
「見えてますからね、作っておいて良かったです」
『特異封印の指輪』
崩壊もしくは消滅寸前の対象を封印し力に変える指輪、主にアルファドの能力が大半を占めて作られた兵器にもなり得る災厄の指輪だが、対象を崩壊や消滅から遠ざける事が出来る救済の指輪とも捉えれる。
「えっと……痛く無いよな?これ」
「……試しておいたら良かったですね?」
ハハ、と苦笑いをしながら指輪に封印されたアルファドを見終わった後部屋に入ってきた兵士を全員殺戮する為立ち上がり歩き始める。
「止まれ!私はこの国の王女であるミーシャ・アーダインだ、貴女を拘束する、そこから一歩も動くな!」
初陣なのだろう、やけに綺麗な鎧と周りの近衛兵の数だ、舐められたものだな。
近づいて来る瞬間に『クロックアップ』を呟き発動する。
首を吹き飛ばし、頭を背骨ごと引き抜き、腹に穴を開け、胸を抉り抜きながら王女以外の全てを殺し終わり目の前に立つと能力を解除する、壁にぶち当たり弾け飛びシミになる者や頭だけでも目を瞬かせる者、下半身だけで歩く者など様々な反応を起こした後盛大に血飛沫が数秒後に噴き出し始めた。
「え……あ…え?」
綺麗な鎧が血に染まり、銀の髪が赤くなりながら何が起こったか理解出来ずに顔に飛び散った血を血で濡れた手で触り見た後。
「な、なんで」
腰が抜けたのか小刻みに震えながらへたり込んだので同じ目線になるように屈み込み、頭を掴むと目を合わせれるように少し荒く顔を向けさせるとまるで初めて暴力を受け理解出来ない犬みたいな表情と目でこちらを見た。
「ふむ、まぁ良いか」
首筋に親指を突き刺すとーーー
何も分からないと表情で語る王女の頭を離すと出口まで『アクセラレーション』を発動し一気に駆け抜けて外に出ると帝国がある方向に向けて全力で走り抜ける。
しかし魔の森に入って数分で立ち止まり、膝をつき中から逆流してくる血を吐き出し、目から流れてくる血を確認しながら深い闇に落ちた。
ふむ、これ以上の記憶を思い出せないな、どうやら『クロックアップ』をいきなり多用したせいで記憶を欠如したどころか死にかけたらしい……未だに体の隅々が悲鳴をあげるかのように軋み、脳がずっと熱い水で煮詰められたかのように痛いが全身にある魔術回路を発動すると修復され始め保護されるのを確認した後、少し慣れている『アクセラレーション』を発動する。