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カシュペリド  作者: namakemono
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第一章『黒い光を取り込む者』

第1264年ハーネ期


私の名前はクシェル、王国で生まれた孤児だ、14になる

孤児になるまでの出来事はまぁのちのち思い出すとして今私の目の前には今から私の両親になる『リシア家』の現当主とその夫人である。

「はい……はい、クシェルは実に魔力操作が上手く教会の屋根の修復や火種を着けたり出来て、優しい子です」

今いる昔から住ませてもらっている教会の司祭はリシア家の二人に私をアピールしているが、別にしなくて良いと思うけれど拾ってくれた時から私を自分に子供がいないくせに我が子の様に接してくれるこの司祭は、どうしても私に幸せになってほしいらしい。

「この魔力の質は凄いわ、ねぇこの子はどうなの?」

そう言って夫人は私を見ながら夫である当主に話を振ると暫く当主は私の顔を見て目を閉じると、首を傾げながら司祭に問いかけた。

「ここまでの魔力制御は普通だと王国大学院で教わって出来るようになる筈だが、ここの教会は教育と言っても小学院程度だと聞いているが何故この子は出来ている?」

「独学で鍛錬しました」

私がそう答えると夫人は目を瞬かせ、当主は咄嗟に私の目を覗き込んできた、正直顔をそんなに見られるのは慣れていないので即刻やめてほしいが今はそんな事を言って良い場面ではないだろう、司祭にも何度か注意されている。

「……ふむ、余程優秀なのだろう良いな司祭、この子を養子にしよう」

「おぉ!本当ですか、今日この日を神に感謝します」

神の前に当主に感謝する所では無いのか?司祭

「これからよろしくね?えっと……」

「クシェルです、こちらこそ、これから世話になります」

夫人にそう答えた後からはトントン拍子に話は進み、手続きを済まし晴れて私はリシア家の子供になった。


「父様、ここがこれから住む私の家ですか?」

「ああ、お前がこれから住む家だ、『道具』」

司祭からは優しい人物だと言われているがこの男は私を道具として引き取る事を前提に脅しをしていたらしい、表面に出さない様に面談はほのぼのしていたが決定してからはずっとこの有様だ。

「ちょっと、この子にそう言っては駄目じゃない」

母親になった夫人は平民の出で私を心配して優しく接してくれているから、なんとも絶妙な空気だ。

「今からお前の家族になる子供を紹介する、お前と違って純粋な英才教育で育った優秀な子供達だ」

「凄いですね、小さな時から教育しているなんて」

「ふん、安い世辞だな」

それはそうだろう、いきなり自慢されても困るというものだ、まぁそれ程自慢の子供なのだろう。

そう考えながら屋敷に入ると誰かが私に対して魔法を使おうとしている気配を感じた。

『風よ貫け ウインドランス』

簡易詠唱で魔法を使ってくるとは思っていなかったが、とりあえず危ないので避けなければならない。

『ーーー』

小さく呟きながら少し横に避けると、魔法は一瞬だが止まったかの様に遅くなり丁度私が立っていた場所を通り抜け、門に当たり少し窪ませた。

「凄い歓迎の仕方ですね、父様」

「紹介しよう、次男のガイデだ」

そう言い少し遠くの扉にいる男を指差し紹介すると、その男は少し早足だが気品のある佇まいで近寄ってくる。

「これからよろしくね、クシェル?だっけ」

「はい、クシェルです、これからよろしくお願いします」

顔を見上げると端正な顔立ちの青年だったようで、少し驚いたが気にせずに問いかけることにした。

「さっきの簡易詠唱はやはり王国大学院で教わったのですか?」

「ちょっとクシェル、どういう事?ガイデが何か魔法を使ったの?」

「それは後で教えてあげるよ、それより父様、母上がお疲れのようです」

「ちょっとガイデ?」

そう青年が言うと父様がメイドを呼び母親が自室に連れて行かれた、まぁ邪魔だったのだろう、なんとなく察した。

「ガイデ、あいつはどこにいる?」

「アルファド兄さんですか?兄さんならもうすぐで王城から帰り着く筈ですよ」

「そうか、なら先にダイニングルームで待っておこう」


暫くダイニングルームで座って待っているが、中々来ないのでメイドに頼み適当に魔法学科の教科書を見してもらいながら時間を過ごしていると屋敷全体が異質な魔力で覆われるのを感じ、顔を上げダイニングルームの扉を見ると扉が開くと端正どころか神に作られたかの様な顔をした男性が入ってきた。

「遅くなりました、申し訳ございません」

「いや、良い…王子と話していたのだろう?」

「はい、相談事にのっていました」

どうやら件の長男らしい、後光が出ている程眩しい笑顔で嬉しそうに父親に話しかけている、その父親は真顔で聞き流している感じだが気にしていないようだ。

「あ、この子が養子ですか?」

チラッと顔を見た後に父親に問いかけている

「あぁ……そうだ」

「クシェルです、これからよろしくお願いします」

「……うん!これからよろしくね」

少し驚いた顔をしたが少し顔を笑顔に戻した、何か顔に付いていたのだろうか?まぁ気にしないでおこう

「アルファド、もうすぐ夕飯時だからアネマを呼んできてくれないか?今機嫌が悪いからお前にしか会わないだろう」

「母上が?分かりました、呼んできます」

不思議そうに言ってダイニングルームから出たのを確認すると父親が話しかけてきた。

「あれが長男で私の最高傑作だ、凄い魔力の質だろう?」

「魔術回路……ですか?あの魔力の強さは」

ふむ、さっきまで読んでいた教科書に載っていたが生身に使う様なものでは無い筈だが………どうやら生身にも使えるらしい、知らない事はまだあるものだ。

「そうだ、リシア家は王国随一の魔術回路設計術士の家柄だからな、お前にも覚えてもらうからな?『道具』」

ふむ、魔術回路か……覚えたらあの本に書いてる物の全てが読めるようになるのだろうか。


あれは確か10の辺りか、両親に連れられて遺跡を見せてもらった時に魔物に襲われ両親が倒したが戦闘の影響で遺跡が崩落、地面に飲み込まれ両親はあっさりと岩に潰されてミンチになり目の前に落ちて来たがそんな事より私は落ちた先にあった小さな私には大きく感じる本が置かれた祭壇に目を引かれた、正直自分でも引きそうになるのだがその時は両親のミンチより祭壇に目を引かれ近づいた、暗いはずなのにハッキリと見えるその祭壇は不思議な黒い光に包まれていた、祀られている本に触れると光は私の体にスッと入り中で暴れ狂い始めた。

目が覚めると本は無く左目に違和感があるが特に異常は無く、逆に多幸感に溢れて視界と頭の中が綺麗になっていた

本がない事に疑問を抱いていると記憶の中に本の中身であろう事が不思議なことに覚えており、早速私は本の中身を読み進めたが…案の定分からず唸っていると一部の文だけはどうやら解読されているのかギリギリ理解出来る文字で書かれており使用方法も確認出来た、どうやら魔素と魔力を左目に集める事で対象の動きを速めたり遅くしたり出来る様だが、ほんの一瞬しか効果が無いらしい。

その事を確認したらミンチになった両親の所にあった長剣と短剣を持って短剣の方を勢いよく投げてみたが、10歳で非力でしかも女である私が勢いよく投げた所でポーンっとふざくた音が聞こえそうな程の距離と勢いでしか投げれず、少し悲しくはなったが今の要領じゃ無理だと認識出来たため少しやり方を変えて解読されてあったとおりの名を呟いて投げた。

『タイムラグ』

速く投げたいと思いながら左目に魔力と魔素を集め投げると短剣は壁に「めり込んだ」……そう、バターの様に刺さるや突き刺さるでは無く、「めり込んだ」

無理矢理あり得ない速度と力で壁に接触した為か突き刺さるのでは無く「めり込んだ」らしい、どうやら当たる瞬間に発動したらしく壁の周りがヒビだらけでボロボロになっていた、壁に近づきギリギリ出ている柄を握り引き抜こうとするが微動だにしなかった。

次は長剣を振りかぶり勢いよく壁を斬るが弾かれた、ここまでは予想出来たので驚かないが次また使いながら斬りつけると「めり込み」ながら斬れた、正直自分の体を心配した、普通なら体が潰れても良いぐらいの速度で斬りつけたと思うため自分の二の腕を確認するが異常は無く普通だったが、長剣の方を見ると柄だけが手に残っており刃の部分はボロボロになっていたのを確認して自分の体では到底耐えられ無い力を感じ喜んだ、その一方で私はこの空間からどう出ようかと考えたが良い考えは浮かばなかった。

困り果てた時に壁が崩れ始めたので慌てて離れて崩れた先に空間がある事を確認したので近づいて見てみるとどうやら階段が上に続いているらしい、明かりが無いので少し気をつけながら上がり行き止まりのところにある扉を開き遺跡を出ると辺り一面死体だらけだったが気にせず歩き街に戻ったのだが証明する物がなく孤児となり教会に預けられた、街であの遺跡で起きた事を聞いてみると、どうやらトレイン(大量の魔物が出れない筈の遺跡や迷宮を飛び出して辺りを襲う)が突然発生して街までは冒険者や騎士達が出向いた為来ることは無かったが、強力な魔物まで発生していたから被害も凄かったらしい。

その話を聞きながら目の前に置かれたシチューを食べ、白パンを口に入れ食い終わったので食器をキッチンに置き水につけて自室に戻り本の中身を解読しようと教会にある本を見ていたが解読出来ない日々が続いた、その日々に辟易した瞬間に養子の話が来た訳だ。

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