64話 潜入作戦
お久しぶりです。しばらく、別作品の完結に勤しんでいた為、投稿が空いてしまいました。
これからよろしくお願いいたします。
「止まれ」
衛兵の言葉が紫炎の歩みを止めた。この場にいるのは紫炎ただ一人である。その腰には黒煉すら差しておらず、丸腰であった。
「ステータスの開示を求める」
「ほれ」
ステータスと念じるとその場には紫炎のステータスが映し出される。最も、偽造した偽物のステータスではあるが。
「うむ。冒険者か·····通行料を」
「はいはい」
淡々と、流れるように手順を踏む紫炎。
「ようこそ、クレファンスへ」
衛兵が門を開けるため、一瞬振り向いた所を一撃。衛兵は気絶した。
「おっと、音を出す訳にはいかんからな」
ステータスという概念を超えたスピードで紫炎は衛兵を抱き抱えると、衛兵の服装に着替えた。
「よし、作戦開始だ」
魔法で衛兵と同じ、狐耳を生やすと紫炎は駆けた。
数十分前──
「クレファンスに乗り込む前に作戦を伝えとく」
紫炎の言葉に全員が耳を傾ける。
「ユグとシルは精霊界で俺からの信号を待ってくれ」
「「了解 (なの)」」
「サティとクレン。そして黒煉はそれぞれ王城に乗り込んでくれ」
「でも、バレるかもしれないよ?」
サティの指摘に、紫炎は待ってましたと言わんばかりに返す。
「それは俺が何とかする」
「何とかって·····」
「俺が兵士に扮して、王城に潜入し、騒ぎを起こす。その隙に王城内部に潜入してくれ」
「それだとマスターが犯罪者に──」
「仮面でも付けるさ。まだ、俺の存在を世界的にする訳にはいかない。王国は何とかなったとして、クレファンスまで顔が割れたら、何かと不自由だからな」
黒煉の沈黙を了解と察し、紫炎は続け様に言う。
「潜入する手口はわかったと思う。それでだ。今回の潜入で手に入れるのはクレファンスが何を望んでいるのか、クレンは村の真実と友達の生死について調べてこい。それまでの時間稼ぎは任せろ」
「マスター。私が二人に同行する理由はなんでございましょう」
「まだクレンはこの手に慣れていない。出来る限りのサポートをお願いしたい。もちろん、戦闘のサポートではなく、潜入の方のな」
「了解しました」
ある程度の作戦を伝えた紫炎は満足そうに頷く。
「じゃあ頼むぞ」
紫炎の目の前にはクーヴァ王国の王城とは外見が大きく異なるクレファンスの王城が聳え立っていた。
今頃、サティたちは紫炎の時間稼ぎを待っている頃だろう。
「門前に怪しい輩が居たため、騎士団に報告しに来ました!」
紫炎は敬礼をしながら、門番の兵士たちに向けそう言い放った。
「わかった。騎士団は今鍛錬している。邪魔しないようにな」
「はい!」
元気溢れる好青年のような返事に兵士は満足そうに頷き、門を開いた。
門を超えれば、紫炎は不敵な笑みを浮かべ、衛兵の服装を脱ぎ、いつものロングコートとはまた違うお手製のフード付きロングコートを羽織る。
「さぁ、始めようか」
フードを被り、紫炎は仮面を付けた。それは素朴なデザインで魔法で認識阻害を付加している。
仮面をつけ終わり、紫炎は空中に駆けた。
「さぁ、初っ端から巨大なのをいこうか!」
高々と掲げた人差し指を勢いよく振り下ろすと指先から黒き稲妻が走る。それは光速で門にへと突き刺さり、遅れて音が響き渡った。
「時間稼ぎの始まりだ」
投稿ペースとしては週一を目処にやっていきます。今週は日曜日に投稿予定です。
全話までの改稿も同時進行で行っていくため、週一が出来ない時もありますが、予めご了承ください。




