57話 錬金魔法<錬成>
さて、サティの婚約者を決める対決にあたり、紫炎は特に準備することも無く無駄に大きいベッドの上でゴロゴロしていた。
別段竜人の男に恐怖や警戒もないので、訪れる当日まで暇を持て余しているのだ。
そんな紫炎は今ゴロゴロしながら煩悩と戦っていた。
(欲情したらダメだ!)
昨夜、クロリアにここを紹介されさて寝るかとベッドにゴロンと横になれば、さも当然かのように黒煉とサミリアが両隣を占領し、ぐぬぬと唸ったクレン、ユグ、シルは仕方なく紫炎の上で寝た。
考えれば考えるほど紫炎は何故? と首をかしげるが慣れてくれば可愛いものだ。
子供がじゃれてくるかのように思えて。
しかし、今回は話が違かった。
この世界に来てから数えてないが、そろそろ半年となる。その間美少女と共にいるのだからある程度の耐性はついたが、まだ女の肌には耐性がない。
故に寝返りを打てば黒煉の胸が、別の方はサミリアの胸が、上体を起こせば幼女の体が全てが紫炎にとって敵だった。
普段は別段気にしていないのだが、場所が問題だった。
少なからずラブホ。故に意識をしてしまう。本来の用途を·····。
そんな一夜を過ごし、彼は未だに煩悩と戦っていた。
幼女でも立派な女の子、柔らかいところは柔らかいのだ。
そんな紫炎に歩みを進める女の子が一人。ユグだ。
「ちょっとシエン! 何をやってるの?」
「いやちょっと強敵とな·····」
「·····? そんなことよりもアレはまだ?」
ユグのアレが分からず困惑する紫炎。
「アクセサリーよ!」
そんな紫炎に怒り半分羞恥半分で怒鳴るユグ。
「ああ·····そう言えば」
王都で買い物をした時にその話を·····よく覚えていたなとユグの頭を撫でる。
「ふふふっ··········じゃなくて!」
あまりの気持ちよさに目を細め、堪能していたユグは正気を取り戻し首を左右に振る。
女性陣もそうだが、紫炎も大概だろう。天然のたらしが! と第三者は言うかもしれないが気にせず、紫炎は王都の一件の礼としてグレスから貰った宝石を取り出す。
「よしっ、じゃあ作るか!」
宝石を幾つか取り出し、錬金魔法<錬成>を発動。
「ユグは何がほしい?」
「·····指輪」
「私は腕輪がほしいの!」
「私は·····ネックレスがほしい」
幼女三人組の意見を聞いたところで紫炎はイメージを固める。
指輪·····と言えば婚約とか結婚指輪しか思い出せない。
そもそも女の子のほしいグッズなど宝石の類は一切感心がなかったので紫炎として頭を悩ましたが、とりあえずユグの指輪はシンプルなデザインにした。
銀の指輪に、小さな真紅の宝石を組み込んだだけという感じになったが、ユグとしては大切な主からの贈り物ということで文句は一つもなかった。
次に取り掛かったのが腕輪。
当然デザインもクソもない。だって知らないのだから·····しかし約束した手前断れずに必死に考えた結果。
黒の腕輪に金で縁をカラーリングし、金と金に挟まれた黒の部分にこれまた金で模様を描いたものとなった。
最後にネックレスだ。
これに関してはやりようがないが、しかし可愛いクレンの頼みで約束だ。
紫炎は必死にイメージを繰り返し·····
結果、銀を基本としたチェーンの先に十字架を付けたという何とも微妙な仕上がりとなってしまった。
これに関しては勉強不足だった紫炎のせいということもあり、紫炎はお詫びとして頭を撫でることにした。
「にゃふっ」
嬉しそうに目を細め、猫耳をピコピコさせて全体的に喜びを露わにするクレンに安堵する紫炎。
まぁこんなことをせずともクレンとして紫炎からの贈り物が嬉しいのであってネックレスはどうでも良かったのだが、これは内緒である。
「そんな気持ちいいか?」
「にゃふぅ、もちにょん」
気持ちよすぎて言語すらハッキリにしないクレンに苦笑しつつ、構ってほしそうなユグやシルを呼び抱っこと頭を撫でることにした。
テスタの奴はまた今度あいつに聞いてからにしようと決め、幼女たちを全力で撫でることに専念した紫炎であった。




