56話 竜人の里 3
「それは何故だ?」
呆れと怒りが半々と言ったところか。クロリアの言葉に紫炎は真っ直ぐ言い返す。
「クロリアの警告は分かった。だが、俺のことは俺が決める」
「死ぬのに、なぜ貴様はイキる?」
「誰が死ぬと決めた?」
「どういうことだ?」
「確かにお前ら竜人は戦いの末敗戦した。しかし、お前ら竜人と俺らを同じにするな」
「それは我らに対する侮辱か?」
ピクリと眉を動かし、クロリアはあからさまに怒気を表す。
サティも頬を膨らまし、いかにも怒ってます。というオーラを出す。
そんな二人に苦笑しながら紫炎が「悪い」と説明する。
「そういうつもりじゃない。それを言うならお前らほうだろう?」
「ほう。どの辺でそう思った?」
「お前は俺らの何を知っている?」
「ふむ。確かにお前らの実力は知らない。シルファー様のお弟子さんということしか知らないからな·····」
顎に手を当て、考えた末クロリアは提案する。
「ならば、三日後にサティの婚約が予定されている」
「ちょっ、お父さん!?」
そんなの聞いていないと言わんばかりに驚くサティ。そんなサティを諌め、クロリアが説明する。
「小僧。入る時に会ったあの男を覚えているか?」
「あぁ」
「そいつが婚約者候補だ。他にも候補者は五人いる。そいつらを――」
「倒せか?」
「そうだ。全員この竜人の里の選りすぐりの強者ばかりだ。最初はそいつらの中で勝った者をサティの婚約者にする予定だったが、そこまで言うなら私や婚約者候補からサティを奪ってみろ」
その提案に紫炎は不敵な笑みを浮かべる。
その笑みにサティの頬は紅潮するがどうやら紫炎は気づいていないようだ。
「殺していいのか?」
「ふふっ、別に構わないがして後悔するのはお前だぞ?」
「だが、そいつらは俺に対し殺す気でくるんだろ?」
「そうだが、そのぐらい対処出来ない奴が国をひっくり返せるか?」
「それも、そうだな」
「そしてこの戦いに辺りルールを決める。一つ、精霊魔法の類は禁止、二つ、武器は認めよう。三つ、小僧、貴様対六人の戦いだ」
その言葉にサティが反応する。
「ちょっとそれってなくない?」
「小僧はこれからそのレベルの奴らと戦うのだ。六人ってだけで優しいだろ?」
「分かった。それでいい」
「でも――」
「サティ大丈夫だ。負けないからな」
再び頬が熱くなるサティ。
「では、そういう事だ。貴様らにはホテルを取っておいた。そこで三日後まで体を休めておけ」
◆◆◆
クロリアが言っていたホテルに到着した。
紫炎に対しいい思いを抱いていないクロリアのことだから不安だったが、杞憂だった。
「すげぇ豪華じゃねぇか」
相変わらずのラブホだったが、しかし室内はしっかりと高級ホテルさながらの豪華さであった。
ベットだってこんなに大きく·····ん?
「あれ?」
後ろにいる女性陣。
黒煉、サミリア、ユグ、シル、クレン。
「なぁ、お前らの部屋ってある?」
「「「「「いいえ (ないの)」」」」」
困惑する紫炎に代表で黒煉が説明する。
「私たちが頼みました」
「道理で·····」
紫炎は去り際のクロリアの顔を思い出す。殺気がギンギンと放たれていたのはこれのせいだったのか。納得がいった紫炎は自然とため息が出る。
そして、四つん這いとなり絶望したのだった。
(また溜まっていく·····)
そんな紫炎に女性陣は全員がニコニコと笑みを向けていたのだった。
男子高校生に美少女は時に毒なのですよ。




