53話 呪いの祠
「ようやく着いた」
ゼェハァと肩を上下に揺らし、五時間という長い時間を要し到達した目的地に歓喜のあまり涙を流す。
溜まりに溜まったものを出そうとしたがしかし、発散するどころか溜まってしまった紫炎にとっては解放された事に喜ぶしかない。
「マスター、計画もなしにラヴァンに来ましたけど最初は何をするんですか?」
紫炎が涙を流す要因となった黒煉が何事も無かったようにケロっとした感じで紫炎に問う
「どうするかな、とりあえず呪いの祠とやらに行こうか」
かつてクレンが語ってくれた話を思い出し、呪いの装備とやらがあったという祠に行こうと足を動かす。
「というわけで、クレン案内よろしくな」
「まかせてシエン様」
胸を張りドンっと自信満々にクレンが頷く。
その様子に無意識に笑顔がこぼれる。
(どうやら大丈夫なようだな)
自分の両親を奪った国に着き、どこか心配な要素があったが見る限り大丈夫そうなクレンにホッと息をつき、そういえばと話す。
「竜人の里もここだっけ?」
「はい、マスターの言う通り竜人の里もクレファンスから離れた山奥にございます」
今となってはいい思い出となるサティを思い出し、復讐前にでもよろうとプランを組み、これから起こるであろうラヴァンでの出来事に期待を込めながらクレンにへとついていくのであった
◆◆◆
王都クレファンスの外れ、スペルの村跡地――
「ここがそうなのか」
傍らにいるクレンに聞くと、コクンと力なく頷く。
「酷いですね」
サミリアの言う通り、眼前に広がる光景は酷いものだった。
時間も経っているだろうに、まるでその時、この場所にいると錯覚する程に何も手をつけられていない。
無数の死体は白骨化が進んでおり、腐食している者もいる。家などは全焼しており跡形もない。
「呪いの祠はこっち」
クレンに案内されスペルの村から数分という時間を要し、呪いの祠と呼ばれる所まできた。
近くには神社に近い建築物があるがしかし、それも全焼しており、恐らく神主だろう男性の死体が転がっている。
「うそ·····ラエは?」
クレンが呆然とその光景を見て呟く。
「おい、ラエって誰だ?」
「この神社の巫女」
過去に語ったクレンの話に確か、巫女さんがいるということを聞いていた紫炎はラエとその巫女が同一人物であると見て、話す。
「ということはラヴァンはラエって奴が目的だったのか?」
しかし、この仮説にはある致命的な点があった。
それは、捕まったのならどうやってクレンを売ったのか? だ。
ラエという人物にお願いをして奴隷となったクレンが今なお奴隷として紫炎と共に行動しているのは、ラエが売ったからであろう。
だが、ラエが目的ならその事件の時には既に捕まっているはず、だからこそ今この場にラエの死体はない。
考えれば考えるほど困惑してくる頭をどうにか落ち着かせ、平静を装い、呪いの祠にへと足を踏み入れると空気が変わった。
「チッ! めんどくせぇな」
闇属性しか使えない紫炎にとってこの禍々しい邪気を飛ばす事が出来ない。仕方なしに契約精霊を召喚する。
「来い、ユグ、シル」
刹那、魔法陣が展開され人影が出現する。
「ふぁぁ、お兄ちゃん。どうしたの?」
「もう! 気持ちよく寝ていたのに」
船で寝てしまい、起きる素振りがない二人を精霊界にへと返していたのだが、まだ眠っていたとは苦笑するしかない。
「この空間全域にある邪気を祓って欲しい」
聖属性を使えない、紫炎はそんな二人に邪気を祓うために魔力を送る。
「分かったわよ、シル! 行くわよ」
「ラジャーなの」
二人で手を重ね、魔力を高める。
「「聖属性魔法<魔除け>」」
瞬間、光が瞬く間に広がり、邪気が祓われて行く。
「じゃあもう一眠りしてくるから」
「あとは任せたぜ、なの」
「おう、おやすみ」
そして二人が消えたあとを紫炎が突き進む。
「ここか·····」
少しばかり急いでこの場にへときたのには理由がある。
クレンを蝕んだ呪いの装備の有無を見に来たのだ。粗方の予想が出来た王国の目的を確認しに来たのだが、どうやら本当だったらしい。
「呪いの装備とやらが一つも無い·····」
王国が求めたものは呪いの装備だろう。しかし、巫女を攫った理由も、ましてやクレンが装備したと思われる呪いの装備すらも分からない。
本人曰く、触った瞬間意識を落としたと言っていたが、その呪いの装備が何なのかは忘れてしまったらしい。
「詰みか」
これ以上の思考を広げられない。目的が分かったところだけで相手を潰すのは面白くない。どうせなら化けの皮を剥がして、完全に相手をおとしめたいものだ。
クックックっと笑いをこぼすその姿は正しく魔王。
「とりあえず竜人の里だ。もしかしたら何かを知ってるかもしれないからな」
脳裏にサティを浮かばせ、よしっとみんなの所まで戻る紫炎。
明らかに殺気を漏らしているストーカーさんに気づいていることを知られないように細心の注意を払って




