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44話 S級試験 中編2

S級試験が終わる気がしない·····。今回諸事情で短めです。



「せいやッ! フッ」


凄まじい剣技と共に声を上げているのはゼロだ。上段からの振り下ろしからの横薙ぎ、確実に紫炎を追い詰める·····だが、今の紫炎つまり、<制限解除(リミッターカット)>状態の紫炎にはあまり意味の無い攻撃。


逆に、紫炎が『黒煉』で横薙ぎ後の隙を狙い突きを放つ。


「流石だねッ!」


それを、避け、お返しとばかりに同じ突きを放つが、それも紫炎に届く事は無かった。


この次元の戦いになると、もはや観客達は既に声を出すことも忘れ見ることに徹する。


いつの間にか戻った大臣含め、王族特別観客席が驚嘆と感動に包まれる。


「·····。はっ!?」


実況役であるバニーガールさんまでもが黙りその勝負の行方を見ている。若干空気になりつつあるムートはと言うと、既に場外へと吹き飛び、腕の痛みとあまりの凄まじさにそのまま突っ伏している。


「お前その歳でその強さはヤバいな」


そんな彼らを尻目に紫炎がゼロへ、素直な賞賛を贈る。正直、クレンにあんな事を言ってしまった手前言えないが、クレンの本気ですら勝てるか危ういぐらいだ。


「お褒めに預かり光栄だよシツさん」


そんな褒め言葉を素直に受け取るゼロ。こんな呑気な会話をしているが、現在闘技場では音しか残さないという現象が起こっている。それはひとえに彼らの人外なる力故である。


「シルッ!」


「やっと出番なの♪」


だが、そんな会話も長くは続かず、紫炎の魔法行使によってそれが終わりを告げた。


「喰らいなさい」


いつの間にかにゼロの後ろに回っていたユグが紫炎からシルへとそして受け取ったイメージを元に魔法を発動する。しかも無詠唱である。完全なる奇襲だ。


「グハッ! い、いつの間にッ!」


当然反応しきれなかったゼロがその魔法を喰らう。喰らった魔法は、光属性魔法 <光弓(ライトニングアロー)> 高速魔法の一つに数えられている魔法である。イメージはその名の通り光の矢。


だが、速さの代わりに威力が落ちるというのが欠点であるが·····。


「つうか、お前『魔人』って言う割に魔法使わないのな」


<光弓(ライトニングアロー)>の着弾を確認した紫炎が素朴な疑問を口にする。


「痛いところ突いてくるね。それに関しては才能だからなぁ。僕には魔法の才能が無くてね」


魔力量の話なのかと思った紫炎だったが、ステータスが関係無い今、それは関係無い話だろうと決定づけた。


では何故その様な才能が無いとゼロが言っていたのか·····。


それは魔力量があろうともイメージが出来なければ魔法は行使されない。ゼロが言った才能とはイメージの話だろう。紫炎が魔法を行使出来るのは地球での生活が主な原因だ。


「でもだからといって負ける気は無いよッ! 僕、早く口説きに行きたいからね」


どうやらまだ諦めてないみたいだ。十歳そこいらのガキが、ハーレムを築くとか言っているのだ、頭がおかしいだろう。


「てめぇにハーレムなんて作らせるかよッ!」


ほぼ私情が入っているその紫炎の怒鳴り声に少し肩を竦めさせるゼロ。そして安全圏で紫炎の言葉を聞いてその頬を紅潮させているクレン。だが、続く紫炎の声に二人とも紫炎に呆れる。


「俺もまだ作ってねぇのによッ!」


そしてこの言葉を聞いて、”今まで観る”に徹していた観客達が心の中で見事にハモった。すなわち、


”お前もう既にハーレムやん”


と、男女問わずこの戦いを観戦している全員が、声に出さずともその顔が語っている。


「お兄ちゃんは鈍感で無自覚なの?」


「さすがバカね」


ユグとシルさえも紫炎の傍らで呆れる。


「シツさん。あれって本気で言ってるんです?」


「だってシツってあんな奴じゃん」


「もう朴念仁が·····」


テスタとルファーが小声で話し合う。テスタに関しては、いつもの事ながらあの朴念仁をどうやって振り向かせるかを既に考え始めている。


若干シリアスが続いたと思ったら紫炎の一言で終わってしまったのであった。

詳細、前日、前夜、直前、前編、中編と来て中編2本当に申し訳ない。まとめようにも毎日投稿する為に時間の関係上そう上手くはいかず、いや言い訳ですね·····。すみませんm(_ _)m


誤字脱字、日本語の不自然な部分があればご報告下さい。

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