3話 国外追放
今回、短いです。
ゆっくりとその意識を覚醒させて行く·····。
紫炎が目を覚ました場所は、何処かの森であった。
周りには、木々が生い茂り、大小の石が転がる。傍から水の音が聞こえてくる。どうやら川も流れているようだ。
そんな森の中で、深く息を吸い込み、紫炎は溢れる怒りを発散させる。
「クソがッ! 絶対殺す。あの顔を絶望で歪めてやるッ!」
当然それだけでは収まらず、周りの木々にまで八つ当たりをする。殴る、殴る。そして殴る。既に拳からは血が滲み出ており、木のささくれや棘は痛々しくその拳に突き刺さる。しばらくして、発散しきったのか落ち着きを取り戻した紫炎が、冷静に現状を確認する。
(手持ちは無い。周りは木だけだな。いや川もあるか·····)
飲水に関しては、安心だが、肝心の食料は、不足いや確実に足りない。
(動物ぐらいいるか。そういや、こういうファンタジーな世界にはモンスターが鉄板だが、存在するのか?)
当分は食料である動物を探すと方針を決めたが、モンスターの存在が脳裏にチラつく。
(モンスターと言えば、ステータスの称号がどうとか響いていた気が·····)
冷静に色々と思い出した紫炎は、自分のステータスを確認する。そこには、
黒井 紫炎 16歳
職業 勇者?
称号 転移者 絶望シタ者 理不尽ヲ恨ミシ者
レベル1
攻撃 150
防御 150
抵抗 150
魔攻力 150
魔力量 150
能力 絶望
と表示されていた。
(称号が増えているな、ステータスが上がっている。魔力量は確か何をしても上がらなかったはずだ。しかも、新しく能力の項目が増えている? 『絶望』って何だ)
ステータスを見て真っ先に目に入ったのは、称号である。先程までは、『転移者』だけしか表示されてなかったが、新しい称号が増えていた。
(とりあえず、この称号とやらが知りたいな)
ステータスの使い方は、自分の実力を表示するだけで無く、自分の能力とかなら調べがつける。
能力 『絶望』称号『絶望シタ者』取得で、解放。
闇属性魔法を全て取得できる。
どうやら能力『絶望』は闇属性を使えられる物のようだ。
(だが、闇属性魔法ってなんだ? クソッここの世界の知識が圧倒的に足りない)
そして、称号については、
称号 『絶望シタ者』絶望を経験した者が完全に絶望し、前を向くことを諦めた者に贈られる称号
能力『絶望』を解放
称号 『理不尽ヲ恨メシ者』理不尽を突きつけられ、それに対し恨みを持つ者に贈られる称号
ステータス補正1.5倍
(なるほどな)
少し、疑問が残る部分があるが、当分は食料として動物を狩ることと、あわよくばレベルアップを目標にと森を進んでいく。
(情報として人にも会いたいところだな。後手が痛い·····)
木々を殴り、棘やささくれが刺さったその拳の痛みに耐えながら、どれくらい歩いただろうか。代わり映えの無い景色が流れ、途中小石などで足をつまづかせ、やっとの思いで、たどり着いたのは何の変哲もないただの小屋。
設計としては、材料は木材だけだろうか。多分だが、ここの木を使っている。だが、作りは立派で作った人の苦労さがひしひしと伝わってくる。
ようやく見つけた人の気配。このチャンスを逃さまいと紫炎が、扉をノックしながら声をあげる。
「すみません。道に迷ったのですが。誰かいらっしゃいませんか?」
そして、キィーと音を立て、扉から出た人影が、陽の光を浴び、シルエットからその姿を表す。
「ほう、なかなか珍しい客人ではないか」
現れたのは、銀髪の中年男性であった·····。
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