26話 再会。その後·····
「まず、色々とそっちの事を教えてくれ」
「分かったわ、まず光達なんだけど·····」
こうして、宿に入るや否や情報交換を始めた。
どうやら、光達は、『終焉ノ迷宮』に向かったらしい。姫達が、街で聞き込みし、光達はダンジョンで、紫炎を探す、という形で捜索してたとか、
「そうか、多分あいつら死ぬな」
「死にますね」
「はい」
それを聞いた紫炎、テスタ、サミリアは、3人とも真顔で"死ぬ"と言った。
その事に少しムカッとなったのか、姫が反論する。
「あのね、あんただって成長してんだから、こっちだって成長してるに決まってるじゃない」
「悪かったよ。そう言えばお前あいつの事好きだもんな」
「違うッ! 私が好きなのは·····別に良いでしょッ! とりあえず光達は強くなったの!」
紫炎の"好きだもんな"の言葉に、顔を赤くしながら大声で反抗した姫の様子から、好きな人は察する事が出来るが、それに気づかない辺り紫炎は、とことん鈍感なのだろう。
「鈍感」
「ね、本当だよぉ、私達のも気づかないし」
姫の後ろで千歌と萌衣が、そんなことを話している。恐ろしき魔王様である。本人の知らない間に3人も落としてるのだから、
まぁ、当の本人からすると、全ての女性達は、自分には興味無いとでも思ってるのだろう。
「いや、本当にすまん。正直修行したお前らでもあの攻略は無理だ。むしろ死ぬんじゃないか? と思ったんだよ」
「そんなの決まってないじゃん」
いつぞやのサティを彷彿させる発言をする姫。
「決まってるんだよ、強者の前では弱者の努力など通用しない」
その、重く説得力のある紫炎の言葉に、反抗出来なくなった姫。そんな姫と同様に、少し表情が暗くなる千歌と萌衣
「で、でも精霊魔法使えるんだよ。確かそれって凄いことなんでしょ?」
だから、諦めるのは早いよと言わんばかりと反抗する姫。だが、語尾に力強さはなくなっている。
「そう言えば、あのクソジジイとウンディーネがいたんだっけ?」
「そうだよ」
紫炎が、イフリートのことをクソジジイと言うには理由がある。何故なら、前最初に呼び出した精霊がイフリートで、"嫌だな"の一言で帰ってしまったからだ。
別に紫炎は、ユグとシルに会えたから微塵も怒りは湧いてこなかったが、いざ、そいつの話を聞いた時となると、少し機嫌が悪くなる。まだまだ子供な紫炎であった。
まぁ、それがきっかけで紫炎の生存を知れた光達にとっては、嬉しい限りなのだが·····。
「ユグとシル、イフリートとウンディーネの実力ってどんな感じなんだ?」
「うーんと、お兄ちゃんの力をセーブした状態で1発で倒せるよ」
「そうね、あいつらは上級精霊だけど、最上級じゃないからシエンにとっては雑魚ね」
との事らしい。
「どんだけ強くなったのよ·····あんた」
「驚き」
「私たちよりも強いの? 紫炎君」
その事に驚きを隠せない3人は、光達の心配より紫炎が先にい過ぎる事を心配し始めた。
「とりあえず、あいつらを助けに行くか。黒煉とテスタ。それとサミリアとユグ、シル。お前らは俺と一緒に救出を手伝ってくれ。ルファーは、クレンの対人戦の面倒を見てやってくれ」
各々が、紫炎に返事をする。
「私達は、何かないの?」
「無いな」
その返事に気落ちしたのか、がくりと頭を落とす。
「悪いな、一応お前らでも勝てそうなんだがまだまだ危険だ。今回は待っててくれ」
「紫炎君。一緒に行っちゃダメ? 心配なんだよ」
萌衣が、諦めまいと根気強く粘る。それに折れたのか紫炎が、仕方がないと許可を出す。
こうして、勇者達の救出をしに、また『終焉ノ迷宮』へと潜るのであった。
勇者ピンチだそうです。




