22話 奴隷。そして·····
書き直しました
(あの少女の痣は何だ?)
その少女に浮き上がる痣は、自然に出来たと言うよりかは人工的と言うのが正しいと思わせる。
「鎖?」
そう痣は鎖みたいな形をしていたからだ。鎖状の痣が腕から足にかけて巻かれるように浮き上がっている。
「一体これは何なんだ?」
「先程も申した通り、獣人の国から売られてきた者で、忌み子だった者でございます」
そうアランが答える。
(見た感じ呪いの類だと思うが、獣人の国では、呪いのかかった者を忌み子と見なすのだろうか?)
「代金は?」
「買われるのですか? 今先程申した通り忌み子ですよ? 返品は受け付けないですからね!」
少女の方を見ながら、紫炎は代金を聞く、その様子を見たアランが何度も確認をとる。余程この少女が邪魔だったのだろう。
そんな少女の呪いは、見たところ可視型の呪いのようだ。
可視型とは、呪いの1種で、もう1つ別に不可視型というのもあるのだが、これは、前テスタが、サミリアにかけられた呪いのことを言う。
基本不可視型は、呪いの対象者の体内が呪われているので解呪は術者本人しか無理だが、可視型になると話は別だ。
皮膚に呪いが表れる可視型は、術者以外の解呪が可能である。聖属性の魔法解呪を使えばいいのだ。サミリアが使った魔法だ。
紫炎は、闇属性しか無理なのだが、精霊王、ユグとシルの力を使えば余裕である。ちなみにサミリアは聖属性魔法が使えない。では何故あの時<解呪>を使えたのかと言うと、先程も言った通り呪いをかけた術者であるからだ。
とりあえず、さっさと買いたいので値段を聞いているのだが、
「本当に良いんですね?」
このデブもといアランはしつこく確認を求めてくる。
「いいと言っている、代金はいくらだ?」
「ならば、こちらもあの扱いに困っていたので無料で差し上げましょう」
数十回のやり取りの末ようやく買えた。しかも無料である。
「早速、奴隷契約を·····」
「いや、俺が使える。契約はこっちでするから大丈夫だ」
奴隷商会で、奴隷契約をすると金がかかる。さすがにこれに金をかける訳にも行かないので、奴隷商の目の前で魔法を発動し、出来ることを証明する。
「そうですか、ならば後はおまかせします。
ではまたの御来店を」
少女に奴隷契約をした後、俺達は、奴隷商を後にする。少女は、あの倒れたので、紫炎は、創造魔法気分一新をかけておく。
<気分一新>は名前の通り、気苦労や疲れ等を吹き飛ばす効果を持つ、イメージとしては風呂上がりである。風呂に浸かった後は、気苦労も落ちるものだ。体が温まり、気分爽快な感じを味わえると言う魔法である。
こうして紫炎と奴隷が、宿に着いたのは日が暮れてだいぶ経った後であった。
少女は、気分一新のおかげか顔色は良く、ぐっすり眠っている。早めに解呪でもしようかと思ったが、
可視型の呪いは、不可視型よりも危険度は低い。なので、事情を先に聞こうと思い、先程から待っているのだが起きる気配がない、
「シエン、まだなの?もう眠いんだけど·····」
飽きたのか、ユグが欠伸をしながら、紫炎の服の裾を引っ張る。
「おにぃ·····ちゃん。むにゃむにゃ·····」
シルにいたっては、睡魔に負け寝息を漏らしていて、サミリア、ルファー、テスタは既にベッドインしている。
今回、泊まっているこの部屋は冒険者限定、パーティールームというの物である。
もちろん金銭は足りなかったので、迷宮で財宝(今までの冒険者の装備)を回収し全部売り払った。若干アウトな気もするが、こちらも生きていくのに必死なのだどうか許して欲しい。
南無阿弥陀仏·····
「むにゃ、こ、ここは?」
どうやら目覚めたようだ。
「大丈夫か?」
「あれ?ここは?というか、貴方誰ですか?」
みんなの自己紹介を済まし、これまでの経緯を説明する。と言っても大半は寝ているのだが·····
「ご、ご購入ありがとうございます。私の名前は、クレンと言います。よろしくお願いします」
話が伝わり、理解が追いついたらしく正座に頭を下げ丁寧な口調でお決まり?のセリフを言う。
「それで聞きたいんだが、お前のその忌み子というのは、どういう事だ?」
ユグとシルがもう限界なので、早速話を切り出した紫炎。
「っ!わ、私は、獣人の国、ラヴァンの生まれです。」
一瞬、身を震わせた後、ポツポツと語り始めた。
「私は、王都、クレファンスの外れにある、小さな村で育ちました。ごく一般な家庭に生まれ、少し生活は苦しかったですけど、充実した生活を送っていたんです。ですが、ある日、王国兵がやってきて、村の人々を殺して回ったのです。当然私の両親も殺されました。最期に両親は笑いながら私を庇ったのです。目の前両親が殺されるのを見て、私は悲しみと絶望の渦で死にたくなりました。しかし、両親の仇を取るまでは死ぬ訳にもいかず。ですが、王国兵を殺す程の力が私には無かったッ!だから私は、呪いの装備に手を出したです」
「呪いの装備だと?」
「はい」
呪いの装備とは、魔剣とはまた別の装備である。魔剣が、時間をかけて出来る上位の武器だとして、
呪いの装備は、呪いをかけて出来る装備のことを指す。もちろん、呪いの装備は強力な呪いがかけられている。
だが、不可視型ではないのが特徴である。基本、不可視型は、人ではないと使えないのだ。
呪いの装備は全て可視型である。だからと言って侮ると命の危険もある。不可視型と違って危険度も下がってはいるが、呪いには変わりない。
呪いの装備の呪いは、精霊魔法や神聖魔法での<解呪>じゃないと解呪は出来ないのだ。
呪いの装備は人の身には余る装備である。安易には手を出せない。だからこそ、それ程彼女は王都兵に強い復讐心があったのだろう。
「私の村の近くには『呪いの祠』というのがあります。代々巫女の家系が守っているのですが、私がその人に呪いで倒れたら忌み子として、奴隷商に売ってくれと頼みました」
なるほど、奴隷商に売られると、人権を失う代わりに衣食住が最低限確保される。
呪いのせいで誰も買わないことを見越して、
その巫女さんにお願いしたわけだ。
「話は分かった。とりあえずその呪いとやらを解呪することにしよう。ユグ、シルよろしく頼む」
「うん·····分かったわ」
「むにゃ、了解」
2人の限界が近い、なるべく早く済ませようとイメージをシルに送る。
「解呪」
さすが精霊王と言うべきか、直ぐに痣が消えていく。まぁ、全てという訳では無いのだが、
「え?」
理解が追いついていないないのかそんな声を零すクレン。
「痣が·····う、うぇーん」
が、徐々に薄くなっていく痣を見て、その頬に一筋の涙が流れる。その涙がきっかけに止め処なく泣き叫ぶクレン。
「ほら、泣くなよ」
そんなクレンを優しく包み込む紫炎。もちろん泣き止ます為なのだが、寝ている他の人達を起こさない為だったりする。いつの間にかユグとシルも寝ているし·····
「ぐすん、ご主人様ぁ」
泣いていたクレンも、呪いが消えて安心したのか今はぐっすりと寝息をたてている。
顔色が先程よりも断然良くなっていて、解呪したかいがあるってもんだ。ほとんど2人の力のおかげなのだが、
「皆寝ちまったことだし俺もそろそろ寝るか」
(細かいことは、明日考えるとするか·····)
そして、紫炎はクレンを抱き抱えたまま、睡魔に襲われその意識を絶ったのであった。
書き直しが終わったぞ〜!
次からは新しい話を投稿して行くので楽しみにして下さい。
誤字脱字、日本語の不自然な部分がありましたら報告して下さると嬉しいです。




