21話 S級試験について·····
書き直しました
「悪いがそれは、少し待ってくれ」
そう口にしながら降りてきたのは、豪華な服を身に包み、その口元にはちょび髭を生やしたダンディーな中年男性であった。
「私は、ギルドのマスターをやっているオトルという者だ」
「俺の名前はしえ·····シツだ」
一瞬、紫炎と名乗りそうになったが、シルファーがせっかくつけてくれた名だ。紫炎はシツと名乗ることにした。
「シツというのか。なかなかに良い名前じゃあないか、まるで、大戦を終わらせた英雄 勇者セツにどことなく似てるな」
あらぬ誤解を与えてしまったが、しょうがないので認めることにした。実際セツを文字った名前なのだから、が、恥ずかしいと言えば恥ずかしいので、話を戻す。
「そ、それで、待つというのは?」
「その話なのだが、上で話すとしよう。エレン君、後始末を任せてもいいかな?」
「かしこまりました。」
エレンと呼ばれたギルド嬢が、オトルの後ろから現れ、黙々と作業をし始める。
「彼女は、エレンと言って、なかなか優秀な奴でな、1ヶ月前に急に雇ってくれと言ってな·····いやこの話は後にしよう。ではシツ君こちらに来てくれるかな。後ろの彼女達も、ついてきて貰って構わない」
後ろにいるテスタとルファーにオトルはそう呼びかける。他の人達は各々スタンバイしているのでこの場にはいない。
黒煉は刀に、サミリアは影に、ユグとシルは精霊界にて紫炎の呼び出しをを待っている。とりあえず、紫炎達はオトルの後ろについて行く。
「ハントについてだが、大変申し訳無いと思っている。この通りだ」
オトルは二階にある本部長室の席に座るや否や
頭を下げそんな事を言ってきた。そんな様子のオトルに紫炎は、若干戸惑いつつ言葉を紡ぐ。
「別に謝ることでは無い、気にするな」
「いや、ハントが行った事には、私にも責任がある。だから謝らせてくれ」
(しかし困ったな、まさか謝ってくるとは思わんかった)
「もう、大丈夫だ」
こんな人格者がギルドマスターをやっているのになんでハントなんかが居るのか分からないが、先程から必死に謝っているオトルに紫炎は許しの言葉を言った。
「そう言って貰えると助かる」
そう言ってオトルはようやく顔を上げる。そして、更に真剣な顔つきで話を続ける。
「それで急なのだが、シツ君にはS級の試験を受けてもらいたんだが良いか?」
「本当に急だな、何故だ?」
謝罪が終わった瞬間、間髪入れずにS級試験への話に入った。
「今回の件の謝礼だよ」
「ならば試験などせずに、S級になりたいのだが、もしくは金の方が俺達は助かる。」
「そうしたいのは山々なのだが、S級冒険者に昇格させようと申請をしても上からの指示でそれが却下されてね、金に関しては、このようなギルド支部にそこまで金がないのも事実なのだよ」
どうやら、オトルはオトルで苦しいようだ。
「S級試験を受けるには、確か王都へ行くんだった気が·····」
「そうだ。そしてS級試験なのだが、シツ君は参加してはならない。」
どういう事だ?紫炎が参加出来ないと試験の意味がないのではと、テスタ達も含め疑問符を浮かべる。
「何故だ?」
「S級冒険者たるもの指導力も磨かなければならないからだ。もちろんシツ君だけでは無い、他の参加者達も各々で弟子を育てなければならないのだ」
理屈は分かった。指導力を見るための試験がS級なのか。
「俺達の実力は見ないのか?」
「君達の実力に関してはA級の時点で強いということが証明されているのだ。なので指導力のみを調べる事になっている」
なかなかめんどくさい試験である。弟子を1から育てて、自分の変わりに戦わせる。もちろんその弟子達は冒険者になれるようだが、とりあえず色々聞いてみることにした。
「試験は何時か分かるか?」
「試験は約2ヶ月後だ。それまでに君は弟子を見つけ、育てなければならない」
なかなかにキツイ。紫炎でも3ヶ月間、魔王であるシルファーの元で修行して『終焉ノ迷宮』に挑んだからこそ今のステータスがある。それを1から2ヶ月というのは辛い。
「弟子を1から見つけ出すの辛いのだが?」
「その点についてだが、奴隷を弟子にするのはどうであろうか?」
オトルの提案にある奴隷だが、奴隷とは、罪を犯すか人権を売られることによってなる人達の総称だ。
一応、性奴隷か通常奴隷か選べるのだが、それでも性行為が出来るかどうかの違いだけで絶対服従には違いがない。
主に没落貴族や獣人等が多く、説明が遅れたが、獣人とは、その名の通り、獣と人の2つの遺伝子をもつ人種の事だ。猫、犬、狼、狐、狸、などと多種多様である。
「しかし、何故奴隷なんだ?」
「奴隷になった者は、ステータスを確認できる。それでステータスの高い者を選ぶことも出来るし、更には奴隷魔法により主への絶対服従が約束され、裏切られ寝首をかかれる事も無い。最近は奴隷を弟子にする人もいるんだよ」
(なかなかに奴隷は使えるようだな)
「ならば早速奴隷を買いたいのだがあいにく持ち合わせが無くてな·····」
めちゃくちゃ見た異世界系の小説で、何度奴隷に、憧れたことか·····。だが、もちろん金が無いので今回は見送ろうとしたのだ。が、
「奴隷なら私が代金を出す。
大量の金はないがささやかな私からの礼にさせてくれ」
オトルの太っ腹である。これで、奴隷が仲間に手に入る事になった。多少不謹慎かもしれないが少しワクワクしているのはしょうがないだろ?憧れ続けた獣人もとい獣耳っ娘が手に入るんだから。これなら本当に奴隷を買ってもいいかもしれないと考える紫炎。
「テスタ、ルファー、奴隷を買うが別にいいか?」
話をずっと聞いていた2人に、不安なので同意を得るため尋ねる。
「私は、シツさんのしたい事なら別に何でも良いですよ」
とテスタが、
「シツが選んだのなら私達は従うよ」
とルファーが どうやらお許しが出たみたいだ。
(ユグとシルからは後で俺が事後報告しておくか)
「ということだ。奴隷の件よろしく頼む」
「任せてくれたまえ」
こうして、ギルドを出て、この街の最大規模である奴隷商を訪ねる。奴隷商に来たのはオトルと紫炎だけで、テスタとルファーには、『月下の宿場』前回来た時に止まった宿屋に戻って貰っている。多少の羞恥心があるのだろう。何故なら獣耳っ娘を買うのだから。
そんな奴隷商を訪ね、奴隷館を進むと肥満体の奴隷商が出てきた。
「いらっしゃいませ。私はアランと申します。本日のお買い求めは何でしょうか?」
体をうねらせ、笑みを浮かべるアラン。
「出来れば、女でステータスが高く獣人なのがこっちの要望だ」
そんな問いに欲望のままに返す紫炎。するとアランの笑みが下卑た笑みに変わり、紫炎の小腹をつつく。
「お客さん、なかなかですね」
「·····それほどじゃないさ·····」
先程から恥ずかしさがヤバい紫炎であるが、ついに獣耳っ娘に会えるのである。別にどうということは無い。
「通常奴隷の方ですかな?」
「あぁ、通常で頼む」
べ、別に性奴隷が欲しい訳では無いからな!
断じてないッ!
そんな紫炎と若干苦笑いのオトルは、ある個室を紹介された。
「お客様には申し訳ありませんが、要望に合ったのは1人しかいないのです。最近仕入れた者で、なんでも獣人の国では忌み子としてこちらに売られた者なんですよ、今まで買う人はいなかったのですが、なかなか可愛いやつですよ」
「とりあえず見せてくれ」
そう言って、中に入ると異臭が漂ってくる。何日も風呂に入っていないのだろうか?
「来ちゃダメ!」
中からそんな声が聞こえてくる。そこに居たのは、 猫耳の生えた黒髪黒目のショートヘアの幼女だ。
「私に近づくと死んじゃう。だからッ来ないでッ!」
そう言って、少女は意識を失う。そんな彼女の皮膚には痣みたいなのが広がっていたのであった。
ついに奴隷が登場であります。若干幼女成分が高めですかね?ユグとシルそしてこの奴隷が幼女で、テスタ、黒煉が同じぐらいかな? サミリアは少しだけこの2人よりも身長が高く、ルファーが、魅力的な女性と言う感じなのですが、とりあえず気にしなくて良いかな。
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