20話 クイシーの街 ギルドにて·····
2章突入です。
懐かしき外壁の目の前まで紫炎達は来ていた。
そんな外壁があるここは、クイシーの街。そう紫炎達が、ギルド登録をした街である。
何故クイシーの街に来たかと言うと、
王都へ行く前に旅の資金を集めようと思ったからだ。せっかくギルドにも登録したのだから、
魔物とかのクエストを受けたいに決まっている。
なんやかんやあって異世界を満喫出来なかったので紫炎達は早速、ギルドへ向かった。
「やっと見つけたぞガキィー」
扉を開いた瞬間、顔に包帯を巻いている屈強な男に紫炎は『?』マークを浮かべる。
「すまん、お前誰?」
「俺を忘れたのかぁ!ハントだ!ハントッ」
(おぉー、すっかり忘れてた。そういえばいたなぁ、ハントって言う奴)
紫炎にとって3年ぶりであるハントは見事にその記憶から消えていた。
すると困ったようにあの時のギルド嬢さんが紫炎に近づき、事情を教える。
「すみません。あのクソハント貴方にボコされてから、丸くなるどころか前よりも酷くなってしまってこんな感じなんです」
「てめぇ、今度こそ正々堂々勝負しやがれッ!」
まさか、紫炎の実力を認めずここまで執着心を燃やすなんて思ってもいなかった紫炎は、ある意味驚きを隠せなかった。が、驚くのはまだ早いと言わんばかしにハントがこんな事を言う。
「そこの女共、こいつより俺が良いって思わせるからな見とけッ!」
(まさかテスタ達も諦めていなかったのか?
こいつやばいぞ!? 新型の雑魚だ)
色々とツッコミどころが多いハントに紫炎は驚きを通り越し呆れながら言う。
「もういいからさっさと始めるぞ」
「余裕だな? だが、こいつを見ても同じことが言えるかッ!」
そう言ってハントが出したのはなんか真っ黒い
剣だった。正直どこにビビる要素があるのか分からなかったが、隣のギルド嬢さんの顔色が青ざめた様になり、口をパクつかせ酷く震えながらハントに聞く。
「それは魔剣ッ! ハントさん一体どこでそんなものを!」
「こいつにボコされ途方に暮れていた時、神が渡してくださったのだッ!」
(神だと?何を言っているんだ?神族なんてこの時代には居ない様なものじゃねぇか·····)
大戦の時代。終焉と呼ばれた時、神界軍として内部からの切り崩しを図った神族は現代その姿を見せてはいない。その神族が何故ハントに魔剣を渡したのだろうか?·····
魔剣とは、黒煉等がその1種である。武器の上位のものは自我をもつその武器達を総称して魔剣と呼ぶ。簡単に言えばこの武器は黒煉並の力をもつ武器ということだ。だが、全くそれらしき力を感じられない。
だが、周りを見ると、
「あぁあぁあああああああぁああああああああああああああああああああぁぁぁ」
「逃げろやばい、あのハントのクソが魔剣なんて持ってきやがった」
面白い程に顔色を変え、あたふたと慌てている。逃げ出している者もいるし、その場で気絶してる者もいる。
『マスター、マスターは魔王を継承された方です。なので常人では耐えられないものも魔王である貴方様は耐えられるのですよ』
そんな紫炎に『黒煉』はそう呟く。
(魔王にはそんな効果があったのか、まぁよく良く考えれば、魔剣にビビる魔王なんて考えられねぇしな)
既に魔剣に支配されているのか正気の沙汰じゃないハントを見やって紫炎は溜息を吐き、一言
「『黒煉』あいつをぶった斬るぞ」
『御意、御主人様』
「ほざけぇェェエエ工!」
既に正気を保っていないハントは、そんな態度を示す紫炎に、大振りで魔剣を振る。が、そこまで速くない、しかも雑な剣筋が紫炎に当たるはずも無く。
「ふん、雑な剣だ。サミリアの方が断然上だな」
その雑な剣に紫炎は溜息を吐きつつ感想を言う。
『お褒めに預かり恐縮です。御主人様』
そんな感想に嬉しいのか、サミリアが影の中から喜びの声を上げた。
今サミリアは、街の住民を驚かせないよう紫炎の影の中にいる。いや同化していると言う表現が正しい。
サミリアが使っているのは、もちろん魔法であり、闇属性魔法魔法<影>と言うものである。
<影>とは、自由に影を操ったり、影の中を動いたり、影そのものになれたり、同化したりする非常に便利な魔法だ。これを用いて紫炎の影と同化している。
そんなサミリアの言葉とハントの魔剣が折れたのはほぼ同時であった。
「なっっ――!」
「脆いな。本当に魔剣なのか?」
紫炎がそう言った瞬間、ハントの手から魔剣が離れる。
「魔剣でもお前は·····倒せねぇ·····のか?」
驚いた、まだ意識があるようだ。魔剣に支配されていた奴はだいたい魔剣が折れると同時に意識もしくは命を失う事もある。
支配していた魔剣が折れたのだ。支配時は使用者と魔剣がリンクしてるので当然折れたら、何かしら支障がでるのだが、意識がまだ残っている。さすがB級というところか。
「まぁな、魔剣如きで俺に勝とうなんざ100万年早い」
『マスター、私も魔剣です』
「こ、『黒煉』以外の魔剣で勝つなんて100万年早い」
「そうかっ·····よ」
ハントは、最後に笑みを浮かべ、絶対に勝てないと察したのか気力が無くなり、意識を失った。実に締まらない感じの紫炎であったが、直ぐに立ち直り、ギルド嬢さんにクエストを受注しようとする。
「すまねぇが、A級のクエストを受注させてくれ」
正直、ラノベとかで見るこの後の展開は面倒臭いからさっさと退散しようとしたのだが、それで終わらないのがギルドというものなのだろうか?
「悪いが、それは少し待ってくれ」
紫炎達は、体が引き締まっている中年男性に呼び止められるのであった。
ハントが再登場しました。あのギルド嬢さんの名前は今のところ考えてはいないのですが、一応次回に名前を登場させようかなと思っております。
誤字脱字、日本語の不自然な部分がありましたらご報告下さい。




