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14話 ルファーとセツ。そして·····

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「俺にも分かるように説明してくれ」


長い抱擁が終わりを告げ、紫炎はルファーに説明を求める。


「うぅ、分かったわよ。セツは、大戦の時代、人界軍の勇者だったの」


そしてルファーは語り出す。


「私がまだ人で言う所の8歳の時だったかな·····」



火と血で埋め尽くされ、怒号と悲鳴が叫び合う、そんな時代。


終焉(ラグナロク)と後に言われる大戦が行われている時代。


そんな時代にある城の中から怒号と悲鳴でも無い、そんな叫び声が響く。


「私が、勇者を殺しに行くの! 1人で十分だもんッ!」


その声は幼さを含み、だが、気迫だけは一人前の叫び声。そんな叫び声の主は、ルファーだ。


「姫様、ですがそれは余りにも無謀でございます」


「いいのッ! 行けるの! お父様に伝えといて、私が勇者を殺すって」


従者の声なんて聞く耳持たず、幼き頃のルファーは城門を抜ける。


当時8歳であるルファーが”殺す”なんて言葉を使えるのは、時代のせいだ。


命がゴミのように消えていく、そんな世界。朝も夜も関係無く、自軍の為争い続ける。


「私が勇者を殺すんだッ!」


長い、長い道を駆け抜けて行く。その速さは、魔界軍でも上位に入る程である。ルファーの後ろでは息を切らし肩を上下している従者達がいる。実力の差は一目瞭然だ。


「ふん、私が行くんだからそんな心配しなくて良いのに·····」


何故自分を信じてくれないのか? 少し頬を膨らまし、拗ねた様に進んでいく。


(みんな、私じゃなくて”魔王の娘”としてしか認めてないんだから)


昔から何かを頑張る度に褒められた。そう『魔王の娘』としてだ。誰も『ルファー自身』を認めてくれない。


揃って言われる言葉は『流石、魔王様の娘さんは、凄い』である。


ならばと憎むべき勇者·····セツを殺して自分が凄い事を皆に認めて貰う為に1人で来たのだ。


(絶対に私が凄いって、魔王の娘でなく私として認めて貰うんだ!)


張り切りながら、人界軍の陣地へと進んでいく。今はシルファーが出陣し、人界軍の陣地は手薄になっていると考えたからだ。勇者と言っても所詮人。毎回戦地に赴いている訳では無い。


自軍の陣地で休んでいる所を奇襲して殺す。勇者以外は雑魚だ。容易な事だと考えたのだと考えた。しかしそれは、浅はかな考えであった。


「おいッ!てめぇら見ろよ 魔族の嬢ちゃんがいるぞ」


想定外の遭遇。人界軍の兵士である。


「本当じゃねぇか、おいこいつを捕まえろ、人質にするぞッ!」


4、5人に囲まれて、ルファーは危機に陥る。だが、ルファーでの敵では無いはずなのだ。


しかし、手も足も出せなかった。それは、ひとえに経験の差。潜り抜けた死線の違いであった。


「くっ、うぅ〜、触るなァ!」


簡単に身動きが取れない状態になり、ルファーは吠える。それを下卑た笑みで返す兵士達。


「大人しくしてろよォ、大戦の最中なんて溜まるんだよッ!、下は無理でも口で奉仕させるかぁ?」


現代でこんな事を言う奴はクソだが、戦中では男で済ませる人もいるのだ。人間の三大欲求はそう簡単には収まらない。だがまぁ幼い少女にこんな事を言う辺りゴミには変わりないのだが、


「嫌ッ! 来ないでぇ」


そんな悲痛な叫びもケダモノには通じない。刻一刻とルファーに迫る強姦魔達。


「いやぁ〜ッ!」


(やだよぉ、助けて、誰かッ!)


目を瞑り、来るはずもない助けを求む。だが、お構い無しに強姦魔達の手が伸びて来る。


しかし、それがルファーに到達することはなかった。


「おいッ! なんでお前がここにいるんだッ! やめっ、止めろォ!」


生々しい血しぶきが舞い散る。次々とこと切れていく兵士達。


「えっ!?」


未だに現状を理解出来ないルファーだったが、目の前にいる人物には心当たりがある。


新海 雪 人界軍により召喚されし異世界人。

真っ白な髪は雪を思わせ、その瞳はそんな髪とは対照的に真っ黒。軍服をその身に纏い、扱う武器は見ない形の剣。カタナと言う物だ。


「なんで、お前がここにいるのッ!?」


「別に、疲れたから、暇つぶしがてらここら辺を散歩してたら、変態が居たのでちょっと寄ってみただけ」


先程まで戦場にいたからか、それとも今の変態の血なのか分からないが、返り血が黒の軍服に染まり、カタナには赤い血が付いている。返り血は顔にも付いており、その形相は恐ろしいものだ。


「と、とりあえず助けてくれてありがとう」


周りの惨状、目の前に居る雪、大体状況が呑み込めてきたルファーが礼を言う。だが、肩が震えていることから雪と言う男に恐怖を抱いているのは間違いないだろう。


「そんな事よりさ、お前シルファーの娘だろ?確か名前はルファーだっけか?」


その言葉に更に不安がのしかかる。


(何故、私の事を知ってるの? お父様の知り合い? いや、お父様が勇者と知り合いな訳無いッ!)


不安や恐怖が襲いかかるが、気丈に振る舞わなければ相手のペースに持ち込まれる。溢れ出てくる気持ちを抑えて口を動かす。


「そうよ、お前がなんで私の名前を知ってるのか知らないけど、ルファーは私」


精一杯の演技、恐怖で来る涙も、全て抑え込み強気を演じて、雪に言葉を返す。


「はぁ、流石あいつの娘だな、その自分の気持ちを抑え込む所、語尾が震えてるぞ?」


「え?」


「ったく、めんどくせぇな、内に溜まってるもん全部吐き出してしちまえ、安心しろ俺はお前を殺さないし、お前をしっかりシルファーの元へ連れてくから」


雪は、膝を曲げ腰を落とし、両手を広げルファーを呼ぶ。


本来警戒すべき相手なのに、そんな気持ちは忘消え去り、ルファーはその顔を雪の肩に埋め、涙を流す。


(なんで、私は泣いているんだろ? 敵である勇者なのに、憎むべき相手なのに、何でこんなに安心感があるの!?)


雪は、静かに泣き出したルファーの頭を撫でる。


「落ち着いたか?」


「ぐすっ、うん」


数分泣き続けたルファーは落ち着いたのか、その心に不安や恐怖は無い。


「別に俺に演技をする必要は無い。俺を信用出来ないのも分かるが、安心しろ、お前を絶対に死なせないから」


「ううん、信じる。おまえ嘘ついてないし」


この酷く腐った世界で嘘を付いていない人間なんていない、魔族はいない。そんな嘘を見破るのがルファーは昔から凄かった。


「そうか、それじゃあ送り届けるんだが、そろそろ離れてくれない?」


今でも、力強く雪をホールドし一向に離そうとしていない。


「いやッ!」


「何でだよッ!」


「だって安心するんだもん」


仕方なく、この状態で道を進んでいく。雪は、一応戦闘になっても大丈夫な様に片手でルファーを抱いている。


その最中、ルファーが疑問に思っている事を口にする。


「セツとお父様ってどうやって知り合ったの?」


「ん? あぁちょっと()()()があってさ、それにシルファーが必要だったんでその時にな」


(やる事って何だろう?)


「ねぇ、やる事って·····」


「着いたぞ」


ルファーの言葉が全部言い終わる前に雪が声を上げる。


「ん?なんか言ったか?」


「べ、別になんでもないもんッ!」


羞恥から頬を赤く染め、プイッと顔を背ける。


「そうか·····とりあえず着いたから」


「あれ?ここって魔王城だよ?」


「そうだが?安心しろしっかりシルファーは城内にいるから」


そう言って、ルファーを降ろす。


「ここからは1人で行けるか?」


「何で?セツは行かないの?」


すっかり敵同士と言う事さえ忘れたルファーに雪は苦笑し、ルファーの頭をクシャッとする。


「俺は、今からやる事があるからな少し一緒には行けそうに無い」


「そう·····」


それから少し時間を置きルファーは精一杯の笑顔で、


「ここまで連れてきてくれてありがとう。私、人間は嫌いだけどセツは好きだよ」


「そいつは良かった」


そして無言で走り去る。


「ったく、俺が教えたのにまた溜めやがったな」


どんどん小さくなってく背中に聞こえるはずもない声で雪が呟く。


そして雪も走り出そうとした時、


「くッ! 畜生気づかなかった()()()()()()()()()したのかよッ!」


ルファーの上には魔法陣が展開している。その魔法陣のデカさから尋常じゃない力を秘めている事が分かる。


「ッ!ルファー避けろッ!」


「え?」


雪の大声に気づいたが、振り返ったのがいけなかった。その魔法陣から放たれる魔力のエネルギー砲が直撃した。




「そして私は死にました」


そこまで聞いた紫炎は、不思議に感じる点がある。()()()()()()()()()()()()()()()()()?と言う事だ。


「では、何故ルファーさんは、生きてるんですか?」


その点に気づいたテスタがルファーに聞く。


「セツは、私に蘇生魔法<蘇生(リヴァイブ)>を使いました」


蘇生(リヴァイブ)は、禁術の1つである。この世界では生と死に関するものは全て禁術とされている。禁術を使う者は『異端者(ヘレティック)』と呼ばれ、忌み嫌われる。


「そして、私を助けた雪は·····」


蘇生(リヴァイブ)とは、お手軽な魔法では無い。代償魔法とも言われ、その対価を支払わなければならないのだ。命の対価など命しかないだろう。


「そうか」


全部を言わせまいと紫炎が言葉を挟む。


「でも私は()()()()を信じて、また再会出来ることを信じて今日まで生きてきた」


あの昔話とは、ある童話の事である。大昔に居た、ある種族の違う男女の話。その種族の違いから離れ離れになった2人が、奇跡的に再会を果たしたと言うそんな話である。


「そしたら、あなたに出会えたの、あなたはセツの生まれ変わり、私が見間違うはず無いわ」


ふんすーと息巻きながらルファーが断言した。


(ルファーと雪と言う奴の事は分かったが、俺が雪の転生体なのが分からないんだよなぁ)


そんなルファーの言葉にまだ疑問が残る紫炎。何故なら、紫炎が本当に雪の転生体なら、この世界に来た時、何かを感じるはずだ。


(という事は、記憶が無いのか? クソッ!分からないことが多すぎるだろッ!)


「話は分かったが、まだ俺が本当に生まれ変わりなのか分からない」


「そう·····」


目に見えるように落ち込むルファー、その様子から女性陣から批判を食らう紫炎だったが、


「だから、俺はやる事を済ましたら、自分の事を調べに行くんだが、お前も来てくれないか?」


「えッ?」


さっきまでの落ち込みが嘘かの様にばっと顔を上げ、キラキラとした目線を送る。


「まだやる事が済んでないから、今すぐという訳では無いが駄目か?」


ルファーを連れてく意味としては、単純に雪を知ってる人を連れていきたかったからだ。


「そ、そのやる事って何?」


「まず、シルファーに最後の修行をお願いしたいのと、俺の友達の回収だ」


いいか?とシルファーに目線を向ける紫炎。


「最後の修行と言ってもなぁ、まだ3年かかるぞ?」


そのシルファーの言葉にルファーが落ち込む。


「だからさ、()()()()でやってくれよ、期間は3()()十分だろ?」


あの方法とは、魔法で作り出した空間で、修行を行う事だ。これのメリットとしては、現実の時間がその魔法空間にあまり作用しにくい事だ。大体1日に1年の感覚である。簡単に精神と○の部屋と思ってくれていい。これは、無属性魔法と言う区分で、別名創造魔法(オリジナル)と呼ばれる。この世にシルファーしか使えないのだ。


が、もちろんデメリットもある。それは、体力が異常にいることである。魔法空間とは、純粋な魔力で生成されているので圧力が半端ないのだ。常人なら立つことさえ難しい。なので、あの3ヶ月の修行の中で1回しか出来なかった方法なのだ。


「今なら、あそこで3年間ぐらい余裕だ。3日で俺を仕上げてくれ、よろしく頼む」


「ほう、良いだろう。あれからどれぐらい成長したのか我が直々に見てやる」


そして、最後の修行が始まった。

少し長くなりました。

色々変更点があって最初の投稿を見た人は困惑してしまうと思いますが本当にすみませんでした。次からはそこまで多く変更点は無いようにしますのでよろしくお願いします。


誤字脱字、日本語の不自然な点がございましたら、ご報告下さい。


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