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今日から学校と仕事、始まります。②莞

アソコが一望できる温泉宿

作者: 孤独

露天風呂。

昔の時代から今の時代においても、それは進化を遂げていく。

ただの露天風呂ではもう時代遅れ。温泉の効能、その場の絶景、振る舞う料理、日帰り可能……様々なアイデアにこの露天風呂というオアシスが盛り込まれていくようになった。

そんな時代に今から乗ろうと、一昨年からの経営悪化を危惧し、有名アドバイザーを雇って店の経営回復を狙う雇い主。


「本日はお越しくださいまして、誠にありがとうございます。弓長様、どうぞ」

「いえいえ。私達も1泊2日の旅行も兼ねてますから。ねぇ、鶴見さん」

「デート&ワークをする弓長さん……。私の肩が休めませんよ」


色んな会社を立て直して来た、経営と営業のプロ。

弓長昌がやってきた。とはいえ、何年も務めるわけでもなく。あくまでご指摘しに来た人間。

やってきて早々、ここの食事を頂くことに。


「美味しいですねー。日本酒に合う料理は大好きです」

「ええっ!地元の漁師、農家から取り寄せた新鮮な物を調理しておりますから!」

「ま、料理だけで営業が回復できたら苦労しませんけど」

「噂には聞いているくらい、毒の強い方ですね!」


提供される料理が美味しいし、宿屋としては広くて数もある。

とはいえ、主要駅から車で50分とちっと遠い。この宿と似たようなホテルは来る途中に見かけた。そっちはスキー場やゴルフ場などにも近く、太刀打ちするのは難しい。


「スキー客とかを取り込もうにも、この立地の悪さは頂けませんね」

「そ、そうですねぇ。ですが!紅葉でしたら、こちらは負けてませんよ!」

「うん。それはそうだと思う。海にちょっと近いから夏は良いかも……」


とはいえ、ここ。ただの海が近いだけで、海水浴場はない。

釣り客が泊まるのには最適な宿らしいが、それだけを取り入れても経営は厳しい。なにか一つ、手が欲しい。食事を済ませ、宿屋の色々なところを弓長は拝見しながら……


「温泉行きますね」

「どーぞ!」


ライバルのホテルは、街を一望できる絶景過ぎる露天風呂。しかし、こちらは紅葉シーズン以外は普通過ぎる山の宿だ……。土俵が違い過ぎる。


「ゆっくり入りたいから、あとで報告しますねぇー」

「は、はい!」


そういって弓長は露天風呂を満喫。

宿に泊まってみれば、決して悪くない宿。自然の静かさを体験できる良き場所……と言っても、お客様が来てくれない事にはまったく始まらない。家族層を泊めるとなると、分が悪いが。団体客を扱うとするのなら五分五分にやっていけそうな気がする。学生とかの金銭関係に厳しい層を取り込める魅力はある。


「とはいえ、何にしても。客を呼び込ませる必要がありますよ」



儲けるとはそーいうもの。弓長昌が来た理由は温泉旅行のためだけでなく、ここに客を呼び込むためのプランを提供する事である。

ただの宣伝だけでなく、ちゃんとしたモノがここにあればいい。あるものはある……。



「おや?」



なんら好材料を得られない露天風呂と思えたが、なんとも変わった露天風呂であった。


「鶴見さーん。そっちの湯加減はどうですかー?」

「ゆ、弓長さん!?ど、どっから声出してるんですかー!?」


見上げる弓長、見下ろす鶴見。なんとこの旅館の露天風呂は……


「私の姿が見えますかー?」

「湯煙とかで見えませんけどーー!」


ここに目をつけて、若年層達を取り入れようと弓長は決意。


◇        ◇


「な、なにーーー!?」

「お、大きな声出すな!ネットの情報なんだがよ……」


それから数年後。ネット界隈で広まった宿屋の話があった。ただの露天風呂では生きていけない時代。あの手、この手と使っている中で、確実にあるところを一望できる温泉宿があった。

高校生の相場と舟は、その温泉宿に友達を連れて行こうとしていた。


「そんな宿があるのか?」

「マジだ。実際に客が撮影に成功していて、実証されている。しかも、飯は上手いし、かなりの大人数が入るそうだ。犯罪行為だが、合法でやっているのでセーフだ。とりあえず、川中さんと御子柴とか誘って、その温泉宿でウハウハしようぜ」

「お、おう。しかし、すげー宿だな」


海とか、山とか。そんなレベルじゃねぇ。


「女湯を一望できる、男湯のある露天風呂とかサイコーじゃないか……」


温泉で覗きをするためだけにある。


◇        ◇


「それは良かったですね~、学生さん達を中心に集められて」


あれから数年が経って、その宿の経営は依然よりも良くはなった。若い人達が来てくれる事に喜んでいた。ただ、最近は女性客からのクレームも入ってきており、それはそれで大変だとか。


「ま、深夜からは混浴になるんですけど。青春ボーイと青春ガールには覗きくらいが丁度いいでしょう」


男湯と女湯の上下の位置を入れ替え。照明の位置や光の調整をし、女性達からは男性達の覗き姿が眩しくて見えず、逆に男性側からは女性達が見えるという少し面倒な事をした。

あーだこーだと騒がれると面倒なので、23:00から4:00は混浴時間にし、茶を濁す。そーいう宿だと説明する都合のためだ。


「普通に混浴で入った方がいいですよねぇ、鶴見さん」

「そ、そ、それはその……誰も、いない時に……」


後日談にしますが、


この宿はしばらくの間、男性客ばかりになってしまい。女性客はめっきり減って、それはそれで苦労したそうです。


とはいえ、こんな工夫で客が増えたとは思えませんね。弓長さんがたぶん、宣伝に色々手を加えて、遊び心で提案したんじゃないかと思います。


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