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五一話 マルコ 対 魔蟲使いパルティマス!


「お前が、魔蟲使いパルティマスだな」


 宮廷魔導師の放った最後の魔法は、パルティマスにかわされはした。

 しかし、その爆発は空を飛ぶマルコの目に届いていたのだ。


 パルティマス

 種族 人

 性別 男

 年齢 三七

 適性 魔蟲使い(バグマスター)

 レベル 六一


 目玉スライムの力を持つマルコには、この男が魔蟲使いパルティマスだとはっきりわかる。


 魍魎(もうりょう)バッタとあたる前に、元凶らしき魔蟲使いとコンタクトできた。

 蝗害の進路を逸らす方法があるかもしれない。


 これは好都合、と言わんばかりにマルコはほくそ笑む。


「なんだ貴様は」


 パルティマスの胡乱な目つきに、マルコは行動で応える。

 くるり、と槍を回転させ腰だめに構えた。

 穂先ではなく石突(いしづき)をパルティマスに向けて。


「スラリウム光線(レイ)!」

「ぐおおぉぉ!」


 瞬間、空洞になっている槍の石突が光り、パルティマスの右腕が消し飛んだ。


 光を発生させるスライムを凝縮、反射増幅し、光速で攻撃するマルコの切り札の一つ。

 使用するのに精密なオリハルコンの筒を必要とするこの技は、主に手の届かない上空から一方的に攻撃魔法を降らしてくる魔王を迎撃したり、職務放棄して空を飛んで逃げ出す魔王を撃墜するときに用いられる。


 魔王軍絶賛(魔王を除く)、マルコ自慢の遠距離戦用切り札である。

 何しろ光速なので狙いさえ付けば必ず当たる。


 右腕を押さえ苦悶の声を上げるパルティマスも、倒れぬのはさすが元S級冒険者といえよう。


 マルコは槍の柄を向けたまま、問いかける。


「お前には二つの選択肢がある。ここでむごたらしく死ぬか、魍魎バッタの動きを抑えて生き残るか」

「……帝國の犬かっ!」


 吐き捨てながらもパルティマスは脱兎の如く、身を翻し逃げ出した。


 攻撃が見えなかった。見えなければ避けようがない。


 どういうトリックを使っているのかわからないが、この相手は危険だ。

 驚くべき事に、S級の高みにまで上り詰めたはずのパルティマスにとってすら、この少年は危険な存在なのだ。


 S級冒険者の本能が、かつて味わったことがないほどの警鐘を鳴らす。

 パルティマスは迷うことなく撤退を選んだ。


「もういっちょ、スラリウム光線!」

「ぐああああぁああ!」


 しかし、マルコからは逃げられない。


 今度は左足を失い、のたうち回る。


 パルティマスが逃げられなくなったと見るや、マルコは倒れている宮廷魔導師の側に寄った。


 男はもはや意識も失っており、肌は青ざめピクリとも動かない。

 見たところかなり強烈な毒を喰らったようだ。このままでは数分と持たないだろう。


 マルコは金銀の光沢を放つスライム、エリクシールスライムを召喚し、男の口に突っ込んだ。

 スライムが喉に侵入し胃腸に到達すると、宮廷魔導師はゆっくりと目を開く。


「……あ、ああ……助、かったのか? 君は……」

「通りすがりのスライム使いだ」


 マルコは宮廷魔導師が一命を取り留めたと判断し、倒れたパルティマスに近づいていく。


 近づく気配に、転げ回っていたパルティマスが地面と接吻しながら、土まみれの口元を歪めて笑う。


 カンッ、カツッ、ベチョッ。


「なっ!?」


 一転、その口から驚愕の声が漏れた。


 マルコの首筋に針を刺そうとした魔蜂、デスクリムゾンビーは、鎧のように硬質化したスライムに針を阻まれ、逆に絡みつかれて地に落ちた。


 乾坤一擲の賭け、しかして秘かに確信していた逆転の一手を潰され、パルティマスは狼狽する。


「な、なんだ、なんなのだ貴様はっ!?」


 その叫びは、もはや悲鳴だった。


 訳のわからない状況に、長らく忘れていた恐怖を呼び起こされる。

 魔蜂の一刺しは、熊をも動けなくするはずだった。

 人間などひとたまりもない、はずだった。


 なぜ、刺した蜂のほうが死んでいる。


 どんな強者をも屠ってきた、致命の一刺しが通用しない。


 パルティマスは今更ながら、敵が強大な存在であることを思い知らされていた。


 帝國に正面から喧嘩を売るというのはこういうことか。

 サーラターナだけではなかったのだ、と。


 マルコは帝國に仕えているわけではないので純然たる勘違いだ。


 地を這う元S級冒険者、いやS級犯罪者パルティマスは痛みに顔を歪め、脂汗を流しながらも服に仕込んでいた魔蟲を必死に操ろうとする。


「馬鹿な……」


 魔蟲の生命反応は全て途絶えていた。


 不審な少年が現れた時に、念のために放しておいたデスクリムゾンビーが、パルティマスの操る最後の魔蟲だったのだ。


 いつの間にかスライムが服の中に入り込み、隠していた小瓶の中の魔蟲を溶かしていったことを、痛みにのたうつパルティマスは気がついていなかったのだ。


 パルティマスは魔蟲使い(バグマスター)である。

 本人が片手片足を失おうとも、打つ手はいくらでもあるだろう。

 そのような相手を前に、マルコが油断するわけがない。

 何しろ、スライム使いであるマルコもそうなのだから。


 宮廷魔導師の救助を優先させたように見えたのは、その時点で既にパルティマスの服にスライムを付着させ、無力化までの算段を整え終えていたからだ。


 どこまでも理不尽な少年は、邪悪な笑みを浮かべ、無力なS級冒険者パルティマスを酷薄に見下ろした。


魔蟲使い(バグマスター)の力、見せて貰おうじゃないか」

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じゃない孔明転生記。軍師の師だといわれましても
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