表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる  作者: 中編程度
二度目の恋
65/76

65 失楽園

「聖女……!?」

確か、魔王城は、カスアン神に対する守りを固めたはずだった。それなのに、どうして──


 「結界なんて、カスアン神と一体化した私に効果があるわけないじゃない」

楽しげに聖女は笑って、光でできた鞭を振るった。


 「いたっ」

 鞭が私にあたる。

 やはり、カスアン神は聖女と一体化していたらしい。カスアン神という他者を取り込んだ聖女は、実質的に巫女と同じ力をもつのだろう。そうでなければ、聖女は、私を傷つけられない。


 そうだ。ガレンはどうしたのだろう。私の護衛騎士となったガレンは、私の自室の警護にあたっていたはずだ。


 「ガレンは……」

「ああ、王子様なら──殺したわ」

また、時を戻されても面倒だしね、格好いいから、私と結婚するなら生かしておいてもよかったけれど……。


 何てことないように、いい放つ聖女の顔は相変わらず、無邪気だ。


 死んだ? ガレンが、死んだ?


 「うそ──」

嘘だ。ガレンは、今度こそ私を守ると誓ってくれた。そのガレンが、私を残して死ぬはずがない。


 ゆっくりと、聖女が近づいてくる。

 サーラと一緒にじりじりと、後退するけれど、もう壁に当たってしまった。逃げられる場所がない。


 「ミカ様……!」

サーラが血だらけなのに、私を守ろうと前に出る。

「サーラ、逃げて。貴方の狙いは私なんでしょう。だったら、サーラは傷つけないで」


 「……いいでしょう。そこの女、逃げなさい」

聖女が顎を扉の方へと向けた。

「ですが、ミカ様!」

逃げようとしないサーラに後ろ手で指文字で、


 聖女が現れたこと、魔王に伝えて


 と伝える。指文字なんてサリー嬢に習ったときは、使う機会なんてないとおもっていたが、使う機会はあったらしい。やっててよかった。


 私の指文字にサーラは頷いたあと、走って部屋を出ていった。


 「やっと二人きりになれたわね。会いたかったわ、邪教の使徒──、いえ、もう力がないから、使徒ですらないのね」


 聖女はとても嬉しそうに、私に近寄った。ぐいっと髪を引っ張られて、無理やり目線を合わせられる。

「……私の神を貶めた罰よ。貴方はたっぷりと苦しめて殺してあげる」


 言いたいことをいったあと、乱暴に髪が放され、床に叩きつけられる。


 ──?


 何かが、視界の端で動いた気がした。聖女に気づかれないように、視線を動かす。扉の近くから這っているのは、見覚えのある青い髪。──ガレンだ。ガレンはまだ生きていたのだ。


 よかった。思わず安堵の息を漏らすと、金の瞳と目があった。ガレンは、震えながら、体の上部を起こし、唇だけを動かした。


 ミカ、トキヲモドシマス


 美香、時を戻します──? だめだ!ガレンが時を戻すのは、これで二度目。どんな代償が払われるのかわからない。


 「ガレン、だめ!」

「まさか、まだ生きて──」

聖女が振りかえるよりも先に、目の前が白く染まる。


 ──あまりの目映さに、目を閉じて、再び目を開けたとき、私は、森の中にいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ