35 祠
まず、サーラに祠について尋ねてみることにした。
「ねぇ、サーラ。祠って知ってる?」
「祠……にございますか」
サーラは深く考え込んだあと、ああ、と頷いた。
「創造神の一柱である、ガレイオス神を祭った祠がございますね」
「私、その祠に行きたいの」
その祠にいけば、私も力に目覚めるかもしれない。そうすれば、魔王を助けることができる。
しかし、サーラは表情を曇らせた。
「その祠は、転移魔法を使わないとたどり着けない場所にありまして。……残念ながら、私は転移魔法を使えませんし。陛下や、王弟殿下ならばお使いになられるとは思いますが」
巫女の日記を私に渡してくれたのは、魔王だ。また忙しいのに、悪いと思うけれども、魔王に連れていってもらおう。
サーラに緊急の用件で、会いたいという言付けを頼むと、すぐに魔王はやってきた。
「どうした、巫女?」
魔王に初代巫女の日記を読んだこと。そして、初代巫女は祠で力を目覚めさせたことを話した。そして、私をそこに連れていって欲しいとも。
「……だが、巫女、私は貴方を利用するつもりは──」
「私が、陛下の力になりたいのです」
魔王の目をまっすぐみて言う。聖女としてアストリアにいたときは、ただ言われるがままだった。けれど、このままでは、私は大切な人たちを失ってしまう。まだ、クリスタリアにきて一年間を過ごしたわけではない。でも、この国を、この国に住まう大切な人たちを思う気持ちは、本物だ。
魔王は暫く唸っていたが、やがて観念したように頷いた。
「……わかった。貴方を祠に連れていこう」
差し出された魔王の手をとる。瞬きする間に、私の部屋から移動した。
目を開けると、そこは洞窟だった。この先に祠があるらしい。洞窟は、霊感が特にない私でも、襟を正さなければ、と思うほど神聖な空気に満ちていた。
何となく、繋いだ手はそのままに、洞窟の中を進む。
すると5分も経たないうちに、祠にたどり着いた。祠は石造だった。祠の目の前の床に何か魔方陣のようなものがかかれている。その真ん中に立ち、祈りを捧げてみる。
──私は、日本という国から来た美香と申します。もし、私が巫女だというのなら、クリスタリアを聖女から守る力をお与えください。
すると、穏やかな声が私の頭の中に響いた。
──よくぞ参った、私の巫女よ。神たるこの私では、この世界に介入することができない。だからこそ、貴方が来るのを待っていた。
介入ができない? 神様なのに? 私が疑問に思っていると、ガレイオス神は答えた。
──カスアンに……我が妹神に私は追放されたのだ。その惑星の名を地球という。貴方が、生まれ育った星でもあるな。
「……え?」




