表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる  作者: 中編程度
二度目の生
33/76

33 もう一度貴方を

図書室に本を借りに行くと、ガレンにあった。ガレンと言葉をいくつか交わした後、ガレンは突然倒れた。私が強引に、クリスタリアにつれてきたせいで、環境の変化についていけず、疲れがたまっていたのかもしれない。サーラに手伝ってもらって、ガレンを客室に運んだ。けれど、ガレンは未だに目覚めないままだ。


 「ミカ様、後は他の者に任せてお休みになられた方がよろしいかと」

「ありがとうサーラ。でも……」

ガレンが倒れたのはおそらく、私のせいだろう。それなのに、ガレンを放っておいて、自分だけ休むのは気が引ける。


 「ミカ様」

「……うん、わかった」

再度サーラに促すように名前を呼ばれ、しぶしぶ部屋に戻る。


 「大丈夫かな……」

倒れる直前のガレンの顔色は、明らかに悪かった。私にとってはアストリアもクリスタリアも変わらないが、ガレンにとっては大きな変化だったのかもしれない。それに、クリスタリアはガレンにとって敵国だ。それだけでも、気を張りつめる要因になるだろう。


 やっぱり、ガレンを連れてきたのは、浅慮だっただろうか、とも思うけれど、今さらどうしようもない。せめて、明日からはもっとガレンに気を配るようにしよう。そう考えながら、眠りについた。



 魔王は、聖女対策で忙しいので、今日も書類整理はお休みだ。まだ、戦場に聖女が現れたとは聞かないが、そうなるのも時間の問題だろう。私が巫女の力に目覚めていれば、魔王の助けになれたのに、残念ながら、今現在私にその兆しはない。そういうと、魔王はたとえ巫女としての力に目覚めているとしても、友人である貴方を利用するようなことはしたくないと、苦笑された。


 魔王は為政者としては、少しお人好しすぎる気がするけれど、聖女として利用されてきた私にとっては、それはとても嬉しい言葉だった。


 そんなことを考えながら、昨日図書室で借りた本を読んでいたが、ガレンの様子が気になって、全く集中できない。

 結局、本を読むのは諦めて、ガレンを訪ねることにした。


 「美香、わざわざ来てくださったのですね。ありがとうございます」

ガレンの顔色は、昨日よりは良いように思えた。けれど、なぜかガレンと目が合わない。目を合わせようとすると、怯えたようにそらされるのだ。まるで、見たくない何かを見ないようにするように。昨日までは、そんなことはなかったはずだ。だとしたら、私が何か昨日してしまったのかもしれない。もしかして、ガレンにガレンの名前を書けるようになったことを伝えたくて、その手を取ったことが不躾だったのかも。それか、そもそも倒れる原因になった、クリスタリアに連れてきたことを怒っているのかもしれない。


 「ねぇ、ガレン」

「何でしょう、美香」

「ごめんなさい。理由はわからないけれど、私、何かしちゃったんだよね」

「いえ、美香に謝られることは一つもありません」

口ではそういう癖に、ガレンは泣きそうに見えた。けれど、そう言われてしまっては理由も聞けない。


 数分お互い無言で過ごした後、ガレンはポツリといった。

 「美香、お許しいただけますか。努力をすることを」

「う、うん?……いいと思うよ」

何の努力かはわからないけれど、努力をすることはいいことだと思う。

「ありがとうございます」


 ようやく金の瞳と目が合う。今度は、怯えたものではなく、強い決意を秘めた瞳だった。


 その後、何度か言葉を交わし部屋に戻った。──結局、何だったのだろう?

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ