表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる  作者: 中編程度
二度目の生
31/76

31 三つ目の選択肢

 私はいったいどうしたいのか。一晩中、考えたものの答えはでなかった。私にとっては、ガレンもクリスタリアに残してきた人たちも大切だ。ガレンは、私のためにどんな代償を払ったかはわからないし、クリスタリアには、魔王という友人もいる。でも、どちらかを選べば、片方とはお別れしなければいけなくなる。


 「……いっそガレンもクリスタリアに来てくれたらいいのに」

そしたら、何も悩まずにすむ。

 けれど、戦争をしているから当然とはいえ、ユーリンは人間を嫌っていたし、ガレンは魔物を嫌っている。でも、私にとっては、クリスタリアもアストリアも変わらない。耳がとがっているかどうかという身体的な特徴だけだ。だから、もし、第5王子のガレンが一緒に来てくれて、今度は偏見のない目で、魔物たちの生活を見てくれるなら、この戦争も終わらせられるんじゃないか。 


 何とも中学生らしい甘い考えかもしれないけれど、やってみるだけの価値はあるかもしれない。だって、巫女は己の願いを叶えるもの。だったら、まずはやってみなくちゃ。


 まずは、ガレンを説得することにした。ガレンと二人きりの時に、防音魔法をかけてもらって相談する。

 「ねぇ、ガレン」

「どうしました、美香?」

いきなりに本題に入らず、当たり障りもないところから攻める。

「今日はあいにくの天気だね」

「ええ、そうですね。残念ながら雨ですね」

「今日はどこも雨なのかな?例えば、クリスタリアとか」

「ええ、あの国も雨でしょうね」

まずい、クリスタリアの名前を出しただけで、表情が歪んだ。どれだけ、クリスタリアのこと嫌いなんだ。何だか無理そう……と、思うけれど、頑張ってみる。


 「ガレンは留学についてどう思う?」

「見聞を広めるいい機会だと思いますよ」

よかった!留学については好意的な考えだ。問題は、その留学先なんだけれども。


 「先ほどから、どうしたのです美香。私はてっきり、返事を聞かせていただけると思ったのですが」

「うん、そのことなんだけどね……」


 ──と、急に廊下が騒がしい。

 どうしたんだろう? と思って、ガレンと廊下に出る。


 ──雨が降っていたはずの外は、花が降っていた。


 「まさか……」


 私たちは同時に顔を見合わせた。


 ガレンを引っ張り、急いで部屋に戻る。あの花は明らかに聖女が現れる兆候だ。なんで?まだ、時間があるはずなのに。でも、考えている時間はない。早く、魔王に伝えないと。


 「ユーリン」

天井に呼び掛ける。

「私と一緒にこの人もクリスタリアに連れていってください。説明はあとでしますから」

ユーリンは音もなく天井から降りてきた。ガレンはユーリンのとがった耳をみて、顔を歪める。

「美香、どういう──」

「俺にその敵も、連れていけとおっしゃる?」

「説明はあと!早く陛下に伝えないと。聖女が現れます!」


 事態を飲み込んだのが、ユーリンは、苦々しく頷いた。

「……わかりました。ですが、その男は縛らせてもらいますよ」

ユーリンがパチンと指をならすと、ガレンの足は縄で縛られた。

「なっ──」


 そして、ガレンの手をとり、ユーリンの手を握る。


 何度か転移を繰り返し、ようやく魔王の城の執務室へついた。 


 「うわっ」

上から降るような格好になったが、魔王が私を受け止めてくれた。ユーリンは華麗に着地したが、足を縛られたガレンは、地面と激突した。


 「おかえり、巫女」

「ただいま帰りました、陛下」


 魔王の笑顔にどぎまぎしている場合じゃない!早く伝えないと。

 「陛下、聖女が現れました! それから、そこにいるのはアストリアからの留学生です!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ