情報屋は異世界出身者6
ご無沙汰しております。大幅に方向性を修正しております。必ず完結しますので、宜しければお付き合いくださいませ。
(おいおい、朝からパンケーキかよ…………)
観察者を見ながら思う。
そういえば記憶の中にいる元上官も甘いものが好きだったな。
戦争ばっかだったから大したものは貰えなかったが、街に寄った時なんかは果物を買って分けてくれたりした。
(いけね、見失っちまう)
帽子を深く被り直し、彼女の数組後ろに陣取る。
カウンターに座った彼女は美味しそうな笑みを浮かべパンケーキを食べている。
注文した珈琲を飲み、聞いていた人形らしい様子とは異なる少女に首を傾げた。
(無表情で怖いくらいの存在って噂だったが…)
見る限り何処にでも居る普通の女の子だ。
◇ ◇ ◇
引き続き尾行を続ける。
今度はなんと映画館へ移動した。
(なに観るんだ?)
チョイスしたのは今流行りの恋愛映画。
入れ替わりを描いた監督の次作とあって来場者も多いようだ。
これなら紛れ込めるな。
然り気無く観察出来る後方の席につく。シアターが暗闇に包まれた。
◇ ◇ ◇
(若いっていいなぁ〜………っとまだ尾行しねーといけねーのか)
休息日であろう今日から尾行してしまってることを心のなかで詫びる。
そのまま距離を置いて歩いていると、路地裏へ彼女が入った。
(あっ、やべーな。気づかれたか?)
少なくとも彼の尾行は普通の人間であれば気づかれない。それくらい彼の気配は薄いのだ。
見た目はチャラ男だが。
(このまま通り過ぎよう)
彼の勘がそう告げる。路地裏を通り越し、そのまま歩き続ける彼の耳元で――――
《もう尾行はいいの?》
涼やかな声が響いた。
パッと振り返る。誰もいない。そうだろう、だってこれはこの世界には有り得ない。風に声を乗せて伝える術なのだから。
《ホテル前の公園、尾行を続けるなら来なさい》
ストックは走り出した。
俺はその声を知ってる。
俺は、この魔法を知っている。